И・クラムスコイ『ルサルカ』(1871)、モスクワ,トレチャコフ美術館蔵
ルサルカというのはロシアの民話に出てくる妖精みたいなもので、洗礼を受けずに死んだ女の子や、世をはかなんで身投げした女の子たちが「ルサルカ」に変身するといわれている。
ゴーゴリが作家として文名が上がった作品に『ディカーニカ近郷夜話』がある。『五月の夜、または水死女』はその中の一編なのだが、この作品が
こちらで触れた作品である。
19世紀ロシアで活躍した画家の一派に移動派という活動組織があった。クラムスコイはそのリーダー的存在であった。
クラムスコイの出身地はウクライナと非常に近く、彼はウクライナ出身のゴーゴリの作品を愛読していた。『ルサルカ』はもともとゴーゴリの『五月の夜、または水死女』の挿絵として構想された可能性が高いが、完成した作品は当初の挿絵のプランよりもより幻想的で、まるで現実と夢の区別がつかないような妖しくも美しい仕上がりになっている。