赤猫異聞 | |
浅田 次郎 | |
新潮社 |
明治元年の年の瀬、徳川幕藩体制が崩壊し、明治新政府への移行がまだ落ち着かない混乱の江戸が舞台。
大火事が起こると牢獄の囚人たちを解放する「赤猫」という慣習により縄を放たれた三人の大物囚人を巡る物語。
明治に入った数年後、司法省の役人が当時の関係者に事情聴取をするという設定で、各登場人物による独白文といった形式で小説は進んでいくのですが、各々のキャラクタに合わせた生き生きとした口上が見事の一言で、著者の筆力には感心させられます。
江戸から明治へ、社会が大きく変わる時代感や、牢屋同心という下級役人の悲哀など、考証的な部分でも興味深いところが多く。
が、物語自体は大して面白いものではないので、口上が見事な分、やや冗長さを感じてしまったのも事実。
個人的に、人情モノはあまり好みでないというのもありますが。