そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「現代の金融入門 [新版]」 池尾和人

2010-05-31 22:39:07 | Books
「金融」に関する入門的な解説書。
新たな知見を得られるというよりも、既知の知識を体系的に整理し、深めることができた、という点でたいへん有益でした。
[新版]への改版時期がサブプライム問題に端を発する世界的金融危機と重なったこともあり、「金融取引」「銀行システム」「金融政策と中央銀行」といったプリミティブな金融論だけでなく、「資産価格とそのバブル」「金融機能の分解と高度化」「金融規制監督」といった極めて現代的なテーマにも紙幅が割かれています。
「日本の企業統治」という、一見「金融」とは直接関係にないテーマも取り上げられているのが興味深かった。

そこで解説されているのは、市場か規制かという近視眼的な二者択一ではなく、市場的政策により効率を高めつつ、情報の非対称性や外部経済などの市場の失敗に対しては合理的な規制であたるべし、という極めて常識的な議論であります。
制度設計、政策選択にあたっては、それが誰に対してどのようなインセンティブを与えるのか、いかなる弊害(モラルハザードなど)を生ぜしめる結果をもたらすのか、といったことについての冷静な分析こそが必要である。

中央銀行の金融政策や、金融工学に触れた部分など、もう少し深く突っ込んで欲しかった感はありますが、このあたりは「あとがき」にも一部紹介されているように、他の専門書にて学ぶべきなのでしょう。

現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)
池尾 和人
筑摩書房
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続・イングランド戦雑感

2010-05-31 20:23:43 | Sports
イングランド戦から一夜明けて、メディアなどでの取り上げ方を見ていると、日本代表の内容は悪くなかった、セルビア戦・韓国戦に比べると改善されている、といったポジティブな評価がある一方、あそこまで苦しめたんだからあとちょっと頑張って結果を出してほしかった、結局負けたんだから喜んではいられない、といった辛めの評価もされているようです。
このスポルティーバの記事なんか、典型ですが。

【日本代表】イングランドに善戦も、根本的な問題は解消していない

だけどね、根本的な問題がそんなに簡単に解消するなら、苦労しないでしょう?
「善戦への道筋」であって「勝利への道筋」ではないって言うけど、日本は、イングランドに対しても、或いは本番で当たるオランダ、デンマーク、カメルーンに対しても明らかに格下ですよ。
いきなり「勝利への道筋」って、それは身の程知らずってものなのではないかと思います。
正直、昨日の試合だって、選手入場でルーニーやランパードと並んでいる日本の選手の体格の違い、凄みの違いを見るにつけ、5-0とかの惨敗すら予感するほどでした。

一方で、格下だからって必ずしも勝ち目がないとは言い切れないのがサッカーの面白いところ。
「善戦」さえしていれば、時の運や勢いで勝利が転がり込んでくることもある。
けっして自虐ではなく、「善戦の道筋」が見えたのなら上出来なのではないかと思います。

要は何が言いたいのかというと、先日のブログで取り上げた「日本サッカーの幸せの尺度」が共通認識になっていないことがここでも現れているのだろう、ということ。
「現実」がきちんと伝えられていないから、簡単に夢を描いてみたり、あっさりと夢が破れると戦犯バッシングに走ったり、極端なことが起きてしまうのだと思うのです。
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