代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

無駄な道路は造り続ける小泉改革の顛末

2006年02月28日 | 政治経済(日本)
 「無駄な道路は造らない。ゆえに民営化が必要だ」という掛け声は完全に詐欺だったことが判明しました。2月7日、国が計画していた高速道路を全て建設する方針が了承されました。「新直轄方式」という名の下で、採算の取れない道路にも税金を湯水のごとく投入することまで承認されてしまったのです。小泉さん、竹中さん、これじゃ「大きな政府」そのものじゃないですか? 泰山鳴動して鼠一匹も採れなかったわけです。

 私はこの問題に関しては、「高速道路は公営を維持し、無料化し、無駄なものは造らない」という民主党案を支持してきました。無料化案がベストだと今でも思っています。

 道路公団民営化の顛末は、小泉改革の詐欺性を象徴するものだったと思います。ところが例によってマスコミ報道がおかしいのです。民営化の帰結がおかしなことになったのは「族議員・官僚・業界の根強い抵抗によるものだ。もっと改革を進めよう」と、どこの新聞もだいたいこんな論調です。小泉改革の詐欺性を叩くのではなく、もっと改革を応援しなければ抵抗勢力には勝てないですよ、とまあこんな調子で、実質的に小泉同情論・応援論になってしまっているのです。
 
 私は、再三訴えてきました通り「改革の本丸」とは「道路とダム」だと思っています。公共事業費の半分近くを道路とダムの予算がぶんどっていますが、これらの予算の多くがムダだからです。これらのムダを削ってエコロジカル・ニューディール政策を実施すればよい。新エネルギー分野など持続可能な社会の建設のための新しい社会資本整備予算に転用しさえすれば日本は救われる、これが私の主張でした。「緊縮」するのではなく「転用」するのです。

 小泉政権は、本当の改革の本丸である「道路とダム」に関してはメスを入れることもなく、「郵政が改革の本丸」などという、忍法「目くらましの術」で人々を騙し続けてきたのです。これに引っかかって、米国に奉仕するだけの小泉改革を礼賛し続けた大マスコミの責任は、きっと後世の歴史家が裁くことになるでしょう。

 さて道路と関連して、めずらしく小泉首相を支持できる政策もあります。彼が熱心に旗を振っている「日本橋の上の高速道路を撤去しよう」という計画です。マスコミは、「この財政難の時期になんてムダなことを」と非難していますが、私はマスコミとは反対にこちらは支持です。だって、こちらはムダとは全く思わないからです。私は第二東名や第二名神のために税金を払うのはイヤですが、日本橋の復興のためにでしたら喜んで税金を払います。

 だいたい「日本の起点」である日本橋の上に高速道路を通してメチャクチャに破壊した時点で、土建国家・日本のその後の惨状は約束されていたような気がします。自国の伝統や文化を大事にできない国は滅びます。日本橋に象徴される破壊行為と、それによる精神的荒廃の積み重ねが、小泉改革という「破壊の集大成」「日本版・文化大革命」に帰結したように思えてなりません。 
 一つくらい良いことをして辞めたいのであれば、日本橋プロジェクトはやり遂げて欲しいものです。もっともそれによって彼の犯罪的諸政策が免罪されるわけではありませんが・・・・。
   


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7 コメント

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cs2351@peach.ocn.ne.jp (Chic Stone)
2006-02-28 21:11:51
ふと思うのですが、第二東名、第二名神という

高速道路が必要なのは、主に物流ですよね?

ではなぜ、新幹線の貨物版と、超高速輸送船を

作るというのではだめなのでしょう。

省エネ大量輸送飛行機もできればいいです。
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Chic Stone様 ()
2006-03-01 07:22:49
 上記の意見、私も同意いたします。第二東名に関して、既に造ってしまった部分を壊すわけにも行きませんので、今からでも遅くないですから、第二東名の高架の上にレールを施設して、鉄道貨物輸送の専用路線にシフトさせるべきだと思います。いまの東海道線はダイヤが混みすぎていて貨物列車をあまり走らせる余裕がないので、鉄道貨物輸送振興のためにやるべきだと思います。

 
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無理じゃないスかねぇ・・・ (key-bee)
2006-03-02 09:25:27
うちの親父はJRの貨物列車乗りなんですけどね。

給料少ないですよ。

新幹線乗りとはエライ違いです。



新幹線はドル箱だけど、貨物ってのは今の時代儲からないのです。

作れば作るだけ赤字な可能性もあるでしょう。



利便性では、どこをどう考えても大型トラックの方が上回ります。

しかも過酷な価格競争に晒されている運送会社を使えば、コストは安くあがります。



貨物列車でしか運べないような積荷がどれだけあるのか、が問題ですね。
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鉄道貨物のポテンシャル ()
2006-03-02 10:29:22
鉄道貨物の優位性はエネルギー効率、安全性、労働生産性の高さ(トラック100台近く分の貨物を数人で運ぶ)、環境負荷の低さにあります。逆に劣っているのは、小回りが利かないことです(旅客輸送に圧迫されて夜間編成中心になる、路線がつながっているところにしか運べないなど)。



石油の高騰情勢がこのまま進行すれば、その分だけ鉄道輸送の優位性は高まります。(現状はトラック輸送の会社と労働者を泣かして安価なトラック輸送が成立している状態です)大手のトラック輸送会社は行き先と便の時間によってはモーダルシフト(鉄道コンテナ輸送)を積極的に取り入れていますよ。コストが安いからです。



鉄道貨物の効率を向上するには、ハード面とソフト面から考える必要があります。しかし、現在ハード面は年々悪化しています。都市中枢の集配拠点の売却や、鉄道路線の寸断などです。これらは、現在の政治・経済体制から見れば、確かに必然かもしれません。貨物駅や貨物路線の維持よりも、都市再開発や新幹線建設のほうが利権になるからです。ソフト面の変化は私寡聞にして知りません。国鉄時代よりは融通が利くようになっているとのことなのですが…



私の住む京都では、先日高速道路でトラックの玉突き死亡事故がありました。原因は会社が運転手に過重労働を強いていたことではないかといわれています。近年、捜査当局は摘発を強化しているようです。このような点からも鉄道貨物を再評価する必要があるかと思います。



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key-beeさま、南さま ()
2006-03-03 09:47:07
 お二人とも、大変に鋭いコメントをまことにありがとうございました。

 鉄道貨物振興に関しては、単に私の希望です。業界に詳しい方に「今の時代儲からないです」と言われると、反論できません。

 ただ「儲け至上主義、コスト削減至上主義、競争原理至上主義ではこれからの時代はダメなのだ」という一般論を語るしかございません。



 効率性を語るなら、貨幣ベースでのコスト削減よりも、一次エネルギー消費量を削減するという側面の「効率性」の方をより重視すべきなのが21世紀の課題だと思います。



 先月、日本の貿易収支は赤字を記録したそうですが、石油の値段がちょっと上がれば、日本は黒字国から赤字国へと転落するのです。現在の日本経済など所詮は、安価な石油の大量供給という「うたかたの夢」の上に咲いたものでしかないと思います。





 「競争によるコスト削減で価格が下がって消費者には喜びますよ」なんて一般論を竹中氏は繰り返して語ってきました。しかし、消費者もウラを返せば労働者です。みな過酷な競争の中で虐げられ、低賃金・長時間労働で虫の息の状態に追い込まれています。ちょっと物価が下がったところで、誰も幸せになっていません(虚業家のヒルズ族を除いては)。



 私は道路特定財源の一部を鉄道貨物振興予算へとシフトさせることにより、南氏の指摘にあった「ハード面の悪化」の問題を解消し、鉄道貨物の反転攻勢につなげることが可能なのではないかと思います。

 あとはJRの企業努力に期待したいです。

 
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私は怒ってます(爆) (デルタ)
2006-03-16 01:02:14
元、鉄でございます。

お察しの通り、高速道路というのは、自動車運送業の大手の会社と自動車メーカとに煽られ、作っているものです。当時財務大臣だった塩川さんが特定化財源の転用をぶちあげたころ、クロネコヤマトの会長さんが認めてました「しきりに整備を訴えた我々にも、責任の一端がある」と(そのあと続けて、しかしこれからは、一般国道の整備こそ行うべき、と話をすり替えていて、ずっこけました)



>安価な石油の大量供給という「うたかたの夢」の上に咲いたものでしかないと思います。

とおっしゃっている意味、よくわかります。

しかし、これは、本当は、市場に原油価格が委ねられていないから起こる現象でないでしょうか?政府どうしの力関係で、消費国が買いたたいている、というのが実情なのでは?

私自身、「不徹底な」竹中氏らと同類に扱われるのをメイワクに思いますが、

市場というのは、本来自律的な調整機能を持っているのです、と主張しておきたいです。







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デルタ様 ()
2006-03-22 21:14:51
>市場というのは、本来自律的な調整機能を持っているのです、と主張しておきたいです。



 私は、この点に関してはやはり意見が異なります。自由放任主義は不均衡を増大させて、格差を際限なく拡大させると思います。

 もっとも旧ソ連のような計画経済もとんでもないことはもちろんなのですが・・・・。



 市場の力を重視しつつも、市場の調整能力が万能ではないことも同時に認識して、政策的な調整と積極的な格是正をしない限り、大恐慌に至るまで市場は暴走すると思います。



 この点に関しては、私の過去記事ですと下記をご参照くださいますと嬉しく存じます。

http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/32fdc9537a04030425e918a424258994



 



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