元プロレスファンの一人として、力道山の半生や人となりについてはそれなりの知識を持っているつもりだったが、昭和47年生まれの自分にとって力道山は白黒の記録フィルムでしか見たことのない歴史的人物であって、まさかその未亡人が令和のこの時代にもご健在であることなど全く知らなかった。
それにしても、この田中敬子という女性が辿った人生、何と数奇なものなのだろう。
22歳の若さで20歳近く年の離れた国民的ヒーローに見初められ結婚したかと思ったら、僅か半年で未亡人に。
しかもその時身重で、力道山と前妻との間の子供3人の年齢の近い母親の役割も担う。
そして、力道山が遺したプロレスに留まらないスポーツ事業、不動産・観光事業を莫大な負債と相続税とともに受け継ぐことになる。
普通の人なら、とてもその重圧に耐えられるものではないだろうに、彼女は生まれ持っての聡明さと強運をもって生き抜く。
その大らかさというか、肝の座り具合には感服してしまう。
80歳過ぎても新日本プロレスの「闘魂ショップ」の店員として働いているというエピソードにもその人柄が感じられ、微笑ましくもある。
力道山の死の前後に何が起こったのか、当時を知る人の証言をもとに明らかにしようとする件りはドキュメンタリーとして抜群に面白い。
そして、力道山が政界・経済界、右翼・裏社会の大物と強い繋がりを持ちながら如何に事業を展開していたのかも描かれており、半世紀ちょっと前の日本社会の実相が窺える点でもとても興味深い。
渋谷の道玄坂に「リキ・スポーツパレス」なる施設が在ったことも初めて知った。
このある意味壮絶な女一代記の中で、清冽な印象を残すのは彼女とアントニオ猪木の関係である。
猪木が力道山に虐げられていた、というのは有名な話だが、ここには田中敬子しか知らない2人の深い師弟愛が語られる。
そして彼女も、3歳年下の弟のような存在であった猪木を、遠くから常に気にかけながら年月を重ねてきた。
猪木が政界に打って出た際、その当選を朝のニュースで彼女が知った場面の描写には、なんだか胸を打たれてしまった。
#ブクログ
それにしても、この田中敬子という女性が辿った人生、何と数奇なものなのだろう。
22歳の若さで20歳近く年の離れた国民的ヒーローに見初められ結婚したかと思ったら、僅か半年で未亡人に。
しかもその時身重で、力道山と前妻との間の子供3人の年齢の近い母親の役割も担う。
そして、力道山が遺したプロレスに留まらないスポーツ事業、不動産・観光事業を莫大な負債と相続税とともに受け継ぐことになる。
普通の人なら、とてもその重圧に耐えられるものではないだろうに、彼女は生まれ持っての聡明さと強運をもって生き抜く。
その大らかさというか、肝の座り具合には感服してしまう。
80歳過ぎても新日本プロレスの「闘魂ショップ」の店員として働いているというエピソードにもその人柄が感じられ、微笑ましくもある。
力道山の死の前後に何が起こったのか、当時を知る人の証言をもとに明らかにしようとする件りはドキュメンタリーとして抜群に面白い。
そして、力道山が政界・経済界、右翼・裏社会の大物と強い繋がりを持ちながら如何に事業を展開していたのかも描かれており、半世紀ちょっと前の日本社会の実相が窺える点でもとても興味深い。
渋谷の道玄坂に「リキ・スポーツパレス」なる施設が在ったことも初めて知った。
このある意味壮絶な女一代記の中で、清冽な印象を残すのは彼女とアントニオ猪木の関係である。
猪木が力道山に虐げられていた、というのは有名な話だが、ここには田中敬子しか知らない2人の深い師弟愛が語られる。
そして彼女も、3歳年下の弟のような存在であった猪木を、遠くから常に気にかけながら年月を重ねてきた。
猪木が政界に打って出た際、その当選を朝のニュースで彼女が知った場面の描写には、なんだか胸を打たれてしまった。
#ブクログ