そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『シンパサイザー』 ヴィエト・タン・ウェン

2018-01-15 22:35:43 | Books
シンパサイザー
ヴィエト・タン・ウェン
早川書房


正直、文体は読みやすくないし、状況描写も不親切で、登場人物の関係もわかりづらい。
読み始めはページを繰る手も鈍りがちで、最後まで読み切れるとは思えなかった。

ところが、場面が、サイゴン陥落から米国、フィリピン、再び米国、そしてインドシナへとダイナミックに移り、ハードボイルドを超えて、「常軌を逸した」としか表現できないような展開を見せるにつれて、小説の世界にグイグイと引き込まれていく。

主人公のアイデンティティも、周囲の人間との関係性も、ぐちゃぐちゃに破壊されていく。
それは、引き裂かれ、大国に翻弄され続けた祖国・ベトナムの姿そのもの。

フィリピンでの映画撮影は『地獄の黙示録』をモデルにしているようだが、小説から受ける印象は、向こう側からみた『ディア・ハンター』という感じ。

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