国貞泰汎

1975年

太平洋クラブ・ライオンズ球団は一日、同球団の国貞泰汎内野手（31）＝165㌢、70㌔、右投げ右打ち、呉港高出＝の任意引退を発表した。同選手は昨年末、広島東洋カープを退団したあと江藤監督を頼ってテスト生として島原キャンプに参加、しぶといバッティングと明るい性格で、レギュラー入りを果たし、前期は54試合に出場した。しかし、後期は八月二十四日の阪急５回戦で代打に起用されならが犠飛も打てなかったことから力の限界を悟り、球団に引退を申し入れていた。今季の成績は１１３打数２２安打、二塁打３、打点７、打率・１９５だった。

国貞選手の話 このままユニホームを着ていても、恩人の江藤監督にご迷惑をかけるばかりだし、私自身も力の限界をはっきり感じたので、やめさせてほしいと球団にお願いした。広島に帰って、しばらく女房の店（生花ショップ）でも手伝うつもりだ。

豊平晋一

1976年

昨年夏の甲子園大会のときだった。なで肩で、腰周りが他の選手に比べてずっと大きい豊平。そのシャープな打撃に吉田監督はひと目ぼれしたそうだ。両親が当初強く進学を望んだので六位指名になったが、阪神では「次代の大型打者」と期待は大きい。豊平は入団発表で「目標は田淵さん」と言って驚かせた。練習に参加して二週間余り。たいていの新人選手は入団時の景気よさはどこえやら、プロの厳しさの前にシュンとしてしまうものだが、豊平はしっかり屋。「安芸移動に選ばれなかったけど、ぼくとしてはその方がいい。安芸に行けば使い走りなどに振り回されるから満足のいく練習ができない」と移動もれを逆手に取って、甲子園で約二時間の時間外特訓を買って出ている。決まった練習は午前十時から午後二時半だが、豊平は「この世界、自主的にどれだけやるかで決まる」と闘志むき出し。鹿屋市で生まれ中学三年までそこで育った。薩摩っぽ骨太い男だ。三年目に定位置を取りたいという。とはいえ周囲の状況はなまやさしいものではない。岐阜・中京商時代の三塁から遊撃転向を指示されているが、藤田の厚い壁があり、その前に榊原もいる。「それでもう後戻りはできない。やるだけやってみる」と口元を引き締める。そして目指すのは「あくまで田淵さん」と、当初の気持ちをぐらつかせない。同期の篠塚（巨）杉村（ヤ）らに負けたくないという豊平。相羽打撃コーチは右打ちもできる柔軟性があり楽しみだ、と話している。

末永吉幸

1975年

日本ハムから中日への移籍が決まっていた末永吉幸内野手（28）＝173㌢、68㌔、右投げ左打ちは八日午後、名古屋市中区栄の中日球団事務所で正式契約をし、入団発表が行なわれた。同選手は渋谷幸春投手との交換トレードで中日入りしたもの。やはり新天地赴任という環境の変化は気持ちを引き締めるものらしい。末永は言う。「正月は郷里（福岡県）へ帰るけど、走り込むつもり」今季、末永は85試合に出場して打率1割7分5厘。昨年の2割6分5厘（105試合）から激しい落ち込みをした。これは三月に左足首を痛めたのが尾を引いたものだが、末永は春先に故障することがよくあった。その原因を「オフに体を動かさないこと」に求めてのランニングである。「来年は出遅れたくないですからね。でも中日のことは昨年優勝したこととＡクラス・チームだということぐらいしか知らない。名古屋へもこれまで二回来たことがあるだけで・・・」チーム事情も地理も不案内な末永は、新天地にちょっと緊張気味。だが二塁、三塁、遊撃をこなす器用さとしぶとい打撃を買われての移籍だけに、正遊撃手をねらってひしめき合うチーム事情を聞かされると、闘争心が頭を持ち上げる。「太平洋から中日入りする梅田は守備がうまいけど、負けたくはない。バッティングにはいくらか自信もあるんです。早く名古屋のファンに覚えてもらえるようにがんばります」今季、日本ハムの観客動員数は中日の三分の一の五十二万人余。末永はファンで埋まった球場でプレーするのを楽しみにしている。