夫婦善哉 | |
織田 作之助 |
青空文庫編、Kindle版(無料)にて。
(富田倫生氏に合掌)
丁度、NHKにてドラマ版が放映されてますね(視てないけど)。
豊田四郎監督、森重久弥・淡島千景主演の映画は、だいぶ前に観た。
内容はほとんど憶えてないけど、元祖バカップルとでも云いたくなるような、二人がイチャイチャするシーンは印象に残ってます。
原作はテンポがいい。
時代が小気味よく進んでいく。
ダメ人間だと分かっていても、ズルズルと続いていく、その関係性に愛おしさを見出す。
そんなドラマツルギーの系譜。
よい意味で、大衆的。
印象的だったのは、蝶子が母の死に目に会うことができず、通夜から戻る場面の一節、
夜更けの街を歩いて病院へ帰る途々、それでもさすがに泣きに泣けた。病室へはいるなり柳吉は怖い目で「どこイ行って来たんや」蝶子はたった一言、「死んだ」そして二人とも黙りこんで、しばらくは睨み合っていた。柳吉の冷ややかな視線は、なぜか蝶子を圧迫した。蝶子はそれに負けまいとして、持前の勝ち気な気性が蛇のように頭をあげて来た。
非情なる情、の静かなる迫力。
あと、二人が剃刀屋の商いをする件りで「ジレット」という単語が出てきたのには驚いた。