代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

フェアトレード・チョコレート

2007年02月05日 | その他
 もうじきバレンタインデーなのでチョコレートに関する雑談を一席。知り合いに某チョコレート・メーカーの方がいます。製品開発部だったのですが、いま営業に回っているそうです。それで、このあいだ話しを聞いたら、「いやー、営業に行ってから出張が多くて大変なんですよー」とのことでした。「出張先はどこですか?」と聞くと、「最近は南米のベネズエラとエクアドルに行かなきゃならないことが多くて・・・」。「何でまたベネズエラに?」

 何でも原料のカカオの7割はガーナ産なのですが、良い味を出すためには3割の南米産カカオをブレンドするのがミソなのだそうです。その南米産カカオはベネズエラとエクアドル産が主なのだそうです。

 それで、何だってベネズエラかって言うと・・・。

 チャベス大統領が、国内の貧困層に雇用の場を提供し、カカオにより付加価値をつけようと、国営カカオ加工工場を設立(さすがチャベス!)。それで原料カカオが、国営工場に優先的に流れるようになって、日本のチョコ・メーカーは原料を手に入れにくくなっているとのことでした。エクアドルも左派のコレア大統領が就任したので、チャベスと同様のことをやるかも知れず、原料確保がますます大変になりそう。原料の値段も高くなっているのだけれど、チョコの値上げには踏み切れず、頭が痛い・・・とのことでした。
 
 「じゃ、チャベスが作った国営カカオ工場から買い付けて、それを製品に使うというのはどうですか? それで『このチョコレートはベネズエラの貧困削減に寄与しているフェアトレード・チョコレートです』と包装に印刷するんです。それなら値段が高くなっても、売れるかも知れませんよ」(とくにブッシュ嫌いな人は喜んで買う?)と私が言うと、

 「いや~、イギリスあたりの消費者なら意識が高いから、それでかえって売れるとかいうこともあるかも知れませんけど、日本じゃね~。」との返事でした。

 さらに「原料コストが上がっているので、値上げしたいんですけど、流通の方から『値上げするならお宅の製品は扱えません』と言われるんですよー」とのお話しでした。
 
 うーん、そうなると結局は意識が低い日本の消費者が悪いという話しになってしまいますね。
 我が家ではコーヒーに関しては、フェアトレード・コーヒーを買うようにしています。
 でも、「そういえばフェアトレード・チョコって見たことないなー」と、つれ合いに言うと、フェアトレード・チョコを見つけてきてくれました。国際的なフェアトレード会社のPeople Treeの、ズバリ「フェアトレードチョコレート」という名の製品です。
  
 ちゃんと包装の裏には生産農家の顔写真とともに、生産地の様子が解説されていました。ボリビアの山岳地帯の小規模農家の共同組合が作った加工工場から原料カカオを買い付け、フィリピン小規模農家の「マスコバド糖(黒砂糖)」を使用しているそうです。とっても美味しかった。詳しくはこのサイト
 ホームページには「今年は大切な人にフェアトレードのチョコレートを贈って、気になるあの人の心をつかんでしまいましょう」と宣伝しています。この辺の宣伝はやっぱり商業主義的ですね。でも、こっちをもらった方がうれしい人は案外多いかも?? 
 

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5 コメント

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Unknown (ロンカイネン)
2007-02-05 09:59:45
食の安全を担保するトレーサビリティーとか、ポジティブリスト制に伴う残留農薬貴基準の見直しであるとか、食料確保のためのコストが上がる一方で、末端価格への転嫁ができない理由は何なのでしょうかね。消費者の意識が低いからというのが理由なんでしょうか?
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フェアチョコ (三木)
2007-02-11 01:20:13
フェアトレードのチョコレート、「地球食」という名前でも発売されていますよ。http://www.p-alt.co.jp/asante/
けっこういけます。
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ロンカイネンさま、三木さま ()
2007-02-12 16:29:07
>末端価格への転嫁ができない理由は何なのでしょう
>かね。
 
 返信遅れてまことに申し訳ございませんでした。私も業界関係者ではないので、この理由は分かりません。ご時世が、「少しでも安く」という過当競争状態にありますから、日々の生き残りをかけた競争の中で、どうしてもそうなってしまうのではないでしょうか。
 消費者の意識をあげようにも、高くても買うなんていう贅沢ができる層というのはある程度以上の所得層に限られていますから、ますます所得の低下する日本の消費者にそれを要求するのもムリなのかも知れません。
 「より効率的に」「少しでも安く」の新古典派的市場原理主義がまかり通る以上、途上国の生産現場でも児童労働はなくならないでしょう。

三木さま
 情報ありがとうございました。ご紹介のフェア・チョコも機会があれば試してみます。
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Unknown (ロンカイネン)
2007-02-13 21:07:23
さすが鋭い指摘ですね。一部の添加物を除いた一般的な食品は、商品としては一般の人にとって馴染み安く、かつ取引金額を低く抑えられゆえ参入障壁が低く、かつ商品自体に付加価値が少ないため、価格による過当競争に陥りやすい業界なんでしょうね。ただ、いいものにはいいとしてその分対価を払う感覚を消費者が持たないと、雪印食品、不二家に続く、不正が横行するものと思われます。
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ロンカイネンさま ()
2007-02-14 10:03:00
 コメントありがとうございました。
>いいものにはいいとしてその分対価を払う感覚を消
>費者が持たないと、雪印食品、不二家に続く、不正
>が横行するものと思われます。

 実際には、これだけ貧困化が深刻になってくると、「多少は毒でもBSEの危険があってもいいから安いものを」と求める消費者は増えてしまうと思います。
 消費者意識を上げるという戦略には限界があり、根本的に市場原理主義から決別しない限り、問題の解決は不可能だと思う次第です。
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