代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

官僚と天下りと大学

2013年04月03日 | 学問・研究
 本日(2013年4月3日)の『東京新聞』特報面に「『原子力ムラ』厚顔の癒着」という記事があった。原子力規制庁ナンバー3の審議官だった名雪哲夫氏(文科省からの出向)は、今年の1月に規制庁の内部報告書の原案を日本原子力発電に情報漏えいしていた。規制する側と規制される側が、緊張関係なくウラでつながっているという、まさに官・業の癒着ムラ社会が、「原子力規制庁」に看板を掛けかえた後も横行していることを如実に示したわけだ。

 名雪氏は、訓告処分を受け出身官庁の文科省に戻っていたそうだ。ところが、名雪氏はいつのまにか文科省から山形大学の教授に天下っていたのだという。
 山形大学といえば、学長ご本人が文科省出身。文科省が強引に押し込んだ天下り学長である。困っている古巣・文科省の同僚を天下り先の山形大で救ってやったというところだろうか。

 何でも名雪氏は、山形大で放射線がん治療の研究支援を行うそうだ。研究実績もろくにない官僚に、まともな研究などできるのだろうか。教育も、もちろんできないだろう。研究にも教育にも役立たないとすれば、人件費のムダ甚だしいというべきであろう。研究現場の雰囲気も悪くなるだろう。同情を禁じ得ない。

 悲しむべきことに、大学の現状なんてこんなもんである。国立大学の独立行政法人化の際には、大学の自由度が増えるように喧伝されていたが、何のことはない独立行政法人化にともなって文科省から大学に天下り官僚が送り込まれるシステムができあがっただけである。

 官僚が「自由」とか「競争」とか「市場原理」とかいった名目を掲げて「改革」をすると、なぜか官僚の天下りポストが増えていき、天下りを受け入れた側は、それはそれは不自由で息苦しいおバカな組織に変わっていくのだ。

 文科省の役人の数を減らし、彼らの天下りを根絶することこそ、文科省が日本の研究環境を改善するために成し得る最大の貢献といえるだろう。

 ちなみに私大にも天下る文科省役人の受け入れ先大学リストは「My News」の下記サイト参照。

http://www.mynewsjapan.com/reports/1181
 
 ちなみに天下り受け入れ大学第一位はN大で、第二位はW大。私大が天下りを受け入れると私学助成補助金も増え、「事実上、税金が役人の雇用対策に使われている」と上記記事は分析する。

 官僚たちは血税にたかって天下り先での雇用を確保しつつ、大学に対しては研究費を減らしながら、「競争的資金」をエサにして締め付けを厳しくする。しかし競争的資金に依存すると、文科省に提出する書類の量が際限なく増えていき、自由に思考する時間が減っていく。文科省に管理されるから教員の雑務が増えて研究時間は減っていき、研究のクオリティなどむしろ落ちるのだ。

 研究の仕方もろくに知らない文科省官僚たちが、自分たちが大学を管理して、現場の研究者を締め付ければ締め付けるほど大学の研究実績は上がっていくと本気で考えているらしいから、滑稽この上ない。実際には、彼らが口を出さなければ出さないほど、研究者の創造性は発揮されるのである。 

 私自身、科研費をもらっていたりすると、それだけで、いつの間にか自分が文科省を批判しにくくなっているのに気付いて愕然とする。そうなりたくないから、もう科研費も申請しない。自腹を切って研究する。

 文科省の締め付けが厳しくなっているためか、何かの政治課題で大学教員に署名や賛同を求めても、だんだん集まりが悪くなっているように思う。

 ダム検証のあり方の是正を求める賛同を集めた際も、とくに締め付けが強まっている国立大学などで、「趣旨には大賛成だが、周囲の目があって名前は出せない」といったように丁重に断ってこられた教員も何名もおられたものだった。

 最近も「TPP参加交渉からの即時撤退を求める大学教員の会」というのができて、私もさっそく賛同署名したが、いまの日本の大学の官僚による締め付け具合の中で、なお賛同される先生方はよほどの覚悟だと思う。署名も集まりにくいと思うが、私も頑張って周囲に声をかけたい。
 ちなみに、TPPからの即時撤退を求める大学教員の会のブログは下記である。

http://atpp.cocolog-nifty.com/
   
 


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