アマゾンで急増している森林火災。
ブラジルは、2003年にルーラが大統領になった頃、熱帯林保全にも真剣に取り組む姿勢を見せ、実際に効果を上げ、希望の光を感じたものであった。しかし右翼のボルソナーロが大統領になるや否や、絶望の闇に閉ざされたようだ。彼こそは、ネタニヤフや金正恩などの比ではない、世界人類最大の脅威といってよいだろう。アマゾンの熱帯林が消えることは、気候変動をさらに加速させ、この惑星を人類が生存不可能な状態に変えていってしまうであろうからだ。
出所)イギリスのGurdian紙より 2019年8月の火災発生個所
https://www.theguardian.com/environment/2019/aug/23/amazon-fires-what-is-happening-anything-we-can-do
アマゾンの森林火災の原因
先日(2019年9月19日)放送されたNHKのBSの「国際報道2019」でも正しく報道されていたが、アマゾンの火災の原因はほぼ農業と牧場のための野焼きの拡大である。なぜ今年大発生しているのかと言えば、直接的にはボルソナーロが、開墾を奨励しているからだ。7月には20万haを超える面積が火災で消えたという。東京都の面積が18万haであるから、一か月で東京以上の広さが消えていることを意味する。8月にはさらに数倍に被害が拡大しているというから恐ろしい。
ブラジルのアマゾンの火災の原因は、ほぼ大豆農園の開発か、肉牛の放牧地拡大を目的とする野焼きである。なぜそれほど農園を拡大したいのかと言えば、ブラジルの外部世界で、大豆や牛肉にそれだけ需要があるからである。アマゾンを焼いて造成した農地や放牧地では、短期的には、他の国々に比べて低コストで大豆や牛肉を生産でき、ブラジルはそれを輸出して儲けようとするからだ。ゆえに問題の背景原因は自由貿易なのだ。
マクドナルドのハンバーガーなど、アメリカで一個4ドル程度でも、それが生産される過程での熱帯林消失や気候変動などによる環境コストも含めて計算すれば、本来の価値は一個200ドル(2万円以上!)という試算もある。この件、ラジ・パテル著(福井昌子訳)『値段と価値』(作品社、2019年)を参照されたい。
生態的には2万円もの価値を損失させて生産されるハンバーガーが400円程度で売られている。環境的にはもっとも高額な財を、世界でもっとも低コストな、競争力がある財として販売せしめ、それを正当化してしまうのが自由貿易システムである。
もう私たちは、破局的なまでに環境に悪影響を及ぼして生産された大豆や牛肉を、不当廉価で購入してはならないのだ。こうした地球生態系のダンピング輸出を破局的に拡大させたのが、農産物貿易の自由化に他ならない。
私は25年前に熱帯林研究をはじめた頃、農産物の自由貿易を拡大する限り熱帯林の消失は避けられないと結論し、農産物に関しては貿易自由化でなく、地産地消を奨励すべきであると主張し続けてきた。
しかし、これだけ地球環境が破局的になってもまだ日本の世論は「自由貿易万歳」であるから、頭がクラクラして、すでに絶望している。何か言う気も失せてきた。
中国が農産物関税を引き上げれば熱帯林も救われる
米中貿易戦争で、習近平がトランプに対抗して、「大豆関税を引き上げる」といえば、私などはすばらし事だと思う。なんとなれば、中国は現在でこそ世界最大の大豆輸入国であるが、中国がWTOに加盟する以前は国内自給を原則としていて、すべて国産していたのだ。中国がWTOに加盟してから、アメリカとブラジルから大量に大豆を輸入するようになり、それがアマゾンの熱帯林の農地転用に最大の貢献をするようになってしまった。もともと中国は大豆を国産する能力があったのだから、真に悲劇的なことだと思う。
アメリカは工業製品に対する関税を引き上げ、中国は農産物に対する関税を引き上げ、しかもお互いに国内の製造業や農業を守るためということで、協調しながらそれを進めるべきである。中国が大豆の国産化を進めるだけで、アマゾンの開発圧力もずいぶん減るだろう。
米中貿易戦争から新しい貿易システムの構築を
いい加減に気付くべきであろう。これ以上、アメリカの貿易赤字を増やしてはならない。
アメリカの貿易赤字は、確かにこれまで世界経済成長のエンジンだった。しかし、アメリカの貿易赤字によって世界中に垂れ流されてきた過剰なドルは、所詮借金である。ドルを暴落させないためには、そのドルを無理矢理にでも世界中の政府や企業や個人に貸し付ける必要がある。それが世界中の政府や貧困層の諸個人を債務地獄に陥れる原因となってきたのだ。
今世紀になって急拡大した世界中の借金の増加は、中国のWTO加盟以降のアメリカの貿易赤字の急拡大によって引き起こされた必然なのだ。それが結局のところ、地球上の熱帯林も消滅させつつあるのだ。その借金バブルはいずれ崩壊して、終わる。
もうアメリカの貿易赤字に依存した成長などを追い求めるべきではない。世界中の貿易収支を均衡させるための新しい貿易システムを構築すべきなのだ。私は年頭の記事で、ケインズがかつて提唱したバンコール構想を復活させるべきと論じた。
ブラジルは、2003年にルーラが大統領になった頃、熱帯林保全にも真剣に取り組む姿勢を見せ、実際に効果を上げ、希望の光を感じたものであった。しかし右翼のボルソナーロが大統領になるや否や、絶望の闇に閉ざされたようだ。彼こそは、ネタニヤフや金正恩などの比ではない、世界人類最大の脅威といってよいだろう。アマゾンの熱帯林が消えることは、気候変動をさらに加速させ、この惑星を人類が生存不可能な状態に変えていってしまうであろうからだ。
出所)イギリスのGurdian紙より 2019年8月の火災発生個所
https://www.theguardian.com/environment/2019/aug/23/amazon-fires-what-is-happening-anything-we-can-do
アマゾンの森林火災の原因
先日(2019年9月19日)放送されたNHKのBSの「国際報道2019」でも正しく報道されていたが、アマゾンの火災の原因はほぼ農業と牧場のための野焼きの拡大である。なぜ今年大発生しているのかと言えば、直接的にはボルソナーロが、開墾を奨励しているからだ。7月には20万haを超える面積が火災で消えたという。東京都の面積が18万haであるから、一か月で東京以上の広さが消えていることを意味する。8月にはさらに数倍に被害が拡大しているというから恐ろしい。
ブラジルのアマゾンの火災の原因は、ほぼ大豆農園の開発か、肉牛の放牧地拡大を目的とする野焼きである。なぜそれほど農園を拡大したいのかと言えば、ブラジルの外部世界で、大豆や牛肉にそれだけ需要があるからである。アマゾンを焼いて造成した農地や放牧地では、短期的には、他の国々に比べて低コストで大豆や牛肉を生産でき、ブラジルはそれを輸出して儲けようとするからだ。ゆえに問題の背景原因は自由貿易なのだ。
マクドナルドのハンバーガーなど、アメリカで一個4ドル程度でも、それが生産される過程での熱帯林消失や気候変動などによる環境コストも含めて計算すれば、本来の価値は一個200ドル(2万円以上!)という試算もある。この件、ラジ・パテル著(福井昌子訳)『値段と価値』(作品社、2019年)を参照されたい。
生態的には2万円もの価値を損失させて生産されるハンバーガーが400円程度で売られている。環境的にはもっとも高額な財を、世界でもっとも低コストな、競争力がある財として販売せしめ、それを正当化してしまうのが自由貿易システムである。
もう私たちは、破局的なまでに環境に悪影響を及ぼして生産された大豆や牛肉を、不当廉価で購入してはならないのだ。こうした地球生態系のダンピング輸出を破局的に拡大させたのが、農産物貿易の自由化に他ならない。
私は25年前に熱帯林研究をはじめた頃、農産物の自由貿易を拡大する限り熱帯林の消失は避けられないと結論し、農産物に関しては貿易自由化でなく、地産地消を奨励すべきであると主張し続けてきた。
しかし、これだけ地球環境が破局的になってもまだ日本の世論は「自由貿易万歳」であるから、頭がクラクラして、すでに絶望している。何か言う気も失せてきた。
中国が農産物関税を引き上げれば熱帯林も救われる
米中貿易戦争で、習近平がトランプに対抗して、「大豆関税を引き上げる」といえば、私などはすばらし事だと思う。なんとなれば、中国は現在でこそ世界最大の大豆輸入国であるが、中国がWTOに加盟する以前は国内自給を原則としていて、すべて国産していたのだ。中国がWTOに加盟してから、アメリカとブラジルから大量に大豆を輸入するようになり、それがアマゾンの熱帯林の農地転用に最大の貢献をするようになってしまった。もともと中国は大豆を国産する能力があったのだから、真に悲劇的なことだと思う。
アメリカは工業製品に対する関税を引き上げ、中国は農産物に対する関税を引き上げ、しかもお互いに国内の製造業や農業を守るためということで、協調しながらそれを進めるべきである。中国が大豆の国産化を進めるだけで、アマゾンの開発圧力もずいぶん減るだろう。
米中貿易戦争から新しい貿易システムの構築を
いい加減に気付くべきであろう。これ以上、アメリカの貿易赤字を増やしてはならない。
アメリカの貿易赤字は、確かにこれまで世界経済成長のエンジンだった。しかし、アメリカの貿易赤字によって世界中に垂れ流されてきた過剰なドルは、所詮借金である。ドルを暴落させないためには、そのドルを無理矢理にでも世界中の政府や企業や個人に貸し付ける必要がある。それが世界中の政府や貧困層の諸個人を債務地獄に陥れる原因となってきたのだ。
今世紀になって急拡大した世界中の借金の増加は、中国のWTO加盟以降のアメリカの貿易赤字の急拡大によって引き起こされた必然なのだ。それが結局のところ、地球上の熱帯林も消滅させつつあるのだ。その借金バブルはいずれ崩壊して、終わる。
もうアメリカの貿易赤字に依存した成長などを追い求めるべきではない。世界中の貿易収支を均衡させるための新しい貿易システムを構築すべきなのだ。私は年頭の記事で、ケインズがかつて提唱したバンコール構想を復活させるべきと論じた。
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2021/01/210119-48915.php
JAcom 農業協同組合新聞
フランスのマクロン大統領は、「ブラジルの森林破壊の原因は、大豆などを輸入に依存する我々にもある」という認識だそうです。マクロン大統領はどちらかと言えば保護主義的な政策を嫌う人なのに驚きました。
マクロンさんには是非とも菅首相に、「日本もアマゾンを救うために、食料自給率を高めて農産物の輸入依存を減らしましょう!」と提言して欲しいです。自由貿易支持者(反保護主義者)であるマクロン大統領の言葉なら、少しは聞く耳を持ってくれるかもしれません。
応援もかねて、新しい記事でこの問題を論じてみました。ご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/f9357dd26a4a50079e747a69bbbdaef9