『炎神戦隊ゴーオンジャー』が毎話、素晴らしい牽引力なので、つい後送りになってしまいますが、スーパーヒーロータイムのもう一方の雄『仮面ライダーキバ』も、1986年時制の紅音也(武田航平さん)に“戦う動機”が固まってきてからめっきりライダーシリーズらしいテンションになってきました。やはりライダーは“正・邪両陣営のライダー能力争奪戦”と“ライダー能力と一般人生活との間で肉体的精神的に葛藤するヒーロー”というモチーフが物語に織り込まれてこそ。
それにしてもキバの3rd強化変形フォームたるドッガフォーム、パープルアイド・パープルアームドで王蛇(@『龍騎』)よろしく首も回してたし、ライノセラスファンガイア(人間体がやはり『龍騎』香川教授・神保悟志さん)戦でのキバットくんのアドバイス「力にはチカラだ!」通りパワー主体の強化だってのはわかるんだけど、キャッスルドランからでっかい紫の握りコブシが降臨してきたときには「おいおい、いくらなんでも」って思いましたよ。しかも客室乗務員のおねえさんが空港内移動するときのカートみたいにゴロゴロ地面引きずって運ぶという。
もともと仮面ライダーって敵組織や怪人のあの手この武器に対しても、素手のキックパンチで応戦して最終的には倒してしまう、というところにライダーのライダーたる所以があったと、いまだに月河世代は潜在的に思っているので、ライダーが“いかにも武器然”としたツールをえっさこらさと携行していると、“ライダーのパロディ”みたいで微苦笑してしまいます。ま、どんなにスットンキョーに強化変形しようと、お話としておもしろく、キャラとして魅力がありさえすれば、まったく構いませんけどね。
『花衣夢衣』は第21話。真帆(尾崎亜衣さん)が暴行されたときはお皿割れたりテレパシーに近いくらいの姉妹間感応力があるのかと思った澪(尾崎由衣さん)、自分の結婚話が現実化し幸福に目が眩むと、相手=将士(眞島秀和さん)の写真を見せたときの真帆の異常な反応にまったく気づきませんね。
もともと澪には、たぶん思春期序盤から“同じ顔で同じ環境なのに、真帆のほうが明るく機転がきいて人に好かれ評価が高い、男の子にもモテる”というコンプレックスと焦りがある。レイプ事件以降「真帆は私のせいで傷を負い女の幸せをあきらめたのだから、私ひとり幸せになっては申し訳がない」と母にも自分にも、当の真帆にも言い張ってやまないのはエクスキューズであって、実は“何もなければ真帆のほうが先に恋人ができて愛されて結婚し、私は取り残されるはず”という潜在的恐怖の裏返しなのです。
だから「好きな人がいたけどきっぱり別れて、あなた1人を愛するよ」と宣言してくれた将士は、澪にとってたぶん生まれて初めての“真帆より前に出ることができた”輝かしい経験のシンボル。でも“自分のせいで負った傷がために真帆が女の幸せからリタイアしたままでは、先んじる幸せも美味しくない”から「真帆がお見合いするって言うからワタシもその気になったのよ」「一緒に結婚しようって約束したのに」と駄々をこねるわけ。澪としては是が非でも真帆に“戦線”にとどまって、なおかつ自分の後ろにいてほしいのです。
そもそも“客観的に見て自分より幸福度が落ちる人”が近くにいてくれないと、人間、幸福を実感はできないものです。
“真帆が納得し満足したうえで、格的にもルックス的にも将士さんほどはステキじゃない人と結婚してくれる”のが澪にとっていちばん喜ばしい着地。物語としては、傷を負って友禅の道にいそしみ、心かよわせる恋人をやっと得たのに身を引かざるを得ない真帆に視聴者の同情が集まるところでしょうが、人間の心の有り様、生き様のサンプルとしては澪のほうがずっと興味深い。
基本は男女の恋愛メロドラマですから、将士→真帆、将士→澪の恋心の芽生えと盛り上げ方、もう少しなんとか…という食い足りなさもありますが、全体的には堅実な描写で中盤にさしかかってきています。
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