千駄木駅からよみせ通りを1本脇に逸れた場所にある
工房には、指人形作りの傍らで、
ユーモアたっぷりのパフォーマンスを繰り広げる
露木さんの姿が。
以前に取材したことがあって、今日は写真撮影で訪れたのですが、
途中でお客さんが来たこともあって、
30分のパフォーマンスをフルコースで見せてもらっちゃいました。
相変わらずのキレの良さ。ノリの良さ! うーんすてきです!
以下は少し前に地域情報紙に書いた記事。
(タイトル)
好きなことは手放さない。
誰にも負けない取り柄を天職に
(リード)
「クククッ」。好々爺2人がどうやらひそひそ話をしながらクスクス笑い。そのうちこらえきれずに肩を叩きあって抱腹絶倒。つられて観客も思わずもらい笑い。これは谷中の「指人形笑吉工房」で行なわれるショートコントのひとコマ。指人形の名はすべて「笑吉」。その生みの親であり、人形劇のパフォーマーでもある露木光明さんを取り上げます。
(キャッチ1)
指人形のテーマは「笑い」
絶妙なナレーションと笑い顔を生かした動きだけなのに、何とも生き生き。パントマイムは自己流だが、お笑いのセンスはバツグン。すだれの奥から客席を見渡し「これほど心が踊ることはない」と穏やかにほほえむ。露木さんが生み出す指人形の魅力は、その表情の豊かさ。テーマは“笑い”。その表現力は「歩いていても人の顔ばかり気になる」という観察眼のなせる技か。子どもの頃は鏡を見ては百面相。できない表情はない。「耳も動かせる」。人形づくりで最も楽しいと思うのはもちろん表情づくり。「自分でも思いがけない顔がぽっと出てきて、たまらず吹き出してしまうことも」
(キャッチ2)
思わぬ生きがいの出現に衝撃
絵を描くことも大好き。学生時代は「似顔絵が得意な露木」で名を馳せた。20代後半で始めた油絵は美術展で入選を果たしたことも。しかし葛藤もあった。自営業で洋裁のキャリアを積んではみたものの、情熱を傾けることができない。好きな絵も、それで飯が食えるレベルには達しない。自らが主宰する絵画教室を続けることで「絵にしがみついていた」という。「取り柄がなくなってしまいそうで怖かった」。9年前、授業のサンプル用に指人形を作り、生徒ではなく自分がハマった。指先から自然に紡ぎだされたものは、とぼけた表情のおじいさん。面白い。これなら評価を気にせずやれるかもしれない。「天から与えられた生きがいは、絵ではなくこっちだったんだ」と衝撃を受けた。ところで“指人形”との出会いは、実は幼い頃までさかのぼる。「お祭りで指人形の個性的な笑い顔に目が釘付けになった。思い返してみれば、“笑吉”にそっくり。これがわたしの原点です」
(キャッチ3)
いまこの時のためのこれまで
現在は指人形づくりが本業となった。とはいえ注文が来るのは「似顔」がメイン。送られてきた写真を見て、本人そっくりの指人形を作る。着物もすべて手作り。おととしテレビで工房が紹介されたあとからは電話が鳴り止まず、1週間で700体以上の注文が入った。7割は故人の人形。工房内にはお札が1枚貼ってある。写真とにらめっこしながらの毎日を送る露木さんだが「もっと自由に作りたい」と本音がポロリ。それでもいまがいちばん幸せ、と顔をほころばせる。そして「積み重ねてきたものすべてが、指人形づくりに結びついている」としみじみ。洋裁の技術、絵を描くこと、それから表情への探求。特技を“天職”にまで昇華させた原動力、それは「好きなことは手放さない」という一貫した姿勢かもしれない。「普通の人形じゃだめ。中に手を入れるとたちまち魂が宿る指人形に魅力がある。動いてこその人形なんです」
※このブログのわたしの似顔絵、露木さんに描いてもらったものなのです♪