代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

東京新聞が『社会的共通資本としての森』を紹介

2015年05月06日 | 自分の研究のことなど
 2015年5月5日付けの『東京新聞』の特報面で、宇沢弘文先生と私との共編著である『社会的共通資本としての森』(東大出版会)が紹介されました。記事の一部を以下に貼り付けておきます。
 「なぜ経済学者の宇沢氏が晩年に森の本を編集する気になったのか?」という質問を受けました。共編者の私の立場として、なぜ宇沢先生が森林に対して強い関心をもっておられたのかを説明しておきました。

 一つは、宇沢先生が気候変動の抑制と生物多様性の保全に対し、経済学者としてという以前に、一人の人間としてなみなみならぬ意欲を示していた点です。宇沢先生は、化石燃料の使用や森林伐採・土地転用などに対し、所得格差に応じた国際基準の「比例的炭素税」を付加することによって、森林減少を抑え、それを財源に造林・育林活動を促し、大気中のCO2濃度と森林面積の安定化、生物多様性の保全、先進国と途上国の所得格差の是正などを同時に展開可能であると考えておられました。ジョン・スチュアート・ミルが提唱した定常状態(stationary state)を理想と考えた宇沢先生にとって、地球の大気と森林を人間が快適に暮らしていくために定常状態で安定化させていくことは、是が非でも実現しなければならないことでした。『社会的共通資本としての森』でも再度、そのための道筋をモデルで提示しています。

 もう一つは、森林の保水機能を無視しダム建設を強行する国交省の姿勢に対して、宇沢先生が強い怒りを感じておられたことです。宇沢先生は「ダム検証のあり方を問う科学者の会」の呼びかけ人でもあり、ダムに頼らない治水のあり方を模索されていました。本書の私の担当章では、森林を質的に改善していくことでダムを上回る治水効果が得られることを明確に示しました。国交省はダム建設を貫くため、あくまでもこの事実を否定し続けようとするでしょう。読者の皆様の判断を仰ぎたいと思います。

 以下、『東京新聞』の記事の最後の部分の引用です。

関氏は、宇沢氏の思いをこう語る。「森の保水力を無視してダム建設を強行しようとする国土交通省の姿勢に対する憤りが、編集の直接のきっかけだった。森や川は国有、私有を問わず、自然の機能を損なってまで金もうけのために開発してはならない。これがこの本に込めたメッセージだ」
 


2015年5月5日『東京新聞』特報面より抜粋

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