『天神さまのほそみち』上演にあたっての、ごあいさつ (当日パンフレットに掲載しています)
今回の上演は、3月に別役実さんがお亡くなりになったのを受けて企画したわけではありません。結果として追悼上演ということになりました。<別役実メモリアル>の第一弾として、身の引き締まる思いです。
『天神さまのほそみち』は、別役戯曲の中でも困難とされている作品ですが、40年前に初めて読んで以来、いつか上演したいと考えてきました。1979年に文学座で初演された本作は、翌年の『赤色エレジー』同様、四十歳代に入ったばかりの作者が「青春期の終わり」を意識し、また、演劇というスタイルに対して果敢な挑戦を挑んだものです。稽古を重ねながら、『ゴドーを待ちながら』と重なる部分を発見し、あらためて唸らされたりもしています。
4月以降、コロナ禍の「緊急事態」下、私たちの生活は変化を余儀なくされました。「ふだんの過ごし方」が、変わったのです。「不要不急」以外の時には「出かけてはならない」というルールができて、しかし、かえって、散歩する人達が増えたように思います。
私自身、「在宅」時間が増えたからこそ、近所をずいぶんいっぱい歩いた、という気がします。自分の住処の周囲の風景が、違うものに見えてきました。「自分たちの町」との、出会い直しです。
そして、私が東京に出てきてからの四十年を振り返る機会にもなったように思います。いろいろなことを思い出し、また幾度かは、時間経過の現実の尺度が、自分の主観とは異っていることを発見し、驚かされました。
私は1983年以来、杉並区民で、ごく近いエリアの中でのみ、引っ越しをしてきました。この劇の宣伝写真の神社も、昔住んでいたアパートの近くです。
そして、じつは別役さんとは、ずっと「ご近所」に住んできました。おそらく私が生活してきた地域は、「別役実作品の場所」でもあったのです。
この間、コロナ禍による被害に対して「損失補填はしない」という安倍首相の方針に対して、演劇界の一員として、緊急支援を求める取り組みを始めました。映画のミニシアター、音楽のライブハウスの人達と連動した〈 We Need Culture 〉の運動も含まれます。
そして、『天神さまのほそみち』上演に向けて、私たちは稽古場に通う日々を取り戻しました。最初は、やはり、ほとんどの者がマスクをつけていました。換気のため、開け放した窓の外に扇風機を向けることも、以前には考えられませんでした。
そうした新しい「日常」の中で、あらためて実感したのは、私たちが劇場を中心とした「生活者」である、という事実です。そうした新鮮な「自覚」が、この上演にとっても、意味があるように感じています。
ご支援いただけますと幸いです。
ご支援いただけますと幸いです。
写真は、撮影・姫田蘭。
鬼頭典子、さとうこうじ。
<別役実メモリアル> 燐光群『天神さまのほそみち』
作◯別役実 演出◯坂手洋二
7月3日(金)~19日(日)全20ステージ
会場◯下北沢ザ・スズナリ
出演◯さとうこうじ 鴨川てんし 川中健次郎 猪熊恒和 円城寺あや 鬼頭典子 杉山英之 荻野貴継 樋尾麻衣子 武山尚史 町田敬介 中山マリ(voice)
【全席指定】
一般前売 3,800 円 ペア前売 7,000 円 当日 4,200 円
U-25/大学・専門学校生 1,500 円 高校生以下 500 円
U-25 以下は特別価格(前売・当日共通料金。当日受付にて要証明書提示)。
タイムテーブル、アフタートークスケジュール等、詳細は燐光群 Webサイトを御覧ください。
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http://rinkogun.com/Tenjinsama_no_Hosomichi.html