日経新聞朝刊「経済教室」、ここ数日「試論 成長戦略」とのシリーズが続いていましたが、昨日(2月16日)付け脇田成・首都大学東京教授の論文がおもしろかったので、以下簡単に要点をメモ。
一般に景気循環を考える場合、潜在成長率を表す大きな波である「長期トレンド」と、在庫循環を中心とした小さな波である「短期サイクル」を軸に分析がされるが、日本経済の長期低迷を考えるにあたっては、それに加えて「不良債権処理」という中期的な波を考慮する必要があるという話。
即ち、日本のように労働力の調整が遅い社会では、好不況の波に対する売り上げの調整(反応)に比べて、費用(賃金)の調整が遅れがちである。
好況期には、第一段階で売り上げが伸び、第二段階でそれが賃金に反映することで消費や設備投資が拡大する。
ところが、この調整タイミングのずれの合間に不良債権処理が入ってしまうと、設備投資や人件費への波及までなかなか至らず、そうこうしているうちに不況期に突入してしまう。
それが90年代以降の日本経済に、なかなか這いあがれない「洗面器のカニ」状態をもたらしている、との分析。
この呪縛から逃れるには、4~5年に一回のペースで訪れる好況期を逃さずに、賃金上昇を実現して消費拡大による持続的成長を達成することが肝要。
小泉政権期の「いざなぎ越え」は、その絶好のチャンスだったにもかかわらず、小泉以降短命政権が続いて政治が指導力を発揮できず、企業が賃上げを後回しにして、巨額の内部留保を投資に充てた結果、日本の生産構造は世界よりも進みすぎてしまって(過剰設備状況)、かえって今般の不況期の傷を深くする事態になってしまっている。
少子高齢化で経済のサイズが縮んでいく日本では、今後そうそうチャンスがあるわけではない。
民主党政権の「需要サイド重視」は(「皮肉なことだが」との留保付きで)妥当ともいえるが、今は郵政民営化見直しや高速道路無料化などの弥縫策に走ってしまっていて評価できない。
環境が整った企業から確実に賃上げを実現して家計の可処分所得を高め、少子化対策に万全を期す以外に長期停滞を食い止める方策はない、と結ばれています。
「需要サイドか、供給サイドか」という二項対立で語られがちですが、大切なのは好機を逃さないタイミングだ、とのお話。
よく考えれば当たり前の話ではありますが、なるほどと思いました。
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http://homepage3.nifty.com/joharinokagami/131121.html
上を見ると分かりますけど、20歳前後の人口が最近どんどん減っています。東京に集まった若者がどんどん高齢化していることが分かります。しかも、高齢化とともに微妙に人口が減っています。
日本経済の不調の理由はこういうデータを見ても分かりますね。
あしからず。