そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

もはや賃金は上がらないのか

2007-02-02 23:41:08 | Economics
好景気が続いているのに一般庶民がその実感を得られない、家計消費に力強さが生まれない、と言われて久しい。
1月31日の日経新聞朝刊マーケット総合面コラム「大機小機」は、「家計所得と資産効果」と題してこのテーマを論じている。
これが如何にも日経新聞的なものの見方・考え方をわかりやすく表わしていたので記録しておこうと思う。

好調な企業業績が家計に波及しない、雇用者報酬が伸び悩んでいることの要因が3つの方向から説明される。

第一の要因は、近年急速に進行した世界のフラット化。
新興国での労働人口の爆発的増加
→新興国で代替可能な産業の低い労働賃金が我が国の賃金レベルへの下方圧力になっている。

第二の要因は、現在の企業業績のけん引役が海外部門であること。
海外生産比率の向上
→付加価値の多くが現地での雇用や設備投資に分配される。

第三の要因は、企業の国際競争激化。
日本企業に、
・設備投資
・大型の企業買収
・株主価値向上のための増配
・敵対的買収への防衛策としての自社株買い
などへのインセンティブが生じる。
→資本分配の増加要因・労働分配率上昇の阻害要因となっている。

・・・と、現状認識をした上で、話は、所得全体に占める「財産所得」の比率上昇へと展開する。
上記のようなグローバル化による所得分配環境の変化を構造的変化と捉え、そうした情勢下で家計が所得を維持するには、「貯蓄から投資」への流れを強化して、リスク資産の比率を高めるしかない、と結論付けられる。
そうなれば、企業による資本分配の増加→家計における資産所得の増加→消費の拡大、という好循環が回り始めるだろう、との提言(これが「資産効果」と呼ばれている)。

簡単に言うと、もはやこれから先、景気がどうなろうと賃金レベルが上昇することには期待してはいけない、と。
労働所得(賃金収入)だけで家計を賄おうと思うな。株式や投信などのリスク商品に投資して、資産所得で不足分を補充することを考えろ、ということか。

このコラムはここで終わっているが、大概において日経の論調はこんな感じで、そのための「投資教育の充実」だのそんな話に繋がっていく。

こうしたマクロ環境の認識が正しいものなのかどうか、素人である自分には判断しかねるが、将来的に賃金レベルがそう上がっていかないであろうことは何となく肌身に感じられる。
これだけ賃上げ抑制が続いていながら、春闘に向けての労組による賃上げへの意気込みはそう力強いものとは言えない。
中長期的に続くであろう競争激化に備えた労使協調は規定路線になっている感がある。

だけどねぇ・・・だからと言ってリスク資産に投資しろと言われて、余裕資金の無いカツカツの生活している庶民に、そんなこと現実的なんだろうか?
我が家だって、最低限の流動性を確保するための預金はあるけど、あとは金が多少でも余れば住宅ローンの繰上げ返済に回すだけだ。
55歳くらいまでにローン完済できるレベルまで繰り上げ返済が進めることを当面の目標とし、そこまで辿りついてやっとそれ以降余裕資金の運用に頭を使える状況になるかもしれないが、現状では正直困難。

結局、この結論じゃ、投資余力のある富裕層にばかり所得が回っていく仕組みを是認することになり、「格差社会」容認のレッテルを貼られても仕方がないような気がする。
何か他にいい処方箋はないものなのだろうか。
コメント
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