先ほど、ブログのランキングというものを初めて見たら、上位にずらりと反中国・反韓国サイトが並んでいるのを知って驚きました。日本では反中国・反韓国論はますます盛り上がっているようです。しかも若い人々があれだから、「この先どうなってしまうのだろう」と暗澹たる思いがします。日本の右派は、どうやら、親米路線がどうして日本の利益になるのかますます説明困難になる中で(現実は被害ばかりですから・・・)、ひたすら反中・反北朝鮮・反韓国感情を煽ることによって、親米路線を正当化するための最後の活路を見出そうとしているようです。やれやれ。
私ごときがこんな弱小ブログで何を書こうが、焼け石に水かも知れませんが、手をこまねいているわけにもいかないという思いを強くしました。現在、世界では中国に期待する声が非常に高まっています。その世界潮流を理解できずして、ナントカの一つ覚えで親米反中路線を貫けば、日本は世界から決定的に孤立するでしょう。
米国の調査機関のPewリサーチセンターが各国で米国と中国のイメージ調査をした結果によれば、フランスでは評価ポイントは米国43に対し中国58で中国が上、何と英国でも米国55に対し中国65で中国が上だったそうです。(『毎日新聞』7月22日朝刊記事より)。どうも世界の世論は、日本の世論の流れとは全く逆に行っているようです。
ASEAN諸国も、ベトナムという中国に侵略された苦い経験を有する国などを除けば、軒並み中国への評価は高まっています。それはアジア通貨危機がきっかけでした。IMFにそそのかされて金融を自由化した結果、通貨危機の惨禍を経験したASEAN諸国は、管理相場制や国有銀行制度を維持するといった具合にIMFスタンダードを全く無視しながら経済成長を続ける中国の経済政策を評価するようになり、「米国への盾」としての機能を期待するようになったのです。
フランス、ドイツ、ブラジルなどで中国の評価が高いのも同様な理由でしょう。米国から発せられる市場原理主義の猛攻に対する防波堤を築く上で、中国と戦略的に提携する必要性を感じているからでしょう。
ASEAN諸国としては、このまま米国の市場原理主義的構造改革要求を呑み続けて、さらなる惨禍を招くよりは、戦略的に中国との提携を強化する方が、内政干渉を繰り返す米国に対する牽制となり国益にかなうと判断したのでしょう。そしてタイを始めとして、ASEAN諸国は、みるみるうちに中国に接近していきました。
中国は毛沢東時代に革命の輸出を試みたので、タイ共産党、マラヤ共産党、ビルマ共産党、そして最悪なことにはクメール・ルージュと、東南アジア諸国の共産ゲリラを支援し続けた経緯があり、ASEAN諸国の中国に対する警戒感は根強い強いものがあります。そうした過去を考えれば、そんなに簡単に心を許しあえるわけもありません。
それでも、過去のことはさておいてでも、ASEAN諸国は差し迫った米国という脅威に対する牽制機能を、中国に求めるようになったのです。それは決して中国の傘下に入るとかそういうことではありません。引き続き米国とは友好関係を維持したいが、あまりにも市場原理主義にもとづいて無理な要求をされ続けたら国が破壊されてしまうから、中国を利用しながら米国を牽制するようになったのです。
アジア諸国は、かつてマレーシアの「ルック・イースト政策」に代表されるように、政府主導の産業政策によって高度成長を遂げた日本という非米国型の資本主義をモデルとして、経済開発を進めようとしました。そして政府主導の産業政策は確実に成果をあげてきたのです。
ASEANの中核4カ国の中で、その潜在能力の割りに取り残されていたのがフィリピンです。フィリピンが他の国々と何が違うのかといえば、政府が産業政策を持たなかったこと、5ヵ年計画の実施など計画性を全く持たなかったことだと思います。
さらに、どうしてそうなったのかと問えば、フィリピンのエコノミストや経済官僚は、基本的には旧宗主国である米国に留学し、新古典派経済学(=市場原理主義)で洗脳されて帰国してくるからです。その国の官僚エリート層を自国に留学させて、新古典派経済学で洗脳した上で帰国させるというのが、米国の世界支配のシステムの根幹です(竹中氏のような米国留学組みが日本を破壊しているのも同じことです)。
フィリピンの場合、独立直後から官僚がみな「市場原理はすばらしい。小さな政府はすばらしい」と思ってしまったので、自立した産業政策など持ちえず、取り残されてしまったのです。日本型資本主義に範を取ろうとしたマレーシアとは決定的な差が出てしまいました。つまり、フィリピンの貧困は、かつての宗主国である米国に責任の大きな部分があるのです。フィリピン人は教育レベルが高く、潜在能力はすばらしいので、政府がしっかりした産業政策を持ちさえすれば、あっというまに成長するでしょう。(ラモス政権時代に、積極的にIT産業にテコ入れしましたが、その成果はすぐに出ました)。
もし、小泉=竹中の目指す「小さな政府」の理想の行く末にどのような社会があるのかを知りたければ、是非、フィリピンをご覧になってください。フィリピンこそは60年にわたって、「小さな政府」の理想を追い求めてきた、アジアにおける「小さな政府」の「先進国」なのです。その結果があれなのです。一部の特権階級だけが優雅な生活を送り、大多数の人々は貧困に喘ぐ社会なのです。
現在、ますます多くのASEAN諸国が、米国の言いなりになって「小さな政府」モデルを受容し続けようとする日本は、もはや範にはならないと思うようになっています。マレーシアのマハティール前首相などが典型的にそうです。彼は、リーダーとして期待していた日本に裏切られて傷ついています。マハティール前首相が提唱したEAEC(東アジア経済会議)構想を、米国の圧力を受けて潰しにかかったのは日本の外務省でした。そんなこんなで、ASEANは中国に期待するようになったというわけです。
しかしながら考えてみれば、中国もそもそもは資本主義のやり方を、米国にではなく日本に学んだのです。たとえば私の先生でもある、経済学者の宇沢弘文氏は、趙紫陽元首相と親しかったのですが、毛沢東時代の5ヵ年計画の何が誤っていたのかを首相の前で堂々と指摘し(宇沢先生は「党中央が間違っているからだ」と趙首相の前で言ったそうです)、正しい5ヵ年計画の経済モデルを直接に伝授したそうです(残念ながら趙紫陽元首相は、天安門事件で失脚してしまったのですが・・・・・)。もし中国が、最初から米国型の資本主義モデルを導入しようとしていたら、最悪の結果になっていたでしょう。
日本人は、そろそろ目を覚ます時期でしょう。このまま反中を感情的に煽ったところで、日本は世界の孤児になるだけでしょう。
だいたい、過去において国内のゲリラ活動を支援されたASEAN諸国すらが中国と提携するようになったのです。それに比べて日本は、中国からそういう規模の具体的被害など受けたことがありません。それなのに、実体験にも基づかない文献情報のみによって、あのようなヒステリックな反中論を煽ることのできる人々の思考回路というのは一体どうなっているのだろうと感心してしまいます。プラザ合意以降、日本が米国から受けた被害など枚挙にいとまがないのに、そうした人々は何で米国は許せるのでしょう?
おそらく、日本国内でもっとも中国から被害を受けたのは日本共産党の人々でしょう。1950年代初頭の日本共産党は、中国共産党から武装闘争をやるように圧力を受けて、党は所感派と国際派に分裂し、人々の支持を完全に失って、国会議席も一挙に失ってしまいました。中国の指導に従って、実際に山村工作隊などの武装闘争に駆り立てられた人々は(私の父親もその世代なのですが)、取り返しのつかない心の傷を負ったのです。
中国からの干渉がひどすぎて、ついに日本共産党は中国共産党と断交したのでした。その日本共産党ですら、今では中国共産党と和解しています。その経緯は詳しくは知りませんが、中国共産党の方が、「自分たちが悪かった」と謝罪したようです(実際に中国が悪かったのですから当然でしょう)。その程度の柔軟性は、中国共産党にはあります。
中国嫌いの日本人の方々には、単に「牽制」として割り切って下さってもよいと思います。日本が中国を戦略的に利用するだけで、米国は、郵貯をハゲタカに生け贄として差し出させというような要求を次々に押し付けてくることはできなくなるでしょう。
「中国や北朝鮮が怖いから米国に頼むしかない」と念仏のように唱えるのは、ますます米国を増長させ、日本をバカにするようになり、さらに過酷な要求を突きつけるようになるだけでしょう。そうした主張は決定的に売国的なものであると、親米右派の方々に申したいと思います。
私ごときがこんな弱小ブログで何を書こうが、焼け石に水かも知れませんが、手をこまねいているわけにもいかないという思いを強くしました。現在、世界では中国に期待する声が非常に高まっています。その世界潮流を理解できずして、ナントカの一つ覚えで親米反中路線を貫けば、日本は世界から決定的に孤立するでしょう。
米国の調査機関のPewリサーチセンターが各国で米国と中国のイメージ調査をした結果によれば、フランスでは評価ポイントは米国43に対し中国58で中国が上、何と英国でも米国55に対し中国65で中国が上だったそうです。(『毎日新聞』7月22日朝刊記事より)。どうも世界の世論は、日本の世論の流れとは全く逆に行っているようです。
ASEAN諸国も、ベトナムという中国に侵略された苦い経験を有する国などを除けば、軒並み中国への評価は高まっています。それはアジア通貨危機がきっかけでした。IMFにそそのかされて金融を自由化した結果、通貨危機の惨禍を経験したASEAN諸国は、管理相場制や国有銀行制度を維持するといった具合にIMFスタンダードを全く無視しながら経済成長を続ける中国の経済政策を評価するようになり、「米国への盾」としての機能を期待するようになったのです。
フランス、ドイツ、ブラジルなどで中国の評価が高いのも同様な理由でしょう。米国から発せられる市場原理主義の猛攻に対する防波堤を築く上で、中国と戦略的に提携する必要性を感じているからでしょう。
ASEAN諸国としては、このまま米国の市場原理主義的構造改革要求を呑み続けて、さらなる惨禍を招くよりは、戦略的に中国との提携を強化する方が、内政干渉を繰り返す米国に対する牽制となり国益にかなうと判断したのでしょう。そしてタイを始めとして、ASEAN諸国は、みるみるうちに中国に接近していきました。
中国は毛沢東時代に革命の輸出を試みたので、タイ共産党、マラヤ共産党、ビルマ共産党、そして最悪なことにはクメール・ルージュと、東南アジア諸国の共産ゲリラを支援し続けた経緯があり、ASEAN諸国の中国に対する警戒感は根強い強いものがあります。そうした過去を考えれば、そんなに簡単に心を許しあえるわけもありません。
それでも、過去のことはさておいてでも、ASEAN諸国は差し迫った米国という脅威に対する牽制機能を、中国に求めるようになったのです。それは決して中国の傘下に入るとかそういうことではありません。引き続き米国とは友好関係を維持したいが、あまりにも市場原理主義にもとづいて無理な要求をされ続けたら国が破壊されてしまうから、中国を利用しながら米国を牽制するようになったのです。
アジア諸国は、かつてマレーシアの「ルック・イースト政策」に代表されるように、政府主導の産業政策によって高度成長を遂げた日本という非米国型の資本主義をモデルとして、経済開発を進めようとしました。そして政府主導の産業政策は確実に成果をあげてきたのです。
ASEANの中核4カ国の中で、その潜在能力の割りに取り残されていたのがフィリピンです。フィリピンが他の国々と何が違うのかといえば、政府が産業政策を持たなかったこと、5ヵ年計画の実施など計画性を全く持たなかったことだと思います。
さらに、どうしてそうなったのかと問えば、フィリピンのエコノミストや経済官僚は、基本的には旧宗主国である米国に留学し、新古典派経済学(=市場原理主義)で洗脳されて帰国してくるからです。その国の官僚エリート層を自国に留学させて、新古典派経済学で洗脳した上で帰国させるというのが、米国の世界支配のシステムの根幹です(竹中氏のような米国留学組みが日本を破壊しているのも同じことです)。
フィリピンの場合、独立直後から官僚がみな「市場原理はすばらしい。小さな政府はすばらしい」と思ってしまったので、自立した産業政策など持ちえず、取り残されてしまったのです。日本型資本主義に範を取ろうとしたマレーシアとは決定的な差が出てしまいました。つまり、フィリピンの貧困は、かつての宗主国である米国に責任の大きな部分があるのです。フィリピン人は教育レベルが高く、潜在能力はすばらしいので、政府がしっかりした産業政策を持ちさえすれば、あっというまに成長するでしょう。(ラモス政権時代に、積極的にIT産業にテコ入れしましたが、その成果はすぐに出ました)。
もし、小泉=竹中の目指す「小さな政府」の理想の行く末にどのような社会があるのかを知りたければ、是非、フィリピンをご覧になってください。フィリピンこそは60年にわたって、「小さな政府」の理想を追い求めてきた、アジアにおける「小さな政府」の「先進国」なのです。その結果があれなのです。一部の特権階級だけが優雅な生活を送り、大多数の人々は貧困に喘ぐ社会なのです。
現在、ますます多くのASEAN諸国が、米国の言いなりになって「小さな政府」モデルを受容し続けようとする日本は、もはや範にはならないと思うようになっています。マレーシアのマハティール前首相などが典型的にそうです。彼は、リーダーとして期待していた日本に裏切られて傷ついています。マハティール前首相が提唱したEAEC(東アジア経済会議)構想を、米国の圧力を受けて潰しにかかったのは日本の外務省でした。そんなこんなで、ASEANは中国に期待するようになったというわけです。
しかしながら考えてみれば、中国もそもそもは資本主義のやり方を、米国にではなく日本に学んだのです。たとえば私の先生でもある、経済学者の宇沢弘文氏は、趙紫陽元首相と親しかったのですが、毛沢東時代の5ヵ年計画の何が誤っていたのかを首相の前で堂々と指摘し(宇沢先生は「党中央が間違っているからだ」と趙首相の前で言ったそうです)、正しい5ヵ年計画の経済モデルを直接に伝授したそうです(残念ながら趙紫陽元首相は、天安門事件で失脚してしまったのですが・・・・・)。もし中国が、最初から米国型の資本主義モデルを導入しようとしていたら、最悪の結果になっていたでしょう。
日本人は、そろそろ目を覚ます時期でしょう。このまま反中を感情的に煽ったところで、日本は世界の孤児になるだけでしょう。
だいたい、過去において国内のゲリラ活動を支援されたASEAN諸国すらが中国と提携するようになったのです。それに比べて日本は、中国からそういう規模の具体的被害など受けたことがありません。それなのに、実体験にも基づかない文献情報のみによって、あのようなヒステリックな反中論を煽ることのできる人々の思考回路というのは一体どうなっているのだろうと感心してしまいます。プラザ合意以降、日本が米国から受けた被害など枚挙にいとまがないのに、そうした人々は何で米国は許せるのでしょう?
おそらく、日本国内でもっとも中国から被害を受けたのは日本共産党の人々でしょう。1950年代初頭の日本共産党は、中国共産党から武装闘争をやるように圧力を受けて、党は所感派と国際派に分裂し、人々の支持を完全に失って、国会議席も一挙に失ってしまいました。中国の指導に従って、実際に山村工作隊などの武装闘争に駆り立てられた人々は(私の父親もその世代なのですが)、取り返しのつかない心の傷を負ったのです。
中国からの干渉がひどすぎて、ついに日本共産党は中国共産党と断交したのでした。その日本共産党ですら、今では中国共産党と和解しています。その経緯は詳しくは知りませんが、中国共産党の方が、「自分たちが悪かった」と謝罪したようです(実際に中国が悪かったのですから当然でしょう)。その程度の柔軟性は、中国共産党にはあります。
中国嫌いの日本人の方々には、単に「牽制」として割り切って下さってもよいと思います。日本が中国を戦略的に利用するだけで、米国は、郵貯をハゲタカに生け贄として差し出させというような要求を次々に押し付けてくることはできなくなるでしょう。
「中国や北朝鮮が怖いから米国に頼むしかない」と念仏のように唱えるのは、ますます米国を増長させ、日本をバカにするようになり、さらに過酷な要求を突きつけるようになるだけでしょう。そうした主張は決定的に売国的なものであると、親米右派の方々に申したいと思います。
中国は日本を守ってはくれないから。
あの小国のフィリピンも、核はもちろん充分な軍事力も保有してませんが、1991年に民主主義の力によって米軍基地を国内から撤去させました。
だいたい、こんな資源もない日本などを侵略したい物好きは存在しません。日本の資源といえば、1400兆円の個人金融資産なのですが、それを奪おうと侵略作戦を展開しているのは他ならぬ米国です。
その1400兆円の金融資産を防衛するために必要なのは、政策・未来社会への戦略的ビジョンなのであり、核ではないのです。
日本人なら誰もが、『アメリカ』については良い面も悪い面も知っている。
でも韓国中国の悪いところは全然報道しないんだよね。
しかし、反中報道、反韓国報道など巷の月刊誌などに溢れかえっているように思えます。情報過剰なくらいではないでしょうか。
私も、中国に関しては、もちろんそんな誉められた政府だと思っていませんので、たくさん批判しています(専門に関連して中国の森林政策の誤りについてですが・・・・)。
巷に氾濫する反中国論と、私の中国批判の何が違うのかといえば、敵として批判するのか、友人として批判するのかでしょう。
また、アメリカ資本主義の恐ろしさを、まだまだ日本人は理解しているとは思えません。
アジア通貨危機の前、エンロン事件の前には、あのようなシステムを圧倒的に多くの日本人が無批判に賛美していたのです。
私など、90年代初頭の学生の頃からIMFの構造調整が世界を破滅に導くと訴えていましたが、そうした主張は全く相手にされなかったものです。
また、私は小泉政権は根本的に嫌いです。小泉首相が韓国や中国からいくら批判されても、日本人が侮辱されているとは感じません。日本人として恥ずかしい、早くあの政権を取り換えようと思うだけなのです。
私は、多少は譲っても、加害国の側が誠心誠意の謝罪をするのが歴史問題解決の基本だと思います。ドイツはそれで近隣諸国の信頼を勝ち得ました。
また特に親中になる必要はないです。もし米国への牽制として中国に接近して中国から理不尽な要求されるようなことがあったら、今度はアメリカに接近して中国を牽制するくらいのこと考えればよいわけです。
それが外交の基本だと思います。
中国とは必要最低限の交流をし、アメリカとの強固な同盟を維持し、国防力を徐々につけていくのが一番正しいように思います。
それと「小さな政府」がうまくいかなかった国は元々貧しい国ですよね?日本もそうなると言われても極論のように感じます。
「近すぎる」という地政学的な問題に関してですが、例えばドイツとフランスはまさに地政学的に近すぎる関係により、お互いに血で血を洗う殺戮の歴史を繰り広げてきました。とても日中の比じゃないくらい、歴史的な怨恨は深いと思います。国境地帯の鉄鋼資源はたえず戦争の原因をつくってきました。
ところが現在ではあのように強固な「共同体」としての関係を結んでいます。その共同体関係の始まりは、1949年にできた「ヨーロッパ鉄鋼共同体」でした。要するに、それまでは戦争の原因になってきた鉄鋼を、ドイツとフランスで共同管理してプールし、平等に配分しようというものでした。それが今日のEUの始まりだったのです。
中国と日本の紛争解決も同じ方向でよいと思います。日中韓鉄鋼共同体とか、日中韓天然ガス共同体とか、いろいろ試みれば、独仏のような関係を構築できると思います。とくに私は今後天然ガスが重要だと思います。シベリアからの天然ガスを、中国、朝鮮半島、日本とで同じパイプラインで共有するというようなシステムをつくれば、ライフラインが共有され、政治的にも「共同体」としてまとまっていくだろうと思います。
その結果、あれだけの科学技術・軍事技術を誇った大国のロシアが、GDPは半分近くにまで減少し、失業者があふれかえり、医療サービスも低下し、平均寿命は5歳以上も縮まってしまったのでした。
エリチェンが何も考えずに、IMFに言われるままに、民営化、規制緩和、自由化をやり続けた結果なのです。
あれだけの科学・軍事技術を計画的に民需転換しながら、徐々に市場経済を取り入れていくような改革をすれば、あのような事態にはならなかったでしょう。
事実、ハンガリーやポーランドでは、「革命」の後しばらくして社会民主主義政党に脱皮した旧共産党がすぐに選挙で政権を取り返しましたが、政府が計画的に市場経済の導入を進めたので、ロシアのような悲惨な事態にはなりませんでした。
この辺は、ジョセフ・スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』徳間書店、を参考にして下さればと思います。
最近では、米国に要求された「小さな政府」で大変に貧富の格差が拡大していたベネズエラもブラジルも、選挙で左派政権ができてから、貧困も解消させつつ、順調な経済発展を始めています。米国は、何とかしてそうした南米の左派政権を潰そうとしているのです・・・・。
つまり何かあれば、やれセーフガードだ、やれ反ダンピング関税だと他の国を脅し、農産物なんか輸出するときは輸出補助金の大盤振る舞いです。郵便は国営ですし、日本の財投に相当する制度もあるのです。
キーワードはズバリ、「ダブルスタンダード」あるいは「改革の非対象性」です。
つまり他の国に対しては、各国固有の制度を「小さな政府」を押し付けて破壊する一方で、自分たちは「大きな政府」で防衛し、世界を支配しようとしているのです。
私は各国の改革は、各国独自の方法でやるべきであって、米国に押し付けられるものではないと思います。