フェンネルが一株あります。
フェンネルは、和名をウイキョウ(茴香)と言い、漢方薬のCMなどでおなじみの生薬で、どちらかというと健胃薬のイメージですね。
ヨーロッパでもポピュラーなハーブで、ギリシャ語では「マラトロウ」と言い「やせる」という意味の動詞から由来しているそうです。
古代エジプトの墓から発見された医学書のパピルスにも記載されていて最も古くから栽培されてきたハーブの一つでしょう。
ギリシャ神話では、プロメテウスが、人間のために太陽の火をフェンネルの茎に移し取り、地上に持って来たと言われています。
またフェンネルには、戸口に吊るしたり鍵穴に詰めると、魔除け厄除けになるという話と、反対に魔女を誘い近づけてしまう話があり、『聖ヨハネ』の前夜(6月23日)に、どこの家庭でも必ずフェンネルを織り込んだリースを玄関ドアに飾りお守りにしたそうです。
そして反対の話としては、フェンネルを燃やすのはタブーとされていてこの葉をいぶすと、その香りに誘われて妖怪たちが次々と現われるので魔女のお気に入りのハーブだったそうです。
フェンネル種子
古代ローマの人たちも、フェンネルを好んだそうで、ローマの戦士たちは戦場に行くとき、フェンネルの種を持ってゆき、胃腸の働きを活発にし、エネルギーをみなぎらせ、負け知らずで戦い続けたそうです。
そして古代ギリシャのオリンピック競技の際も、勇気が湧きエネルギーを与える力があると信じられ、選手は種子を食べて競技に臨んだそうです。
清教徒時代のアメリカでは、教会でお祈りする間に、お腹が痛くならないようにとか、長い説教中の空腹や退屈を紛らわすために、フェンネルの種子を噛んでいたそうで、別名・礼拝の種・とも呼ばれていました。
効能古くから「フェンネルを見て摘まないものは馬鹿だ」と言われるほど効能が多いハーブです。古代ギリシャやローマでは、減量に効果があるとしてダイエットの特効薬として、愛用されていたそうです。今でもフェンネルのハーブティーはむくみやすい体質や水太り肥満にも効果的とされ、北欧ではダイエットティーとして愛飲されているとか…
またローマ時代は、大蛇が視力を良くするために、この草を食べると信じられていて、プリニウスも「人間の視力の衰え」にこのハーブを勧めていました。
そのため、浸出液(ハーブティー)は目に良いとされ、昔は赤ちゃんが産まれたら、まずフェンネル湯で産湯を使い、赤ちゃんの目をこれで洗う習慣があったそうです。
種子には腸内のガスを排出し、消化不良、疝痛など消化器系の不調に対して、とても役立ちます。また授乳中のお母さんが飲むと、母乳の分泌を促すとともに、赤ちゃんの疝痛を抑える効果も期待できます。
ただし、フェンネルは子宮を刺激する作用があるので、妊娠中は大量に用いないようにして下さい。調理のスパイスとして少量使うのは、問題ないでしょう。
料理葉や花は、甘い風味で魚料理によく使われ、魚の生臭さや脂っこさを消し、すっきりとした香りが魚の味を引き立て、よく合うことから、別名・魚のハーブ・とも呼ばれています。南仏の名物料理「グリヤード・オ・フスイユ」は焼いたスズキを乾燥した葉の上にのせ、ブランディーをかけて燃やし、その香りを移す人気料理です。フレンチレストランで食べられた方も多いのでは…ふっくらして水分をたっぷり含んだ肉厚な根は、サラダに加えると甘みと歯ごたえがあり香りも豊かです。