読み始めたばかりの本のことを少し。
ディネセンというのは、デンマークの小説家のイサク・ディネセン(本名カレン・ブリクセン)のことであるが、正直にいえばこの人の名前を知ったのは図書館でたまたま目にした本の背表紙からであった。
何年か前にフランシス・メイズのエッセイ『トスカーナの休日』を読んだが、そういった印象のものかと思いきや『アフリカの日々』は数ページ読んだだけでジャンルが全く異なる気がしている。
作品は彼女が1914年にアフリカのケニアに渡り広大な農園を17年に渡って経営していたことがもとで書かれている作品だが、翻訳であれ第一部からカルチャーショックという言葉では収まりきらないような互いの概念の相違を真っ向から観察し捉える鋭利なものを感じる。
原野では急激な動作をつつしまねばならないことを私は学んだ。そこで相手にする生きものたちは臆病で警戒心が強く、思いもかけないときに身をかわす能力の持ち主である。家畜は決して野生の動物のように静かにはできない。文明化した人間は静止する力を喪失しているので、野性の世界に受けいれてもらうためにはまず沈黙を学ばねばならない。だしぬけでない静かな動作の技術が、狩猟家にとっての第一教課である。これはカメラを使う場合なおのこと重要だ。狩猟家は自分流に行動することはできない。風と合体し、風景の色や匂いと同化し、自然のテンポにあわせてアンサンブルをつくらなければならない。自然はおなじ動きを何度となく繰りかえすことがあり、狩猟家もまたそれに従わねばならない。
河出書房新社『世界文学全集Ⅰ-08』(2008) p21-22
ここ数ヶ月読書は不調だが、この人の書く上記引用やそれ以降のヨーロッパ人の性質の考察、現地のアフリカ人がヨーロッパ人に対して抱いている様々な「感情」を読むと、これは斜め読みになろうが読み終えたい気持ちなってきた。
それにしても、(仕方の無いことだが)こういった類の本を読むと、自分が(緩慢であれ)これから書こうとする旅行記に対する意欲が半減するどころではない状態に陥る気がする。まぁ毎度のことではあるが(笑)。
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