劇場版『相棒』公開に相乗り?の“ディスカバー水谷豊”ブームはやはり錯覚ではなかった様子。当地の土日の昼、2時間ドラマ過去作再放送枠でもここ1ヶ月ぐらい、テレ朝系列以外のチャンネルまでが『探偵・左文字進』『地方記者立花陽介』『朝比奈周平ミステリー』『探偵事務所』『名探偵浅見光彦(←原作者内田康夫さんが“イメージが違う”とクレムって水谷さん降板、後任は辰巳琢朗さん・榎木孝明さん・沢村一樹さん・中村俊介さん…)シリーズ』などを大蔵ざらえの様に次々出してくるので、在宅TVっ子の高齢家族などは「この人こんなにたくさん主演してカラダは大丈夫なのか」と心配しているくらいです。
CDのニューリリースもあるらしく、先週だったか行き帰り道にあるショッピングモールの市内大手レコード店のエントランスに、額に手を当ててテレ笑いのような水谷さんのでっかいPOPが掲げられていました。いつものこのお店ならはミスチル、B’z、宇多田ヒカルさん、平井堅さん、さもなきゃ氷川きよしさん辺りの顔が占めるスペースなのですがね。
ちょっと前にもサザンオールスターズ関連でここの記事で触れましたが、歌・音楽で商品出せると、演じるだけより俳優さんやっぱり強いな、商売として。
そこであえて月河は問いたい「世間の皆さん、寺脇康文さんにちょっと冷たくありませんか」。
やはり亀ちゃんあっての右京さんじゃないですか。実年齢で10歳、演技歴で10数年、水谷さんの後輩ではありますが、水谷さんの初主演作『バンパイヤ』を子供の頃見て、憧れて俳優を志したという寺脇さんのディスカバーブームが、劇場版『相棒』とともに澎湃と併せ沸き起こっていいのではないかと思うのです。
寺脇さんを初めてTVで見たのは93年1月期の日本テレビ『ジェラシー』でした。
敏腕精神科医石田純一さん(石田さんがシリアスなドラマの主役として成立する時代が日本に実在したのです)のクライアントから、医師と患者の禁断を越えた恋仲になってしまう黒木瞳さん。しかし彼女はやがて病的嫉妬心と独占欲を剥き出しにして石田さんを病院から失職させ失踪。のちに彼女と結婚するエリート銀行マン役が寺脇さんでした。
当時は前年のTBS『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さん(佐野史郎さん)人気の余波で、“社会的地位や家柄は申し分ないけれど、人格に問題ありの結婚相手”という設定がちょっとしたブームではありました。寺脇さん扮する銀行マン夫も、超のつく病的潔癖症でドアノブもエレベータの階数ボタンもハンカチ越しが必須、自宅に帰れば石鹸に「髪の毛がついている!」と黒木さんを殴る蹴るのDV男。
いま思えば、時代的にさもありなんでした。家柄や学歴職歴・年収が人に誇れる玉の輿配偶者候補には、マザコンなど精神面に問題あるのがつねだから「結局、貧乏で無名でも、本当に好きな人と結婚したほうが幸せになれるのよね」という結論に持って行きたいバブル期の売り手市場適齢期女性の好尚をくすぐったのでしょう。
水谷豊さんの80年代の『浅見光彦』シリーズを再放送するなら、ぜひ寺脇さんのDVサイコ夫もいま一度日の目を見せてほしいと思うのですがねぇ。確か石田さんの医学生時代の同級生で、石田さんが黒木さんと別れた後婚約する教授(食いしん坊万歳!故・渡辺文雄さん)の娘・有森也実さんに片想い段田安則さんがラスボスとなる転帰だったはずですが、寺脇さんのDV夫がドラマ上どうなったのか、よく覚えていないのでぜひもう一度観たいと思っているのです。
TVでメジャーになってからの役者キャリアが15~20年程度というのも、じゅうぶんベテランなのに“懐古”というタームからこぼれやすいゾーンなのかもしれない。平成に年号が変わったか変わらないかぐらいのところは、皆さん、とりたてて「懐かしい」と思わないのでしょうか。
『相棒』ブームのいまこそ、発掘してそれなりに意味を賦与しておかないと、寺脇さん、とんでもない方に行ってしまうかもしれませんよ。世間が放置している間に、すでに3児のパパらしいし。知ってました?