そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

転職成功率の低下

2010-09-24 19:30:41 | Economics
今日付け日経新聞朝刊「経済教室」は、阿部正浩・独協大学教授の稿。
テーマは、日本における失業の増加と長期化。
内容的にはほぼ既知のものでしたが、わかりやすく整理されていたので、以下メモします。

阿部氏が、総務省統計局の労働力調査を基に行なった推計によれば、2008年前後から労働市場のフロー指標に変化が見られ、仕事を離職した人が1年以内に職を見いだせない傾向が強まっているとのこと。
直近の失業率の上昇は、リストラの増加や非正規雇用者の雇い止めによりも、むしろ離職者や失業者の転職成功率が低下が第一の要因となっていると観察できると云います。

転職成功率が低下している原因としては、求人と求職のミスマッチが挙げられる。
専門的・技術的職業従事者や保安職業・サービス職業従事者では相対的に求人数が多い一方、事務従事者や製造、機械運転、建設作業などで相対的に求人数が少なくなっている。
前職でのスキルを生かすために同産業・同職業で職探しをするのは一般的ですが、産業や職業の構造変化が発生すると、衰退する産業・職業を離職した人々は求職難に直面し、逆に成長産業では求人難に直面する。

リーマン・ショック以降、政府が採った失業対策は、雇用調整助成金による離職失業の未然防止という政策でした。
阿部氏によれば、08年以降も就業継続指標が大きく悪化していない事実があり、この雇用調整助成金が大きな役割を果たしたものと評価できるとのこと。
ただし、それが根本的な解決策になっていないことには留意すべき、とされています。
以下、引用。

とはいえ、雇用調整助成金の成果を手放しで喜べるものはない。厚生労働省によれば、09年度に政府が支給した助成金額は6536億円に上っており、これだけのコストを払って得られた効果を慎重に考える必要がある。
雇用調整助成金の利点は、一時的なネガティブショックによる雇用調整を回復することで、景気回復後に同一企業に保蔵された労働者の人的資源を早期に活用できる点にある。この利点を社会が生かすには、助成された企業や仕事が将来成長することが期待されなければならない。さもなければ、保蔵された労働者も企業の衰退とともに、いずれは雇用調整を余儀なくされる。その場合、助成金は市場から退場すべき企業と仕事を延命させているにすぎない。
特に最近は、国際競争力の激化によって競争力を失いつつある仕事が国内に出てきている。そうした仕事では、非正規労働者の活用などで労務コストを抑える努力がこれまで懸命になされてきた。しかし、こうした対応もいずれ限界が訪れるだろう。競争力を失った仕事をどの程度国内に残すべきか、考える時期に来ていると思う。
雇用不安を解消するためには、雇用を保蔵し雇用継続確率を高めるような政策をとるべきなのか。あるいは、新たな雇用創出すると同時に、労働者の教育訓練やマッチング機能を高度化して転職成功確率を高める政策をとるべきなのか。今後の日本経済を取り巻く環境変化の下では、後者の政策が望まれると筆者は理解している。
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司法が配慮する範囲を越えているのでは?

2010-09-24 18:29:01 | Politcs
尖閣沖の衝突事件、中国人船長を釈放へ「日中関係考慮」(朝日新聞) - goo ニュース

吃驚。
近年稀にみる「屈辱外交」ではありませんか。

地検が「日中関係を配慮」とは越権では?
「日本は中国と違って政治と司法が独立している」と説明してきたロジックが破綻してしまう。

今回の対応を、中国政府に対する「貸し」として、今後どこかの場面で活かせるのなら…とも思うけど、なかなか難しいでしょうな…
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