Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

なにもおきないタクシー

2019-10-25 | Weblog

『なにもおきない』で一番短いのが、このタクシーの場面だ。

不条理という意味では一番徹底している。

 

ぼんやりしている人にとっては、内容は、ほぼ、ない。

スルーしようと思えばスルーできる。

しかし深い意味がある。

 

演劇はこんなことができるんだ、という、究極の例である。

 

上演終了後なので、珍しく自己解説すると、乗客の女性が自らの差別性に無自覚であること、彼女の潜在意識に対して、否定・肯定でなく、たんに彼女の認識を深めさせているだけである「さとり」運転手の存在、という、表層の「なにごともなさ」と、現実の不穏さ、というところでしょうか。物語としてはスルーされることがむしろ狙いで、劇全体のバランスには必要、という場面です。

 

猪熊恒和の運転手、円城寺あやの乗客。撮影・古元道広。

コメント
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