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告別式。
朝、美容室から帰ってきた母は極妻みたいなアップにしていた。
父は朝風呂に入り、裸でウロウロしていた。
突っ込むと
「やーだ」
と恥ずかしがるので少し気持ちが悪い。
慌ただしい朝だった。
告別式は400人近くの人が来ていた。
市長や銀行関係者が多かっただろうか。
おばちゃんに、最後のお別れをした。
たくさんの花に囲まれた棺の中のおばちゃんに、
「亮子、頑張っからね!」
と言った。
そして涙が枯れるぐらい泣いた。
マイクロバスに乗り、火葬場へ。
火葬場の物々しい雰囲気が前から駄目だ。
着いた途端に貧血を起こす。
ずらりと並んだ番号ランプの下に扉。
25年前、祖父が亡くなったとき、5歳だった私は、これはエレベーターの扉だと思っていた。
「ああ、これに乗って天国へ行くんだ」
と真面目に信じていたんだっけ。
棺を乗せた台車が無機質な音をたてながら扉の向こうに入っていく。
静かなのに、でもあらゆる感情も否定してしまうかのような絶対的な動きに乗せられ、祖母は扉のあちらに消えていった。
さようなら
さようなら
おばちゃん
さようなら
火葬が終わるまで、親戚の話に打ち解けられない私は、外の喫煙所で煙草を吸っていた。
目の前の煙草の煙と祖母が焼かれている際に出る煙(実際には無煙)がリンクして、なんともこうセンチメンタルな気分になっていた。
「よ!」
振り返ると叔父が立っていた。
足尾在住の彼の話は本当に楽しい。
「足尾にはクマがいるんですか?」
という質問をしてみた。
「ああ、いるよ。オジさんも何回もクマに会ったよ。亮ちゃんはクマ、好きなんけ?」
ええ。
好きですとも!
足尾、いきてぇ~!
矢継ぎ早にクマについて質問をし、彼は不思議な顔をしていた。
祖母の収骨。
95歳とは思えぬ骨太な残りっぷり。
骨壺に入りきれず、職員にばきばき折られていた!
ああ、無惨。
複雑骨折極まりない。
入れ歯の金属や妹が入れた100円玉が丸焦げになって残っていて、焼かれた際の温度を考えてしまう。
熱かっただろうに…。
お骨になった祖母と一緒にマイクロバスに乗って葬儀場に戻る。
隣の妹はだんだん黙り込む。
ああ、そうだよね。
あのおばちゃんが骨になっちゃったんだもの。
寂しいよね。
ん…?
何…?
おしっこに行きたいって、今、言った?
おしっこ?
我慢できないの?
…ということで、我々親族を乗せたマイクロバスは、途中停車し、妹の放尿に付き合った。
後ろのおっさんが
「あの子、どうしたんだべ?途中で気分悪くなったんだべか?」
と心配していた。
いえ、まさかの放尿ですから。
葬儀場に戻り、初七日の法要と坊さんの話を聞いて精進落とし。
祖母には孫13人と曾孫13人がいる。
何人かの従兄弟は婚約者を連れてきていて、いずれも歳が近く、しかもmixiをやっているので話が盛り上がった。
また、従兄弟の息子ソラ君(6歳)と仲良くなった。
子供嫌いな私が、彼と遊んでいた!
CNNで放送されるべき世界的なNEWSである。
「ソラくんさー、ところでお姉ちゃん(私)、いくつに見える?」
と尋ねたら
「22歳」
と返答された。
感無量。
「ありがと!」
頭を撫でたら抱きつかれた。
しかもおっぱいを握られたんだが…。
操を6歳児に奪われてしまった。
いとも簡単に。
嗚呼、疲れた。
たくさんの親戚や来賓と接して、本当に疲れてしまった。
そういえば、この葬儀場は以前、スーパーサンユーだった。
サンユーに行き祖母に好きなお菓子を好きなだけ買ってもらうのが、幼い私や妹の楽しみだった。
着物姿でカートを押す祖母の姿が思い浮かぶ。
でも、もう泣かないよ。
おばちゃんの強さはたしかに遺伝してっからさ。