燐光群創立40周年記念公演『わが友、第五福竜丸』パンフレット掲載
上演にあたっての、ごあいさつ
第五福竜丸について、私は、ちゃんと知らなかった。じつのところ、私に限らず、現在、この国全体でも、第五福竜丸について、具体的な知識を持っている人間は、やはり少ないのだと思う。東京に住んでいても、放射能汚染や核兵器の問題等に興味があっても。
一九八〇年代の終わり頃、私は東京のゴミ問題について書く仕事の依頼を受け、初めて埋め立て処理場に取材に行ったが、そのとき「夢の島」のことを、詳しく知ろうとはしなかった。ゴミの芝居『ブレスレス ゴミ袋を呼吸する夜の物語』は、作った。
『天皇と接吻』(1999)には、終戦直後のGHQによる「原爆被害の隠蔽」について描く部分があり、被爆直後の広島に撮影に入った新日本映画社のスタッフと、東海村の事故に怯える高校生たちの姿を、重ねて描いている。その創作時、第五福竜丸展示館の現事務局長である市田真理さんの関係で、終戦直後の被爆状況についての資料をいただいた。御縁はそこから始まった。
やがて、第五福竜丸展示館の運営に携わっておられる皆さんが、私たち燐光群の劇を、長い年月にわたって観てくださっていたことを知り、私自身が初めて展示館を訪ね、その成り立ちについて学び、「核実験にまつわる世界じゅうの被害」について、ようやく学びはじめた。
そして、たまたま私が〈新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会〉と関わり、福島の〈放射能汚染土〉が「再利用」という形で私たちの日常に近づいてきたことや、〈汚染水〉放出の現実により、〈核〉〈被曝〉の問題が、私たちの暮らしに密接に繋がってきていることに、あらためて気づきはじめた。
振り返ってみると、「地雷」について様々な視点で描いた『だるまさんがころんだ』(2003)に登場する「劣化ウラン弾」が、これまで燐光群の劇に出てきたいちばん具体的な「核兵器」だったということになるのかもしれない。悲惨だが喜劇的要素が強かった。同作を御覧になっている展示館の安田和也さんがふと漏らされたように、今回の新作もまた「笑うしかない」状況が出てくるかもしれない。ユーモアとは「人間のこと」だからである。
以上、既にお伝えしたこともある経緯ですが、大切なことなので、あらためて記させていただきました。
写真 左より 瓜生田凌矢 三浦知之 徳永達哉 猪熊恒和 南谷朝子 大西孝洋 川中健次郎 鴨川てんし 宅間脩起 武山尚史
撮影・姫田蘭
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さて、この後は、ちょっと特別なエピソードを、ネタバレになるかもしれないことを、記します。当日パンフレットで読んでいただければと思います。(観劇の前には知っておきたくないなあ、とお考えの方は、終演後に読んでいただければ幸いです)
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燐光群創立40周年記念公演 『わが友、第五福竜丸』 東京公演は11月26日までです。
今回は、全国六都市のツアーがあります。
燐光群『わが友、第五福竜丸』上演情報です。
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https://rinkogun.com/portfolio/20231117_wagatomo_dai5fukuryumaru/