鳩の撃退法 上 | |
佐藤 正午 | |
小学館 |
鳩の撃退法 下 | |
佐藤 正午 | |
小学館 |
傑作。
交錯する時間軸と登場人物、コミカルなセリフの応酬、魅力的な舞台設定と鍵を握るガジェット。
内田けんじの映画(『運命じゃない人』『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』)と似ている。
個人的には、こういうのは映画よりも小説の方が向いているように感じる。
いきなり最初の2章での人称のすり替え方の鮮やかさに度肝を抜かれる。
そして虚構の中に虚構を構築するメタ構造。
もちろんこの『鳩の撃退法』自体が虚構なのだが、その虚構の中に事実と虚構(与太話)が不連続に織り込まれるのだ。
上下巻合わせて900ページを超える大作だが、構成力が素晴らしいのでまったくダレない。
その上で構成力を支える筆力(文章力)の確かさ。
1つ前に読んだミステリ小説が、構成力と筆力の点であまりに貧しかったので、この作品の秀逸さが際立つ。
やはりこういう作品に出会えるから小説読みはやめられないのだ。