『天神さまのほそみち』上演を経て、一九八十年代前半頃、別役実戯曲の影響を強く受けていたことを、あらためて思い出す。
今は編集者の豊田勇二くんが、自分が出ていた劇の写真をデータ化して送ってくれた。一九八四年九月、吉祥寺バウスシアター屋上で上演した野外劇『オルレアンのうわさ』。この劇では、豊田君、二枚目である。狂気の、だが。
「擬制の家族」の三人が、「お茶の時間」を持とうと「努力」する場面だ。この場面が、劇中で一番、別役実影響下にあったはずだ。
猪熊恒和の舞台デビュー作でもある。いまやチンドンの玉三郎とも呼ばれるチンドン屋の大御所でありミュージシャンともなった吉野茂を舞台の道に引き込んでしまった公演でもある。私とバイト先で一緒になってしまったことが彼の運命を変えたのである。彼は逆モヒカンに頭を刈って出た。
野外劇で、最終日は大雨に降られて、一日順延した。
公演初日に、親交のあった舞台美術家・手塚俊一氏が亡くなった。お通夜にもお葬式にも行けなかった。翌年は燐光群の美術をやると約束してくれていたのだが。
この戯曲は梅ヶ丘のアトリエで、15年以上経って、劇団の若手が自主公演で再演してくれたのを憶えている(私は関わっていない)。
写真左から、河上真理、土田修二、豊田勇二。