武将と言えば三成、滋賀県と言えば税金の使い方が正しい

　一昨日、嘉田由紀子さん（前滋賀県知事）が代表を務める「チームしが」の学習会「大戸川ダム問題緊急対話集会」に呼ばれて話してきました。話の趣旨は、国交省がダム建設を進める根拠ともなっている「基本高水」の数値はダムありきで恣意的に作られているというものです。この数値に縛られてダムを造るのではなく、嘉田県政時代に策定した流域治水条例にもとづいて、もっと賢明な水害対策ができるはずです。

　それはさておき、私の報告の中で、会場からもっとも大きな拍手を受けたのが以下のスライドでした。「武将と言えば三成、滋賀県と言えば税金の使い方が正しい。しかし大戸川ダムを造ってしまったらこの評価はどうなってしまうのでしょう？」と。最前列で聞いておられた嘉田前滋賀県知事は、笑いながらこのスライドの写真を撮ってくださっていました。



　「滋賀県民の税金は正しく使われている」というのは、滋賀県作成の石田三成のCMを観た視聴者がコメントしていたことで、私も膝を叩いて同意いたしました。
　実際、石田三成の徳政を慕って、全国から三成ファンが滋賀にやってきています。その効果を考えたら三成のCM作成にかかった費用なんて安いものだ、と。
　私もその一人で、石田三成のCMを観て、佐和山城にどうしても行きたくなったので、「チームしが」に呼んでいただいたのを契機にさっそく佐和山城へ行ってきました。
　以下、佐和山城の報告です。
　
　

CMの中の壊れたレイクビューベンチ


　滋賀県の石田三成CM第二弾の中で、自虐ネタで笑いを誘っていたのが、上のベンチの映像でした。佐和山城の本丸から琵琶湖が見えるレイクビューベンチです。ところが、そのレイクビューベンチがボロボロになって破損しているのですね。
　


佐和山城の竹材で修繕されたレイクビューベンチ

　ところが、上の写真を観てください。佐和山城の本丸に登ると、CMで笑いを取っていた「壊れたレイクビューベンチ」は見事に修繕されていました。しかも修繕に使ったのは、佐和山城の西の丸付近の竹林を整備する際に伐採した竹材でした。壊れたベンチを買い替えるのではなく、ほとんど税金を使うことなく城跡の竹材でベンチを修理してしまうなんて、まさに嘉田県政からの「もったいない精神」が息づいていると言えるでしょう。手作りの味があって、本当にこの竹材ベンチの雰囲気がいいんです。


佐和山城本丸から琵琶湖と彦根城を眺望する

　さらに感動してしまうのが、レイクビューベンチから眺望する琵琶湖と国宝・彦根城の美しさです。これは必見です。佐和山城が在りし頃、石田三成も、この本丸にあった天守閣からこのように琵琶湖を眺めたことでしょう。湖面に月が映ったりすれば、どれだけ美しいことでしょう。


佐和山城の瓦の破片

　西の丸には瓦の破片が散乱しています。415年前の落城時の瓦でしょうか？　詳しい発掘調査はまだのようですが、この瓦の破片が、ここが敗者の城跡であるという冷徹な事実を、時間を超えて、静かに語りかけているように思えました。合掌。
　



　ちなみに佐和山城の本丸は上の写真の頂上です。それなりの靴と服装でご登城ください。
　彦根駅から登山口までの道が若干わかりずらく、私もちょっと迷いました。道案内の看板がもう少し必要かとも思いました。
　通りがかりの方に道を訊くと、みなさん本当に親切に教えてくださって・・・・。また道すがら通りすぎる近くの高校の運動部の方々が、すがすがしく「こんにちはー」とあいさつしていってくれて癒されました。石田三成以来の徳政が今に息づいているようです。


　佐和山城の登山口にある龍潭寺

　佐和山城の登城口にある龍潭寺も必見です。江戸初期の築かれた書院と枯山水の庭園。ここに座ってたたずんでいると、今が21世紀であることを忘れ、400年前に戻ったかのような錯覚を覚えます。あるいは、現世であることさえ忘れ、極楽浄土に来たのかと錯覚するような。まばゆい新緑、静寂の中、鳥の鳴き声のみが響く、幻想的な美しさでした。芭蕉なら何句でも詠めるでしょう。