Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

戦後日本民主主義終焉への手引き アーミテージ元米国務副長官らによる対日政策提言第三弾

2012-08-17 | Weblog
リチャード・アーミテージ元米国務副長官、ジョセフ・ナイらによる米超党派グループによる対日政策提言第三弾が発表された。2000年の第一次提言は、直後の小泉首相がそれを丸呑みした政策を積み重ね、周囲が米側の意志に逆らえないという一点でそれを認め、小泉が「強い首相」という誤ったイメージを得て、日本を悪い方向へと一気に牽引した諸悪の根源というべきもの。2007年の第二次提言も、今あらためて眺めても、その後の民主党政権がどう足掻いてもこの指針に逆らえなかったことがわかる、アメリカの冷徹な対日本政策が汲み取れる、底冷えするような代物だ。そして今度の第三弾……、まだ全文の訳が手に入らず、要旨しか見ることができないでいるが、今伝わってきている範囲でも、震災・原発事故のダメージから立ち直れない日本を、この国の指導部にかわって、支配・操縦しようとするものである。序文からいきなり「中国の台頭や北朝鮮の核開発に的確に対応するには、より強力で平等な同盟が求められる。日本国民と日本政府が二流国家に甘んじる気なら、この報告書は無意味だ」と迫る。「日米同盟の未来は、日本が世界の舞台でより大きな貢献を果たすパートナーになるかどうかに懸かっている。日本は依然として一流国家であり続ける力を十分持つ」と、あくまでも「日本側の判断」としている。「エネルギーと安全保障」については、この二点が繋がっていることをもう隠さない。「原発を慎重に再稼働することは日本にとり正しくかつ責任ある措置だ。原子力は日本の包括的安保の不可欠な要素となる。日米は原子力エネルギーに関する協力を強化し、世界規模で原子力安全の促進を図るべきだ」としている。アメリカではリベラル派でさえ、というより「環境派」の方がむしろ「石油より原子力」というシフトが王道であるが、脱原発依存に向かう世界の趨勢を無視して、原子力のパートナーであれということだ。一方で「米国は資源ナショナリズムに訴えてはならず、民間企業の液化天然ガス(LNG)輸出を禁じてもならない。日米はメタンハイドレートの研究・開発で協力すべきだ」ともしている。せっかく日本の環境省がこの13日、「太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーによる発電量の試算」を発表し、「買い取り価格・期間を事業者に有利なものとすることで、原子力発電を大きく上回る発電量が見込めることがわかった」としているのだが、それに対する逆風である。経済・貿易面では、「環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に加え、日米にカナダ、メキシコが参加する包括的経済・エネルギー・安全保障協定を締結すべきだ」と、これまでの「自由化」要求方針を踏襲している。「日韓の緊張緩和のため米国は外交上の努力を尽くさなければならない」としつつ、「日本は韓国との関係を複雑にし続ける歴史問題にしっかり向き合うことが不可欠だ。日韓は民族主義的感情を内政上の目的に利用するのをやめるべきだ。米国を加えた3カ国で日韓の歴史問題に関する非公式な官民の取り組みを拡大させる必要がある」と、直裁に語る。「日米は政策・運用両面で、中国が尖閣諸島や南シナ海に〈核心的利益〉を広げてくるのに対処しておく必要がある」という文言は、沖縄への米軍配備に向けた強制を裏付けるものとして、「活用」されてしまうだろう。「日本はインドやオーストラリア、フィリピン、台湾との関係を強化すべきだ」、そして「イランにホルムズ海峡封鎖の兆候が出た場合、日本は単独でも掃海艇を派遣すべきだ」「完全に南シナ海の航行の自由を確保するため、米国と協力して監視活動を強化する必要もある」と、本来の「自衛隊」等の機能を無視した「ミッション」を堂々と謳い、「日本の武器輸出三原則の緩和を踏まえ、日本の防衛産業に米国だけでなく豪州などへの技術移転も促すべきだ」としている。「米軍普天間飛行場移設問題は、(日米同盟の)将来像に焦点を当てていけば解決可能だ」としているが、この「将来像」が普天間基地及びその代替地の「撤去」「縮小」に向かっていないのは文脈上、明らかだ。「日米同盟深化」としつつ、結果として「従属」の関係を明確にしている。……ある意味で、この提言は最大限、丁寧に、慇懃なまでに言葉を選んでいる。この「内容」を選ばせたのは、独自の明瞭な指針を打ち出せないできた日本のこれまでの状態の故である、ということだ。それはまったく否定できないが、だが、この提言を鵜呑みにすることは、アメリカに依存した平和と繁栄を甘受してきた「戦後日本民主主義」の、明らかな終焉を意味することになるだろう。
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