野々村寛

1953年
阪急ブレーブスに投じてあしかけ四年、それにしてはチョット恵まれない選手だった。というよりも器用さがかえってアダとなったのかも知れぬ。が、控えの乏しい内野にあってシッカリと後詰めの役を果してきたのは賞していい。あるからにハツラツとした攻守、その点では常に病気がちで元気のない中谷選手のそれとは雲泥の差、彼の懸命なプレーをみていると、ときたま彼がミスをやろうと、そう不愉快にも感じない。もとよりミスはほめられるべきではないが、あそこまで追ったのだから…ということになって、記録上失策とはならないまでも、全く最初からアキラメて打球を追おうともしない人よりは好感がもたれるというもの。まあ阪急ブレーブスには珍しいファイターである。前監督浜崎氏には非常に期待をかけられていたが、昨年は河野の加入でまたベンチにおかれたしかし安定感の上では野々村が数段上である。菊水高校のワンマン・プレーヤーとして攻守に大活躍しているのを、地元近鉄はじめ引手あまたであったが、いつのまにやら阪急の手に落ちた。そして二軍で大分辛酸をなめたようだが、不屈の闘志で第一線に浮び上った。しかしもう一つ強烈な印象がないのは、打棒好調で今一息でレギュラーのポストにつけるというときに負傷して挫折しているからで、この大事なチャンスを彼は二度ならず三度も逸しているようだ。これでは自らの手で活躍期を狭めていくようなもの。なにも消極的にプレーする必要はないが慎重な競技態度は野球にかぎらず心していいこと。中谷選手の移籍で空席となった三塁でこんどは心おきなく働いてもらいたいものだ。


住所　大阪府中河内郡柏原町柏原
きらいな投手　下手投げ投手、好きなのは左投手
ライバル　吉田選手