桑田佳祐さんの5日リリースのニューシングル『ダーリン』。
彼の最近の作品の例にもれず、TVCMで一聴の印象は若干古臭めで、さしたるインパクトはなかったけれど、FMヘヴィーローテで繰り返し聴いているとじわじわ来る“球質の重さ”がありますね。
桑田さんの曲を聴くたびいつもなのですが、この『ダーリン』も、いつの時代かの誰かに、カバーして歌ってもらえないものだろうか…とこの数日考えていて、結局、堺正章さんに行きついてしまいました。
1971年『さらば恋人』でスマッシュヒットを記録し紅白歌合戦にも出たあと、ドラマ『時間ですよ』劇中で『涙から明日へ』などを歌い、ちょっと一服してから阿久悠さんの代表詞でもある『街の灯り』を73年に出した頃のマチャアキが ♪わっかれーのあっさが来た~ って歌いながら『紅白歌のベストテン』の渋谷公会堂のステージセンターに歩いて来るところを想像したらどんなもんでしょう。キャラ的にはお仲間の井上順さんも歌えそうな詞世界なんだけど、声域がちょっと厳しそう。
で、そこまで考えて、さらにとんでもないことを思いついてしまいました。「いっそ71年『君をのせて』でソロ歌手活動を始めた頃の沢田研二さんにこの曲お任せしちゃったらどうだ!?」
♪オレよりもいい男(ひと)がいるならそれでいいのさ 泣いたのは幸せなお前が見れたから Ohだからダーリン恋の終わりはジンジン… って、平成19年現在の“俵はごーろごろ”ではない、当時23歳の細いジュリーがクネクネしながら歌ってくれちゃうわけですよ。もう、明石家さんま師匠に言わせれば「これで茶の間はドッカーン」ですよ。
ちょっと有難すぎ、もったいなさすぎるか?なら、72年『許されない愛』『あなただけでいい』などをスルーし、73年『危険なふたり』での日本歌謡大賞受賞その他もそのまんまにして、同年12月の『魅せられた夜』の、さらにC/Wでどうだ。
沢田さん25歳。安井かずみさん訳詞の♪濡れた夜に抱かれて 貴女の身体は 月の光の中で熱く燃える~ のB面が、♪北風に煽られて互いの指をからめて もう二度と結ばれぬ運命と知りながら Ohマイリトルダーリン 愛の旅路はエンディン ダメになりそな今宵Miss you ~ ですよ。ものすごく芸域広がるよジュリー。
80年頃からヴィジュアル系のハシリみたいなお化粧路線でキワモノっぽくなって行った沢田さん、この時点でこの曲に出会って、自分の持ち歌としてこなしていればその後どれだけラクになったかと思うがなぁ。しかし、73年、桑田さんがまだ17歳だ。無理か。しかし25歳と17歳、大した差じゃないのだな。
ソロ名義であれ、サザン名義であれ、新曲を聴くと「この曲カバーするとしたら…」と想像をふくらませてくれるのが桑田ナンバーの楽しみ。
“いつも新曲と言ってもどっかで聴いたことあるような感じ”に、賛否はあるでしょうが、ダウンジャケットや羽毛布団のような、包含する“空気量”の底力と言っていいと思う。
いままで思いついた中でいちばん気に入ってるのは『ホテル・パシフィック』を氷川きよしさん、『波乗りジョニー』を藤井フミヤさん、『真夏の果実』を平井堅さん、『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』を加山雄三さん、『愛と欲望の日々』を(72年『恋の追跡』の頃の)欧陽菲菲さん、『素敵な夢を叶えましょう』を故・美空ひばりさん。
モノマネ芸人さんでもいいから、“なんちゃってトリビュート盤”作ってくれないかな。
何しろ来年で活動30年ですもんね。ドライブデート用のカセットに編集したり、職場の忘新年会・歓送迎会の“演しモノ”としてウケを狙ったり顰蹙を買ったりで、一曲ごとに甘やかに懐かしい思い出と同じくらい、こっ恥ずかしい思い出や嫌な思い出もある。月河にとってサザン・桑田作品は、もう好きとかファンとかではなく、“クサレ縁”かもしれません。
『真夏の果実』前川清ヴァージョンいいですねっ。「アノ人が本当のパパだったら…」って宇多田ヒカルさんも惚れ直す、なんてこたぁないか(昼ドラか!)。
「真夏の果実」はイントロといい歌詞といい桑田氏のナイーブさが一番出ている好きな曲の一つですが、平井堅さんもいいですが前川清氏なんかにも歌ってもらいたいな~とふと思ってしまいました。