塩野七生の『ローマ人の物語』全15巻を読んだのは2年前。今の自分の世間一般の事象や歴史、ものごとに対する考え方に多大なる影響を与えている作品だが、この作品の舞台となった土地のことを紹介している本がある。それが新潮社出版企画部編の「塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック」と、新潮45編集部・編「塩野七生『ローマ人の物語』の旅コンプリート・ガイドブック」である。
『ローマ人の物語』は読者の反響も大きいゆえ、編集部にもさまざまな意見・感想が送られているようだが、この二つのガイドブックは読者がもう一度採り上げてほしい場面や人物についても編集されている、いわばダイジェスト版でもある。さらに"旅"と銘打たれているだけに、現地の写真も豊富なのだが、これだけでローマへの誘惑を充分に感じさせるものである。
この2冊を読んで改めて思い出した。映画「ローマの休日」に出てくる"真実の口"の「有力説」のおもしろい話である。いまやあの口に誰もが手を突っ込みたがるが、あれはもともと紀元前のローマの下水道のフタであったというのが有力な説なのだ。ローマ帝国は圧倒的な土木工事の技術を持っていて、それを誇りにしていた。自分たちがつくる上下水道も精緻をきわめた彫刻で飾っていたが、下水道のマンホールもそれなりのもので飾っていたそうである。
ちなみに映画「ローマの休日」でグレゴリー・ペックが口に手を突っ込んで抜けなくなる「演技」をする場面、あれはオードリー・ヘプバーンの素の感情を引き出すためのアドリブだった。今から見たら、本当に手が抜けなくなったと思い込んだアン王女の真剣な貴重な表情だったことがわかる。もちろん、いわれてみれば、なので、映画を見た当初に分かってはいなかったが(笑)。
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