危険信号

2005年12月08日 | 介護日記 -
体調の激変もすごいけれど、それに則した精神的な激変も“ものすごい”。
最近の父は、ちょっとしたことで、頭が“ぶっ飛んでいく”ようだ。
そして、しばらくすると、再び元の状態にもどったりする。
まさに、タイムカプセルにのっているような印象だ。

昨日は、「田舎に帰りたい病」を通り越して、
まさに“田舎の実家でいる”かのような“行動”をした。
実家の隣人であり、同級生でもある「マサユキさん」に会うために、
玄関を出て行こうとしたのである。
自分がどこにいるのか・・・分からなかったようだ。
「ここは、徳島じゃないよ」
説明するわたしの声に、玄関のドアを開けて、しばらく辺りを見渡していた。
その顔は、無表情だった・・・。

   ヒヤッとした。
   わからないんだ・・・。

   これから先は、徐々に、こういうことばっかりになるんだろうか・・・。


その他にも、昨日はたくさんのことがあった。
たとえば、自分で入れ歯を持って出たのに、何処に置いたのか・・・すっかり
「忘却の彼方」で・・・私は何度もいろいろな場所を探しまわった。
しかし、しばらくしたら、探していたことさえも、すっかり忘れちゃって・・・。
こういうことが連続的にあったのだ。


今日は、今日で・・・
ヘルパーさんから「緊急招集発令」が下り、急遽自宅に取って返すことになった。
「帰ってきてくださいと言っておられます。帰れますか?」
「えっ、これからですか?」
「今、どのような様子なんですか?」
私の頭の中では、赤いランプがまわり、サイレンも鳴り響いている感じだった。
“いつもと違って、ちょっとばかり様子がおかしい”という印象で、父自身も
「体調が悪いので、娘に連絡してくれ」と言ったとか・・・。

帰宅して、よくよく話を聴いてみると・・・
毎週来てくれているヘルパーさんの顔を忘れて、存在も忘れて、
「知らない人が突然台所を使い始めた」という解釈で、警戒心を深めたらしい。
 (先週は、前回着ていた服の色まできちんと覚えていたのに・・・)
この記憶の落差は、一体どこからくるのだろう。

今日の父は(基本的に)、かなり心のバランスを壊していた。
安定剤を飲んでもらって、少し調子は上向いたが、まだ完全な状態ではない。

  果たして、「認知症」からくる現象なのか。
  それとも、肝機能障害からくる脳障害の症状なのだろうか。

娘の言葉にも、目線はぼぉ~っとして、なんとなく浮ついていた。
私自身の存在は理解できているようで、なんとも微妙な「まだらぼけ状態」である。



昨日~今日と、“これまでなかったようなこと”を、いくつか経験した。
幻影を見ているかのような父の姿は、なんとなく数ヶ月先の父を予感させて・・・
私は(徐々に)身体が緊張していく感じだった。

覚悟はできているが、いざとなると“本当に怖いものだ”。
身がひきしまる想いだ。
“ふんどし”はいつも締めていないけれど、なんとなくキュッと締め直す感覚―。
そして、腹から吐き出した息は、すこしだけふるえている・・・。

いろいろなことを、真面目に勉強しなければならない時期が来たのかもしれない。
目をそらさないで、可能な限り向き合いながら “やっていきたい”。