『坂の上の雲』は第2話(12月6日)を終えてますます快調ですね。快調過ぎて物足りない部分もより鮮明に浮かび上がってきたようにも思います。
第1話を視聴した後の記事でも書いたのですが、とにかく日本が真っさら上り坂一方の時代の、向学心立身出世、愛国興国モティベ最高の秀才たちのお話なので、現代の世相と逆行してポジティヴ過ぎるだけではなく、皆、仲よしこよしなんですよね。学問ひとつとっても、「アイツの足元をすくってやろう」なんて魂胆はまるでなく、ピュアに勉強のしあいっこ。
しかも両親やきょうだいなど、家族への思いも屈折屈託なくポジティヴ一辺倒ときている。真之(さねゆき。本木雅弘さん)なんか、兄・好古(よしふる。阿部寛さん)があまりに優等生で勤勉で、“兄ならば弟の学資生活面倒見るのは当然”という使命感に満ち満ちているため、コンプレックスのひとつも抱かないもんかなと思うのですが、鎖国→開国でリセットされゼロスタート、目の前は大海原、頭上は青天井の国の若者たちにとって、狭いひとつ屋根の下の“近親者へのコンプレックス”なんてのは贅沢病で、脳裏をよぎることすらない感情だったのでしょう。
地方の俊才が青雲の志を立て憧れの東京へ。皆勉強熱心でストイックで、持ち前の才に努力で陸軍士官学校へ、東大予備門へ。友情にあつく、郷里を愛し国を愛し、両親孝行、弟妹思い。なんだかあまりにいい子ちゃんの集まりなので、月河なんかは「ドラマとしてスケール大で、丁寧で手間ヒマかけている」以上の感想も以下の感想も持ちようがなくなってきました。“欠かさずレギュラー視聴している連続モノは昼帯と特撮だけ”の人間には、ちょっとグレード的に荷が勝ち過ぎる作品かも。
トリプルヒーローの中でいちばん八方破れでバランスが取れてなく、“天才とナントカは紙一重”という言葉を想起させるノボさん=正岡子規(香川照之さん)の存在感が、唯一ドラマに風穴をあけてくれていますね。予備門入試で“Judicature”の意味がわからず、真之がこっそり耳打ちしてくれた「法官(ほうかん)」を「幇間?タイコモチ?」と一瞬想像してしまう脳内シーンが愉快でした。結核をわずらい35歳の若さで他界してしまう子規。この人が去るとドラマが活気を欠いて、ますます視聴に“敷居の高い”ものになってしまうのではないかといまから心配です。双子の弟がいた設定にして最終話まで出てくれないかしら。