いつぞやこのブログでも紹介したことのある私の著書『複雑適応系における熱帯林の再生 -違法伐採から持続可能な林業へ』が独立行政法人・日本貿易振興機構・アジア経済研究所の途上国研究奨励賞を受賞してしまい、昨日はその受賞式に出かけてきました。詳しくはこちらをご参照ください。この賞は、経済学、政治学、歴史学、社会学、人類学など人文・社会科学分野の発展途上地域に関する研究の中から、毎年選出されるものです。歴代受賞者にはすごい業績の先生方が並んでおり、おそらく、私のような定職のないフリーター研究者が受賞したのは始めてではないかと思われます。「僕のようなフリーターがもらってしまって良いのだろうか?」受賞した本人が一番驚いているという次第です。
この本に関しては、複雑系経済学のパイオニア研究者として知られる塩沢由典先生がいち早くお褒めの言葉を下さいました。しかしながら、この本の研究アプローチを評価できる塩沢先生のような学者は日本中探しても稀であり、「おそらく一般の人文・社会科学研究者はこの本を読んで腹を立てるのではないだろうか」というのが私の予想でした。
というのも、既存の人文・社会科学の諸分野を「要素還元主義的ディシプリン研究」などと批判しているからです。
私はフリーター研究者で「失うべきものは鉄鎖以外に何もない」という状態ですので、そういう人間は歴史上の誰かさんも言ったように、かなり大胆な行動を取れるみたいです。評価されることなど全く期待せず、人文・社会科学の行儀作法から逸脱して、書きたいことを書かせていただいたのでした。
でも理系分野の方々、あるいは出自が理系の人文・社会科学研究者(私もそうなのですが)の中にはこの本を面白がってくれる人がいるかも知れない・・・・というぐらいに考えておりました。
それにもかかわらず人文・社会科学の本流の賞をいただいたので、本当にびっくり。もらった瞬間「ヤバイ。この品のないブログが見つかって受賞取り消しになったらどうしよう?」などと心配してしまいました。「あそうか、研究者ってこうやって保守化していくのか」と思わず納得。
私の受賞理由は次の二点でした。審査委員を代表して政治学者の白石隆先生が次のような講評を下さいました。白石先生のコメントから抜粋して引用させていただきます。
「(前略)第1に、本書は、ある特定のディシプリンを専攻してアプリオリに問題を措定するのではなく、フィールド・ワークの中でみずから発見した問題をさまざまなディシプリンによりつつ、どう理解し、どう説明するのか、格闘している、その格闘の軌跡が本のいたるところに残っており、それが本書の若々しい記述をもたらしている。第2は問題そのものの重要さである。本書で取り上げられる問題はフィリピンのルソン島イサベラ州だけに特有のものではなく、インドネシアでもマレーシアでもさらにはそれ以外の世界のさまざまの地域でもおこっているし、また将来、おこりうる。本書はそういった問題に個別事例の観察を超えたなんらかの一般性をもつ方策を探り出そうとしている。
本書の基盤となっているような調査は決して容易なものではない。そういう調査を長期にわたって実施し、政策的意味合いの大きい事例を見つけ出し、それを事例の著述を超えた知見に発展させている。」
とここまで褒めてくださっていて、講評の最後には以下のような批判の言葉で締めくくられています。やはり複雑適応系のアプローチに関しては理解していただけませんでした。
「…専攻委員会は、本書において理論的枠組みとして採用された複雑適応系の妥当性を評価しているわけではない。専攻委員会の討議においては、このような理論的枠組みを援用することによって、本来もっと重視されるべき論点、事実が逆に十分、検討されなかったのではないかと強い懸念が表明された。これからの研究においては、理論的にもっと柔軟に研究を続けられることを期待することとしたい。」
というわけで、この本が評価されたのはフィールド・ワークの中味であって、「複雑適応系」というアプローチに関してではなかったのでした。選考委員の先生方の中でも、評価する声とそうでない声が大きく割れたことが伺えます。
妥当な評価だと思います。何せ書いた本人は「正当な人文・社会科学分野の研究者だったらこの本を読んで腹を立てるだろう」と予想しながら書いていたのですから……。
にも関わらず、「熱帯林における違法伐採から持続可能な林業への転換」という本書の実証研究の中味に関しては、非常に高く評価していただけたわけです。これは本当に嬉しいことでした。
この本に関しては、複雑系経済学のパイオニア研究者として知られる塩沢由典先生がいち早くお褒めの言葉を下さいました。しかしながら、この本の研究アプローチを評価できる塩沢先生のような学者は日本中探しても稀であり、「おそらく一般の人文・社会科学研究者はこの本を読んで腹を立てるのではないだろうか」というのが私の予想でした。
というのも、既存の人文・社会科学の諸分野を「要素還元主義的ディシプリン研究」などと批判しているからです。
私はフリーター研究者で「失うべきものは鉄鎖以外に何もない」という状態ですので、そういう人間は歴史上の誰かさんも言ったように、かなり大胆な行動を取れるみたいです。評価されることなど全く期待せず、人文・社会科学の行儀作法から逸脱して、書きたいことを書かせていただいたのでした。
でも理系分野の方々、あるいは出自が理系の人文・社会科学研究者(私もそうなのですが)の中にはこの本を面白がってくれる人がいるかも知れない・・・・というぐらいに考えておりました。
それにもかかわらず人文・社会科学の本流の賞をいただいたので、本当にびっくり。もらった瞬間「ヤバイ。この品のないブログが見つかって受賞取り消しになったらどうしよう?」などと心配してしまいました。「あそうか、研究者ってこうやって保守化していくのか」と思わず納得。
私の受賞理由は次の二点でした。審査委員を代表して政治学者の白石隆先生が次のような講評を下さいました。白石先生のコメントから抜粋して引用させていただきます。
「(前略)第1に、本書は、ある特定のディシプリンを専攻してアプリオリに問題を措定するのではなく、フィールド・ワークの中でみずから発見した問題をさまざまなディシプリンによりつつ、どう理解し、どう説明するのか、格闘している、その格闘の軌跡が本のいたるところに残っており、それが本書の若々しい記述をもたらしている。第2は問題そのものの重要さである。本書で取り上げられる問題はフィリピンのルソン島イサベラ州だけに特有のものではなく、インドネシアでもマレーシアでもさらにはそれ以外の世界のさまざまの地域でもおこっているし、また将来、おこりうる。本書はそういった問題に個別事例の観察を超えたなんらかの一般性をもつ方策を探り出そうとしている。
本書の基盤となっているような調査は決して容易なものではない。そういう調査を長期にわたって実施し、政策的意味合いの大きい事例を見つけ出し、それを事例の著述を超えた知見に発展させている。」
とここまで褒めてくださっていて、講評の最後には以下のような批判の言葉で締めくくられています。やはり複雑適応系のアプローチに関しては理解していただけませんでした。
「…専攻委員会は、本書において理論的枠組みとして採用された複雑適応系の妥当性を評価しているわけではない。専攻委員会の討議においては、このような理論的枠組みを援用することによって、本来もっと重視されるべき論点、事実が逆に十分、検討されなかったのではないかと強い懸念が表明された。これからの研究においては、理論的にもっと柔軟に研究を続けられることを期待することとしたい。」
というわけで、この本が評価されたのはフィールド・ワークの中味であって、「複雑適応系」というアプローチに関してではなかったのでした。選考委員の先生方の中でも、評価する声とそうでない声が大きく割れたことが伺えます。
妥当な評価だと思います。何せ書いた本人は「正当な人文・社会科学分野の研究者だったらこの本を読んで腹を立てるだろう」と予想しながら書いていたのですから……。
にも関わらず、「熱帯林における違法伐採から持続可能な林業への転換」という本書の実証研究の中味に関しては、非常に高く評価していただけたわけです。これは本当に嬉しいことでした。
(受賞したからというわけではないのですが笑)ご著作、読むぞリストに入れさせて頂きます。
フィールドワークはそれはすごいものでした。
ところでバウちゃんには連絡しましたか?
きっとものすごく喜んでいただけるはず。
のちほどメールいたします。
おめでとう、おめでとう!!