2月の牡蠣は身が大きくなって旨い。山の神が紀北町白石湖の牡蠣を取り寄せて、12日から毎日、牡蠣三昧だった。最初は、生と牡蠣フライ。次の日は牡蠣鍋、最後は牡蠣グラタン。
26年前に亡くなった親父は牡蠣が好物だった。しかし子どもの頃は自分は嫌いだった。あの生ぐさい独特の匂いと食感で、喉を通らなかった。家で牡蠣の日は自分は別メニューの日々だった。
牡蠣フライが食べられるようになったのは、就職してからではないか、と思う。それでも酢牡蠣や生牡蠣は食べることができなかった。
結婚して、山の神の地元地域である白石湖の牡蠣に出会ってから、牡蠣フライが大好物となり、生も苦にせず口に入るようになった。白石湖の牡蠣様様である。
白石湖は汽水湖でそのため独特の匂いがあまりなく、食べやすい。養殖業者は6,7軒で周囲7㎞ほどの小さな池なので、流通量も少なく、地元以外は取り寄せるしかない。直接行っても買えないことが多く、予約が必要である。
親父が肝がんが悪化して入院し、12月下旬、他界する5日ほど前に白石湖の生牡蠣を持っていったら、10個以上、『旨い、旨い』と言って平らげた時の嬉しそうな表情は忘れられない。