NHK総合『新春TV放談 2018』(1月2日22:55~)、毎年、年末年始仕様の“おせち番組”に飽きて「もういいやテレビは当分」となった頃、「まだまだ!」と叩き起こす様に放送されるこの番組、数えてもう10年目だそうです。そんなんなるんだ。
テレビを愛する面々が局の垣根を越えてぶっちゃけトーク78分(半端だ)!と銘打たれても、所詮テレビが職場で、テレビで衣食して、テレビの盛り上がりが収入に直結する生活の人たちがテレビを語るのを聞いてもなぁ・・と毎年思うのですが、やってるとやっぱり見てしまうし、やはり“テレビ汁(じる)”のしみ込んだメンツが揃うだけに、見れば必ず誰か彼かが、面白い事の一つや二つや三つは言ってくれるんですよね。
今年はテリー伊藤さんカンニング竹山さん“内幕も知るご意見番”に高橋真麻さん“同じく内側にも居たミーハー”に、テレビ界マスコミ界のデータバンク担当として日経BP研究所の品田英雄さん、“いままさに作ってる人”として日本テレビお仕事ドラマP小田玲奈さん、ニッチを行くテレビ東京バラエティP伊藤隆行さんに、ネットドラマフロンティア最前線サイバーエージェント藤田晋社長(月河の認識としては奥菜恵さんの元旦那さん)、音楽プロデュースのヒャダインさんも加わってMCが千原ジュニア、首藤奈知子アナ。
総合すると今年は前向きで、聞いてて腑にも落ちる話が多かった。
① テレビの視聴率が伸びない、ヒット番組が出にくい原因を“視聴者がインターネット・スマホゲームやSNSに時間を取られているから”と、ネットを仮想敵視しパイを奪い合う思考の時代は終わった。
② もう「なんとかしてスマホを置いてテレビの画面に集中してもらおう」と悪戦苦闘してもはじまらない。視聴者はスマホを持って、スマホを見ながらテレビの前に来る、そういう種族がすでに日本に相当比率いるんだということを前提に番組を作る必要がある。
③ テレビを見ながら内容やセリフや展開についてツイッターでつぶやく、実況がバズって盛り上がるという興じられ方が一般的になっているのに、依然としてテレビ番組の人気度・成功度は“リアルタイムの視聴率”でしか測られず評価されないのもすでに時代に合わない。新しい指標を編み出す時期に来ている。
④ たとえば月曜9時からのドラマを、月曜9時に帰宅してテレビの前に座って見なくても、録画して深夜や休日、自分の都合のいい時間に見ている視聴者も多い。若い人たちに「テレビどう?」と訊くと「テレビっていつも途中からやってる。アタマから見たいのに」と答える。パッケージ映像ソフトや動画サイトに慣れた層は、テレビの放送タイムテーブルに自分の生活を合わせるのではなく、生活にテレビ番組視聴を合わせるのが当たり前。
⑤ とは言えリアルタイム視聴ならではの、たとえば見ている人同士が同時進行でネット上で感想やリアクションをつぶやき合い、共感し合うという楽しみ方も、放送局は意識していったほうがいい。昔からテレビの前で「何言ってんだよ」とブツブツツッコんだりする見かたはあった。同じ番組を見ている他の人はどんな所にブツブツ言ってんだろう、自分のブツブツと同じ人はいないかな?あ、いたいたここにも・・と共感したい人は多い。もちろん、送り手主導でお膳立てしすぎると逆に引かれてしまうけれども。
⑥ 動画サイトの普及で、若い人は3分から5分、長くても10分未満の短い動画を幾つも、スマホでずーーっと見続けているが、一本が長いものだと途中で飽きられる。1話3~5分の動画を毎日配信して、新しい朝ドラのような形にできないかいま考え中(お仕事ドラマは「4話でキスさせて引っ張る」日テレ小田さん)。
⑦ バラエティ企画はとにかく保険をかけないこと。実績タレントを引っ張ってくるとか過去に当たった演出手法とか“これなら数字が見込める”と局の上層部が納得するような後付けがないと前に進めない、こういう思考ではいつまでたってもダメ(池の水ぜんぶ抜き続けるテレ東伊藤さん)。企画書が1行で済む、これも重要(テリー伊藤さん)。
⑧ 凋落低迷続くフジテレビだが、2014年の『いいとも』に続き『めちゃイケ』『みなおか』の2大看板バラエティを終了させたことで局内の危機感の念押し共有はできた。いまだに80年代から90年代初頭までの成功体験を払拭できない上層部が生き残っているが、若いスタッフは優秀な人がいるしこれからは期待できる。
⑨ テレビに関しては、タレントは出てナンボ。とにかくテレビに出続ける、数多く出る。「あいつ去年全然見なかったけど正月に(この番組に)出てきてテレビがどうだらこうだら言ってる」って言われたら終わり(カンニング竹山さん)。
⑩ 新しい年のテレビへの展望としては、とにかく大谷と清宮に活躍してほしい。彼らが活躍すればテレビ見たいという気になるから(テリー伊藤さん)。
⑪ 池の水を(4月からレギュラー番組にして)毎週抜くかどうか前向きに考える(テレ東伊藤さん)。
・・・ほかにももう少しあったかな。ここ数年の中ではポジティヴなトークの多い新春TV放談だったと思います。少子高齢化で、モノ売り業サービス業どこでもどん詰まり感が漂う中、テレビの皆さん依然懲りていないというかめげていないし、猫も杓子もスマホスマホならスマホも込みでテレビの娯楽に取り込んでしまおうという姿勢に、「オレらが、ワタシたちが、負ける気がしないわ!」という、いい意味で傲岸な、したたかささえ感じました。ネットテレビ、ネットドラマと言っても製作スタッフは既存の局・制作会社から来ているし、サイバーエージェント藤田社長が満を持してこの1月から配信するアベマTVオリジナルドラマ第一弾の脚本は小劇場の人だそう。
ドラマ、バラエティに続いて2017年のワイドショーを振り返るコーナーでは、暴言音声、不倫動画などの素材を週刊誌や写真誌が撮影録音して、それがテレビに朝・昼・晩と番組ごとに貸し出されていちいちお金になるので、ここのところ書籍が売れない雑誌が休刊したと低調を託っていた紙媒体が、実は昨年いちばん儲けたのではないか?という話も出ました。「暮れのボーナスも相当出たと思いますよ」(テリーさん)
・・・・・昔ほど見なくなったとは言え月河もスマホと未だ無縁なテレビだけっ子なので、テレビに携わる人たちがネガティヴなよりはポジティヴなほうがいいですが、ちょっと気になったのは⑥の“若い人たちが長時間のものを見続けることに耐えられなくなっている”という話。要するに、幼児化してるってことじゃないですかね。そのわりには人気ドラマベスト10に大河『おんな城主 直虎』や月~土帯の朝ドラ『ひよっこ』という日本を代表する長尺タイトルが堂々ランクインしているのは、NHK番組だからか。
日テレ小田さんのアイディアの様に、短時間の動画をつないで連続モノにして提供するというのは、こういうご時世のひとつの突破口かもしれませんが、“長尺に耐えられない脳”の客ばかりが量産されるのもまた由々しき事態ではないかと、かつての昼帯ドラマウォッチャー月河は懸念するものです。
長尺を敬遠する客、長尺を見せても消化できない客が増えた結果、長尺の話を書ける脚本家、長尺のシリーズをコントロールできるPが育たなくなった。月河が昼帯をレギュラー視聴していた14~5年前でもすでに「後半になるといつもヒロインの子供たちの進路やら恋愛結婚話になっちゃってテンションダダ下がり」としらける声がよくBBSで上がっていました。年頭の大河ドラマスタート時、前期後期の朝ドラ交代時には“前作より数字どうだ”“前作が高かった(or低かった)影響がどうだこうだ”というお決まりの比較が必ず出ますが、長いとついてきてくれない客に作り手が合わせて行く流れが続く限り、大河も朝ドラも“良くて横這い”でおさまってしまうのではないでしょうか。大河や帯の作り方、半年~一年にわたる本の書き方をわかっている人が減って行く一方なのですから。もう朝ドラも10年以上前から“一週6話で1エピソード”“土曜に問題解決”を半年続けるのが精いっぱいになっています。
いちばんゾッとしたのが⑤。そんなに“共感”ってしたい、されたい人多いのか。たかがテレビ放送見てての時々刻々の所感で。自分が面白い、自分が泣けた、自分がハラハラドキドキしたキュンとしたでいいじゃない。なんで自足できないの。ここに居もしない、どこかしらの見も知らない不特定多数の人がどう思ってるかどう感じてるか、そんなに気になるのか。自分と似た感想持ってる人がどこかに何人かいたら、大勢いたら、そんなに嬉しいのか。
普通に気持ち悪いよ。思ったんですけど、こういう“共感乞食”みたいな感性の人ばかりの日本だったら、いま“安倍一強”なんて言われてますが、誰かヨコシマなやつが、いや、すごく高潔な人でもいいけど、うわーっと独裁政治に持っていこうと思ったら、もう簡単ですね。赤子の手をひねる様だね。わかっててそこまでやってないんだとしたら、安倍さんもまだ全然人がいいよ。小池百合子さんがそれに近い事をやりかけたけど途中でポシャっちゃったし。おもしろうて、やがておぞましきTV放談でした。
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