ルイ・マル監督の映画『地下鉄のザジ』(1960)を見た。
上映時間は約1時間半だが、二日かけ45分ずつ分けて鑑賞。
パリに連れてこられた少女の冒険と彼女の周囲のハチャメチャなさまが描かれているコメディ作品である。この手の作品は、いろいろなことが盛り込まれているのだろうし、それっぽいセリフやシーンもなんとなく分かるのだが、私が理解できたのは戦前のことを少し振り返っている場面くらいだった。
個人的につい凝視してしまったのが映画の前半にザジが正体不明の男に追いかけられ、また追いかけられている中でも男をおちょくったりする場面のガラス屋根のギャルリやパサージュの中をコミカルに走るシーンだった。19世紀の思想家フーリエがファランステール(協働生活体)の居住空間とみなしたパサージュを撮影に使っているのには、パサージュも現代の作家や映画製作者にとってはパリのいち光景に過ぎないのだなぁと思った。
内容はシュールなコメディだし、笑えるシーンも多いのだろうが、私は「パリの街の中でよくこんな撮影できたな。どうやって撮影したんだ? 今じゃこんな映画つくれないだろう」とそういったことばっかり気になった。出演者のみならず、街全体が体を張って撮影に協力したような感じの映像は笑いよりも驚きが先んじた。パリに引き込まれたい人におすすめの作品だと思った。