代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

農産物貿易自由化と遺伝子組換作物とインド農民の自殺

2013年01月26日 | 自由貿易批判
 米倉経団連会長が、日本の財界を代表するという公的な見地からTPP推進を唱えているのか否か、すこぶる疑わしい。米倉からすれば、日本政府が遺伝子組換技術の規制緩和というアメリカの要求を呑むことが、自社利益につながるという関係にあるからだ。典型的な利益相反であろう。こうした利益相反関係にある人物を日本経団連会長という公的立場につけてしまうところが、既にして日本のシステムが構造的に抱える制度的欠陥を露呈しているのである。  このような人物が推進の先頭に立って旗を振っているTPPになど参加すれば、日本の生態系と食品の安全性と農家の生活に重大な脅威となるであろうと懸念するのは当然である。 . . . 本文を読む

間違いだらけのリカード理論

2013年01月20日 | 自由貿易批判
 水鏡仁(酔狂人)さんが、リカードの比較生産費説を批判する以下のエントリーを紹介してくださいました。属人的に得手不得手があり、国の単位で特定産業に特化したところで、その産業部門に適性のない人々までムリにその部門に移動させても生産性は向上しないという論点です。この点、私もまったく同意いたします。水鏡仁さん、ありがとうございました。 http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/2 . . . 本文を読む

速水佑次郎の関税政策論

2012年12月27日 | 自由貿易批判
  世界的な開発経済学者の速水佑次郎氏が亡くなられた。心よりお悔やみ申し上げます。  折しも私は、近著において、ポール・クルーグマン氏と速水佑次郎氏の貿易論を比較しながら、「速水の方が(クルーグマンより)学者の資質として数段は格上である」と書いていた。追悼の意味を込めて、拙著のその部分を引用させていただきたい。速水氏は、関税政策の重要性を十分に強調されていた。 ***拙著『自由貿易神話解体新書』 . . . 本文を読む

国際貿易は動物種の絶滅の原因の30%を占める

2012年12月25日 | 自由貿易批判
 今年の9月に出した拙著『自由貿易神話解体新書 ―関税こそが雇用と食と環境を守る』(花伝社)で訴えたことは主要に三点あった。  ①自由貿易が失業者を増加させ労働条件を悪化させること。  ②自由貿易が飢餓人口を増加させること。  ③自由貿易が種の絶滅など環境破壊を推し進めること。  これらはいずれも国民国家の枠を超えて、世界規模で発生する。ゆえに私は、巷にあふれているナショナリズムからの自由貿易 . . . 本文を読む

ツルネン・マルティさんが『自由貿易神話解体新書』をメルマガで紹介

2012年09月19日 | 自由貿易批判
 前回の記事で紹介した、最近出した拙著『自由貿易神話解体新書』。参議院議員のツルネン・マルティさんがご自身のメルマガの第557号(2012年9月18日付け)で紹介して下さっておりました。以下のサイトから読めます。 http://melma.com/backnumber_151325_5652279/  ツルネンさん、拙著に高い評価をしてくださいました。ありがたいことです。拙著に対するツルネンさ . . . 本文を読む

TPP:穀物価格の変動が激しくなり飢餓リスクが高まる(全国紙経済部記者Fukutyonzokuさんへ)

2011年12月28日 | 自由貿易批判
 全国紙経済部記者Fukutyonzokuさんとの討論の続きの記事をアップいたします。今回は農産物(とくに穀物)を自由貿易の原理に全面的にゆだねれば、価格の乱高下を増幅させ消費者にも生産者にもリスクが大きいという論点を中心に考察いたします。  Fukutyonzokuさんが私を批判してきた記事の原文は下記の通りです。Fukutyonzokuさんの主張からの引用は、(1)~(4)の記事のいずれかから . . . 本文を読む

関税と補助金のどちらが合理的か?(全国紙経済部記者fukutyonzokuさんへ)

2011年12月04日 | 自由貿易批判
 TPP参加と関税撤廃によって、私が危惧するのは、さらなる内需の縮小とデフレの進行、賃金下落、日本の財政破たんリスクの拡大、貿易不均衡の拡大、環境破壊の拡大、天候不順等による供給不足による価格の高騰と飢餓リスクなどです。TPPを推進する方々は、これらのリスクを全く過小評価しているとしか言いようがありません。  関税はいま現在実行されているシステムですが、直接支払いやら、記者さんも必要性を認める穀物備蓄体制やら新しいセーフティネットの整備は未知の領域であり、成功の保障などどこにもありません。いちばん深刻な財政問題を、記者さんは全く問題ないかのように書いている。記者さんのその態度も「ミスリード」と言うのではないのでしょうか? . . . 本文を読む

全国紙経済部記者fukutyonzokuさまへ

2011年11月29日 | 自由貿易批判
 私が11月19日付けのブログ記事(この記事)で批判させていただいた全国紙の経済部記者さんから詳細な反論がやって参りましたので紹介させていただきます。  「TPP反対派大学准教授のデタラメ農業保護論」という記事です。下記サイトにあります。 http://fukutyonzoku.blog.fc2.com/blog-entry-1.html  http://fukutyonzoku.blog . . . 本文を読む

本の紹介:『自由貿易という幻想 ―リストとケインズから「保護貿易」を再考する』

2011年11月27日 | 自由貿易批判
 最近出た本の紹介をさせていただきます。エマニュエル・トッド他著『自由貿易という幻想 ―リストとケインズから「保護貿易」を再考する』(藤原書店刊)という本です。  TPP論争に関連しての緊急出版です。この本の特徴は、「自由貿易はよいがTPPはブロック経済だからダメなのだ」とか「TPPは本来の自由貿易の趣旨に反する」といった批判ではない点にあります。  TPPであろうがWTOであろうが、自由貿易 . . . 本文を読む

TPP推進の全国紙記者氏への反論  ―高圧的に罵倒するバブル・オジサン

2011年11月19日 | 自由貿易批判
 私はツイッターをやらないのですが、私のブログ記事がツイッター上で紹介されるとブログの「ツイート欄」に表示されるので、知らないところで私の記事が議論されているのが目に入ってきます。本日、私のブログ記事が「支離滅裂」「バカ」「無知」・・・・と言いたい放題に罵倒されているのを見つけましたので紹介いたします。  私を罵倒しているのが、某全国紙の経済記者の方です。「fukutyonzoku 首都圏 全国紙 . . . 本文を読む

TPP: 外交信義に反する国と交渉はできない

2011年11月15日 | 自由貿易批判
  APECの際に行われたTPPに関する野田=オバマ会談について、ホワイトハウスのホームページは、野田首相が「すべての品目とサービス分野を貿易自由化の交渉テーブルにのせる」という趣旨の発言をしたと発表した。  日本政府は、「そのような発言はしていない」と抗議。結果、アメリカも「野田首相は、会談ではそのような発言はしていない」ことを認めたと報道されていた。朝日新聞の11月14日の記事参照。    と . . . 本文を読む

アメリカ国民の多数は自由貿易が大嫌い

2011年10月16日 | 自由貿易批判
 私の愛読する孫崎享氏(元外務省の国際情報局長、元防衛大学校教授)のツイッターで展開されているTPP批判は核心を突いていると思う。同氏の下記ツイッターから少し引用させていただく。  http://twitter.com/#!/magosaki_ukeru ***引用開始***  TPP;TPP論議の時、これに乗らないと米国が怒るという論理。しかし、米国国民がどの程度自由貿易に支持をしているか . . . 本文を読む

自由貿易の神話(『環』vol.45藤原書店)

2011年05月04日 | 自由貿易批判
  藤原書店からは発行されている季刊雑誌『環』の最新号(4月30日発行)で「自由貿易の神話」という特集が組まれています。お恥ずかしながら、私も寄稿させていただきました。紹介させていただきます。  「自由貿易」といえば昨年までは、「原発」同様、批判することそのものがタブー視される風潮にありました。TPP問題をきっかけに、中野剛志氏など多くの方々の活躍により、オープンに批判することが「解禁」されまし . . . 本文を読む

『現代農業』4月号の特集「TPPは飢餓を生み出す」

2011年03月04日 | 自由貿易批判
 農文協の発行する『現代農業』が2月号以降、TPP反対企画を連発しています。現在発売中の4月号では第三弾として「飢餓を生み出すTPP」という小特集をしています。その特集の中に拙稿も掲載されており、ウェブサイトを見たら何と私の記事に関しては全文をネットで公開してくださっておりました。  この記事の結論は「失業の増加と賃金下落と農民の土地喪失と環境破壊と飢餓、これが農産物と工業製品の一律自由化の帰結で . . . 本文を読む

農産物関税を撤廃してはいけないシリーズの補足 -アメリカの攻撃的保護主義-

2011年02月07日 | 自由貿易批判
 「農産物関税を撤廃してはいけない」シリーズは前回までの記事で完結の予定でしたが、どうやら多くの方々が、「日本の農業は過保護にされすぎて、それ故に競争力がないのだ」というマスコミや経団連が振りまく言説を信じているようです。そういう人々は、まずはアメリカとEUの農家がどれだけ大切に保護されているかを知る必要があるでしょう。そこでこの補足記事を書くことにします。 米国とEUの農業保護  農業保護を . . . 本文を読む