「激しく怒る」ことを「怒(いかり)り心頭(しんとう)に発する」と言いますが、この言葉を「怒り心頭に達する」と間違えて使っている人が、多いようです。
文化庁が平成24年度に行った調査で、「激しく怒ること」をどのように言うか尋ねたところ、下記のような結果だったそうです。、
平成24年度 平成17年度
(a)怒り心頭に達する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67.1% 74.2%
(b)怒り心頭に発する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23.6% 14.0%
(a)と(b)の両方とも使う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.3% 1.8%
(a)と(b)のどちらも使わない・・・・・・・・・・・・・・ ・・5.0% -
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.0% 10.0%
本来の使い方は(b)の「怒り心頭に発する」ですが、調査結果では、7割近くの人が本来の使い方ではない(a)の「怒り心頭に達する」と回答しています。
また、年代別では、全ての年代で本来の言い方ではない「怒り心頭に達する」を使うと答えた人の割合が、本来の言い方である「怒り心頭に発する」を大きく上回っています。
「怒り心頭」の「頭」は「~のあたり」を意味する接尾語、つまり「心に怒りが生じる」ことを伝える言葉なのだそうです。
日常では「頭にくる」という言葉をしばしば使うために、怒りが頭の天辺まで到達するという意味から「達する」と誤用してしまうのかも知れませんが、「頭」という言葉が「~のあたり」を意味する接尾語であることを理解すれば、誤用は避けられるのではないかと言うことです。
心頭を使用した言葉には、他にも「心頭滅却すれば火もまた涼し」 と言う言葉があります。
この言葉の意味は、「安らかに座禅をくむには、必ずしも山水を必要とするわけではない。心の中から雑念を取りされば火さえも涼しく感じるものだ」というものです。
この言葉からも、「心頭」は「心と頭」を意味するのではなく、「心」あるいは「心の中」を意味する言葉と言うことが理解できるのではないでしょうか。
「激しく怒ること」の正しい使い方は「怒り心頭に発する」です。
「怒り心頭に達する」ではありません。
使用する時は間違わないようにしたいですね。