そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「生き残る判断 生き残れない行動」 アマンダ・リプリー

2010-09-14 23:24:48 | Books
ちょうど先日、あの9・11同時多発テロから丸9年を迎えたところです。
テロの瞬間、ワールドトレードセンターにいた人々が何を考え、どのように行動したのか。

9・11テロに限らず、多くの人質事件、飛行機事故、火災、洪水といった非常時に遭遇した人々の判断と行動を、生存者への綿密なインタビューと専門家への取材で解明することを試みた一冊。
上質なドキュメンタリーであり、我々一般人に対して貴重な示唆を与えてくれる啓発本でもあります。

非常事態に遭遇した群衆は、取り乱しパニックに陥るものと想像しがちですが、実際にはパニックはめったに起こらない。
まず訪れるのは「否認」。
自分が生命の危険に直面していることを信じようとしない脳の働き。
すぐに何が適切な行動なのかを判断し、行動にうつすことのできる人は稀にしかいない。
そしていざ行動に遷ろうとしても、視覚・聴覚は普段のように反応せず、身体も思うようには動かすことができず、脳も通常の判断力を喪う。
即座に当たり前の避難行動ができてさえいれば失われることがなかったはずの生命が、逃げ遅れや不可解な行動により犠牲になった実例が数多紹介されます。

いざと云う時に適切な行動をとることができるようにするために我々ができることは、「備え」をしておくこと以外にありません。
非常事態に際した場合の適切な行動を十分に訓練しておくこと、頭の中でシミュレートしておくこと、避難路を実地で使ってみて経験しておくこと。
そうしておくことで緊急時に脳の反応が鈍くなってたとしても、反射的に適切な行動をすることができる。

示唆に富むことがいろいろと書かれていましたが、中でもこれはと思ったものを以下備忘も兼ねて記しておきます。

人間の主観は、リスクの評価を正確には行わない。
「リスク=確率×結果×不安あるいは楽観」である。
そして、
「不安=制御不能+馴染みの無さ+想像できること+苦痛+破壊の規模+不公平さ」である。
よって、客観的には、心臓病や自動車事故よりもリスクが低い飛行機事故に対して、過大な不安を人間は感じてしまう。

非常時の恐怖反応に打ち勝つためには呼吸法が有効である。
四つ数える間に息を吸い、四つ数える間息を止め、同じく息を吐き出し、同じく息を止める。
それを繰り返す。
呼吸は、体神経系(意識的に制御できるもの)と自律神経系(制御できないもの)という二つの神経系に跨る活動であるからだと云われている。

この本を読んで、とりあえず、自宅に煙探知機を設置することと、これからは飛行機に乗る時は避難路を確認し、CAさんの非常時の対処方法説明を聴くことはちゃんとやろうと心に決めました。

生き残る判断 生き残れない行動
アマンダ・リプリー、岡真知子
光文社
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民主党代表選を眺めて

2010-09-14 19:11:47 | Politcs
菅氏、大差で代表に再選 週内にも内閣改造 (共同通信) - goo ニュース

今日はたまたま休みを取っていて家にいたので代表選のテレビ中継をつけていたんですが、しかしまあ両名の「最後の演説」がまったく魅力なくって困ってしまいました。

特に酷かったのが菅サンで、亡くなった石井紘基氏と山本孝史氏の名前を出して情に訴えるというあざとさ満点の反則技。
さらに民主党議員の出身職業を羅列する件りは、聞いてて恥ずかしくなりました。
シナリオライターは感動を喚起する演説を想定したんだろうけど、当の本人が棒読みなので、滑稽さばかりが浮かび上がり。
この人、他人を攻撃したり悪しざまにあげつらうのは得意だけど、自ら発信して観衆をインスパイアするような型のコミュニケーションはまったくできませんな。

これは小沢サンにも共通するんだけど、日本に元気を「取り戻す」っていう発想が根本的に間違えていると思う。
世界の在りようも、日本社会の構造や成熟度も、かつて高度成長期とは全然違っているんだから、古き良き時代に帰ろうっていう発想では何も解決しない。
そこが分かっていない。
元気な日本を「新たに創ろう」という発想じゃないと。

いずれにしても菅サンが当面首相を続けることになりましたが、まあ何も期待できないでしょうな。
地方票、党員・サポーター票では大差がついたけど、国会議員票は拮抗していたわけで、これで一気に小沢サンの勢力が減退することにはならなそうだし、親小沢/反小沢という不毛な対立軸が温存されることになりそうで、最悪の展開。
仮に小沢サンが勝って首相になったとして、どうせうまくいくはずがないので、その時こそが小沢の最期…となるのを期待してたんですがね。
小沢一郎という人が表舞台から消えることが、この国の政治が変わる最低条件だと思っています。
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