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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

誰も完全じゃない

2010-04-26 22:25:52 | 特撮・ヒーロー

『娼婦と淑女』で「必ず太一に爵位を継がせます!」と、ひときわ通るお声と滑舌で息巻いている、ご本妻一族より背筋のピンシャンしたお妾さんを“剛演”中の魏涼子さん。昼帯では06年『新・風のロンド』で、この枠恒例の“ひとりだけ独走で常識人”ポジションを勤め上げてくれましたが、『仮面ライダーW(ダブル)』3132話(1825日放送)で、美人演歌歌手ばりのしっとり和服姿でお目にかかるとは思わなんだ。健気でかわいそうな極道の妻…で終わるわきゃないと思ったら、案の定ドーパントだったし。うなじのコネクタに手をやる仕草が色っぺえ。座敷に常備した将棋盤も伏線でしたか。

 パリシャキな口跡と和でも洋でもいける身のこなし、いかにも劇団青年座の実力派中堅さんそのものという佇まいの魏さんがまたナンデ『W』に?と思ったら、ウェザードーパント井坂先生役・檀臣幸(だん・ともゆき)さんのリアル奥様でした。ともに青年座の舞台活動の傍ら、アニメ・洋画吹き替え声優としてもご活躍のカップル。今エピの井坂先生は、W→エクストリーム進化の産みの苦しみを際立たせる物語上のアシスト役(「不調ですねぇ、診察しましょうか」)だけで、魏さん扮するゾーンドーパント=鈴子との直接の共闘はありませんでしたが、仮面ライダーシリーズの同エピ内で実生活のご夫婦が共演したのはこれが初かしら。

ゾーンみたいな間・非生物型のメモリってのも、ミュージアムの底力を感じさせて不気味でしたな。いまブーム?の水木しげるさん漫画よろしく、トップに目玉オヤジつきで、ドーパントでなければ正月飾りかなんかの代わりになりそう。和服美人の鈴子が正座したまま伏せて変身するので、非生物ながら何となくジャパネスクというか、江戸の火消し組が持ってそうな造形でした。

 エクストリーム新登場イベントのこのエピ、進化したメモリにパワーがついていけなくなり、Wへの変身不能になった翔太郎(桐山漣さん)の絶望、喪失感を表面は主調にしつつ、根底にはシュラウドから「左とは縁を切りなさい、あの男では(相棒は)もう無理」と宣告されたフィリップ(菅田将暉さん)の孤立感と苦悩が米のメシになっている。“能力不足”を嘆き、悔しがるより、“能力の並み外れた優秀さ”に苦しむほうが伝統的仮面ライダーのコードにかなっています。

 翔太郎の悲哀は“スペシャルな凡人”のそれであり、フィリップの苦しみは“普遍的な間”ゆえのもの。

 物語としては、「Wは戦闘マシーンであってはならない」「翔太郎、キミの優しさが必要だ」とうまいこと着地して名コンビ復活、しかし“優しさも無い凡人”“弱いだけの凡人”も世の中、多いのだよなぁ。ここらあたり、仮面ライダーも、戦隊とは違った角度からのそれだけど、基本的にはファンタジー。

それにしても復活後ダムの上での二度めの変身は、エクストリームが“下りて”くるまでが泣かせました。「遠慮するなフィリップ、おまえは全開で行け!俺がついて行くから!」「こんなバチバチ(←フィリップ側のサイクロンが翔太郎側のジョーカーに比べて強すぎるための摩擦火花)なんてこたぁねえ、耐え切れるさ!」「オマエが相棒だと思っててくれる限り、オレは二度と降りねぇぞ!」→エクストリームメモリ降臨、はまさに少年漫画の王道。こうして台詞を再録してるだけでも、血沸き肉躍るとともに、胸が締めつけられそうになります。

ひとり分の場所しかない至高の高みに、何としてもふたりで上り詰めようとする無茶な野郎どもの無茶さが、エクストリーム(=頂点)という名の地球の記憶を集結させました。

 苦渋の決断で「ボクと組む気はあるかい」と持ちかけたフィリップを「つまらない質問をするな」と、いつになく“つまらない”と余分な形容詞を付けて斥けた照井(木ノ本嶺浩さん)にも武士の情けを感じました。翔太郎とでは変身できない現実をつきつけられ、ままよとフィリップがアクセルに放ったサイクロンメモリを、確かにアクセルは一体化して使いこなしウェザーを退散に追い込みましたが、引き揚げて返却したときのフィリップの沈痛な固まり具合を見たら、“コイツも本当は、力のためだけに左を切って自分と組むことは本意としてない”がビンビン伝わってきてしまう。「俺はひとりでヤツらを追う」と向けた背中には、“相棒を持たない運命の者”の覚悟と、“相棒がいるっていいな、内緒だけど、本当は羨ましいよ”の憂愁がにじんでいたりなんかして。

 今エピは雨降らしと、水際での濡れバトルが多く、しかも撮影は2月後半か3月上旬のまだ寒い頃と思われ、特に桐山さん木ノ本さんは心おきなく水漬けにされて、燃え展開から落ち着いて再度録画観返すと、観てるほうの歯がカタカタ鳴りそう。エクストリームを驚嘆の眼差しで仰ぐ照井も、ゾーンに川に突き落とされ亜樹子(山本ひかるさん)とフィリップに救出される翔太郎も、目の下真っ黒クチビル真っ青でした。どうか皆さん、最終話までご健勝で完走を。

 あとね、人にシンパシーを示すことに滅法不慣れなフィリップが照井を呼ぶときの「テルイリュー!」って、『新・三銃士』の枢機卿リシュリューみたいですな。放送時間(日曜朝)一部かぶってますが。

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