イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

蒼ざめたうさぎ

2009-08-20 22:20:43 | ニュース

酒井法子容疑者の覚せい剤事件報道で何がもやもやするって、いつの間にか酒井さんが“一世を風靡した国民的アイドル”みたいな修辞で表現されていることですね。

いや、人気あったのは確かだけれど、少なくとも“国民的”と言ってもまるっきりの大ウソでない級の人気知名度を獲得したのは、93年のドラマ『ひとつ屋根の下』の小雪お姉さん役、95年の『星の金貨』の聴覚障害少女役以降だったと思うのですがどうでしょう。

88年春のセンバツ高校野球の入場行進曲に、何とか言う前年リリースの曲が使われたこと、笑顔と涙顔2パターンのイメージポスターになって、当時の最寄り駅の改札口付近に貼ってあったことがうっすら思い出されますが、この時期の中森明菜さんや小泉今日子さん荻野目洋子さん辺りの曲なら56曲はたちどころにワンコーラスは歌える月河が、酒井さんとなるとさっぱりです。曲タイトルさえ、言われてうっすらどころか、言われても思い出せない。

どう考えても、87年初めにレコードデビューしてから『ひとつ屋根の下』までの酒井さんは、“おニャン子ブーム後、バラドルでもイジられキャラでもない正統派アイドルの居場所が狭くなる逆風の中、悪戦苦闘していた”、せいぜい“苦闘なりに健闘していた”印象しか月河にはありません。

今般の事件後、ひどい媒体になると「“のりピー語”は全国津々浦々、老若男女に大流行した」まで言ってるところもある。当時は“ベタに可愛く清純派”のエリアにぎりぎり踏み止まったまま“ウケ狙い”という、二律背反の涙ぐましいイメージ戦略にしか見えなかったのに。

ざっと調べてみると、酒井さんが、森田健作さんや桜田淳子さん松田聖子さんをかしらに数々のアイドルスターを輩出したサンミュージック所属が決まってから、いくつものメディア冠(かんむり)オーディション、ミスコンテストでタイトルを獲得、872月にレコードデビューを果たすまで、TVドラマ脇役や男子向け雑誌のグラビアガール、VHD(いまで言うDVD)など、“一世を風靡”“全国津々浦々”とは程遠い媒体での小出し露出を試みており、すでに“新人アイドルをレコード楽曲メインで、利益の出る商品にするのは難しくなってきた”時代の必死な模索ぶりが窺えます。

いま現在の報道を契機に改めて振り返ると、酒井さんの場合、生まれつき背負った複雑な家族環境が、いきなりメジャー全開参入を躊躇させたのかもしれない。『ひと屋根』で軌道に乗ってからも、“清らかで健気”の表看板を維持する年月は、ご本人も周囲も決して楽ではなかったでしょう。

芸能スポーツ報道の場合、大したことない人の大したことない話題、ヘタすりゃ宣伝兼用の話題でも、“すごい大物の、大注目情報”のように針小棒大に言うのはいつものことですが、酒井さんを“国民的アイドル”扱いする背景には、メディアの中にも見守る視聴者読者にも「せめてそう思ってあげたい」という心理があるような気がします。思えば酒井さん、楽曲歌唱では突き抜け切れなかった殻をブレイクしたのは、“かわいそうな境遇なのに頑張っている”キャラをつかみ定着させたからこそでした。言わば、どんなに成功していても、(潜在的に)かわいそがられる”ことで10数年、表舞台を張ってきた人なのです。

できちゃった婚の旦那さんが先に逮捕され、「自分が教えて、一緒に(覚せい剤を)やった」「数回じゃ済まない、もっと前から何度もやってる」「別居していたが会えば会うたびに痩せてた、絶対やってる」と、妻を庇い気遣うどころか、先んじて“売る”ような供述をしているとも伝えられます。育ち盛りのお子さんもあることだし、芸能界復帰云々より安らかで堅実な更生の道、支えてくれる人はないものでしょうか。

しかし、山梨ねぇ。地元の人たちはこんなところで頻繁に言及されるとは思っていなかったでしょうな。山梨と言えば『笑点』の三遊亭小遊三師匠ですけど、もう大喜利でネタにされてるかしら。ドロボウならともかくクスリじゃイジりにくいか。

『夏の秘密』は第59話。いよいよ結末への秒読みに入ってまいりましたぞ。今日は加賀医師(五代高之さん)、護(谷田歩さん)に雉牟田(四方堂亘さん)大活躍篇。

舎弟が刺客に刺されて診療所にかつぎ込まれ、救急通報するしないで雉牟田からナイフ突きつけられた護が反攻するワンシーンだけのために“加賀医師、学生時代はスキー部”設定とスキーストック一式を物語世界に持ち込む。方円の器に随う叙述が相変わらずスマートです。受話器をはさんでの四方堂さん谷田さんの南欧系“熱濃顔”2ショットはワンシーンだけでは惜しい迫力があった。

自分を刺した張本人である地廻りやくざの小者を、刺されたその負傷の癒えない身体で救命したという手応えだけで「医者廃業、診療所立ち退きはやめた」と翻意する加賀医師、雉牟田に脅されながら加賀を手伝った護(←やくざ小者は本来、護を刺す気で加賀に誤爆)までが「浮舟の権利書は返してくれ、でかいビルを建てて誰かを見返してやろうなんて、博打と一緒で裏の誰かの駒に使われてるだけだ」「オレはこの町からやり直したい」と雄介(橋爪遼さん)に土下座。

なんかわかったようなわからないような風向きの変化だけど、“カネに釣られることを(本音のところでは)潔しとしない”信条というか侠気のようなものが、叩けば埃も出る生き方をしてきたこの2人の男たちにはあったということなのでしょう。

それにしてもよくよくヤバい患者や看護師、刃傷沙汰に縁のある診療所です。三日月神社に頼んでお祓いしてもらったほうがいいのでは。

そう言えば1819話で、借金地獄で家賃を滞納、首吊り自殺しかけた住人が運ばれてきたことがありましたが、あれは“紀保(山田麻衣子さん)が伊織(瀬川亮さん)から貧乏の苦しみを教えられる”プラス“紀保、伊織の隠された優しさ(=自責の念で飲み潰れた雄介を介抱)を垣間見る”のためだけのエピソードで、本筋用の伏線ではなかったのかな。

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