武蔵野三十三観音巡りを開始したのは令和4年11月だった。
暑い夏は巡礼をサボり、涼しい場所でのうのうと過ごしていたせいで、なかなか進まず、2年以上経った先日、ようやく最終日を迎えた。
西武池袋線「東吾野」駅で下車し、三十番の福徳寺から4カ所の霊場を回る。だが、この寺はグーグルマップと相性が悪いのか、正しく地図に表示されなかった。「目的地に到着しました」となっているのに、目の前はどう見ても普通の民家。「こっちかもしれない」と動物的直感で丘を登り、どうにかこうにか目当ての寺にたどり着いた。
しかし、御朱印はそこからさらに15分かかる別の寺でないといただけないと書いてあり、「キイ~ッ」と地団太を踏みつつ前に進む。どうにか御朱印ゲット。
再度電車に乗り、「吾野」駅で降りると、駅前に三十一番法光寺がある。ここは楽に終わるが、三十二番子(ね)の権現天龍寺、三十三番八王寺(竹寺)は遠い。しかも山の上。気を引き締めて歩き始めた。
天龍寺に行くには「子の権現」を示す順路に従えばよい。途中の「東郷公園」という場所で左折し、浅見茶屋を経由するハイキングコースを通るつもりだったのだが、ここだけ進行方向に順路が示されておらず、曲がり損ねて国道に出てしまった。あわてて引き返す。気づいたからよかったけれど。
じわじわと続く登り坂を進むと、30分後に浅見茶屋が見える。しかし「本日休業」となっているではないか。休憩する予定はないから問題ないけれど。ここは高尾山と違い、めったに人とすれ違わないので、採算が取れないのかもしれない。
ここを越えると、ザ・山道という雰囲気が待っている。
気を引き締めて登り始めるたところで、向かい側から男性2人がやってきて、すれ違った。
「こんにちは~!」
「こんにちは」
山の挨拶は爽やかだ。しかし、犬の散歩に比べたら、コミュニケーション度では負けるかもしれない。思ったことが伝わったわけではないだろうが、会話がなおも続けられた。
「お茶屋さん、混んでました?」
ははあ、逆コースから来たのだなとわかった。子の権現方面から吾野駅に向かい、浅見茶屋で一杯やる人たちもいると、ネットに書かれていたからだ。
しかし、しかし。さっきの看板を思い出す。
「あのう、本日休業って書いてありましたよ」
「ひいい~」
リアクションが豊かな2人組だった。どこかで美味しいものが食べられるといいね。
山道を登り、振り返ると高低差がわかる。
子の山と書いてあったが標高は640mほどらしい。ちょっとがんばれば何とかなる。だが、あまりにも人がいなさすぎて、「熊が出るのでは」と心配になった。
私は「熊鈴」を持っていないのだ。富士山5号でもらったお守り鈴ならあるからと、ポケットから出してリュックの紐につけてみた。
熊鈴の「カランカラン」という景気のいい音に比べて、こちらは「チリチリ」という微かな音。つける意味あるかな? と疑問を感じつつさらに登る。途中でコンビニおにぎりを3個平らげ、糖質補給をしつつ進んだ。
「着いた!」
山道を登ること40分、子の権現入り口が見えて感動する。熊に邪魔されることなく来られてよかった。
写真で見た通り、色鮮やかな立像が迎えてくれた。
ここは足腰の神仏だそうで、大きな草鞋に
誰が履くんだ? とツッコミたくなる下駄が印象的だ。
観音様もにっこりとほほ笑んでいる。
納経をすませて御朱印をいただいたら、まだまだ、もっともっと歩けそうな気がした。
さて、次は竹寺へ。向かいの山では紅葉が進んでいる。
細い道にはアップダウンがあり、下ったり上ったりを何度か繰り返した。
45分ほどで竹寺に着く。
ここの茅の輪は有名らしく、ググって、いやくぐって心身の清浄を願うのだとか。
敷地内は結構広く、見どころがいくつもあるらしい。飲食できる店もあり、精進料理のメニューが見えた。しかし、おにきりを4個食べてしまったので、後ろ髪を引かれつつ、小殿バス停に向かうことにした。ここでも御朱印をゲット。
帰りのバスに揺られ、ウトウトと眠りに落ちた。飯能駅まで50分ほどかかる。ゆっくり体を休めてあとに、ようやく「結願(けちがん)」の実感がわいてきた。すべての霊場を回ると魂が浄化されるそうだが、実際、これまでの不平不満が小さなことに見えてきたのが不思議だ。
たとえば、教員の世界でも、自分の非を認めず人のせいにする人ほど昇進していく。学校の中がぐちゃぐちゃでも、学校外でのパフォーマンスが上手い人は名を上げる。煽りを受けた者は踏みつけられ我慢の限界だ。腹立たしいことが続いていたのに、なぜか自身を客観視できるようになった。
「さて、また頑張るか」
世の中、ままならぬことばかり。
そんなときは、またこのルートを歩くといいかもしれない。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
暑い夏は巡礼をサボり、涼しい場所でのうのうと過ごしていたせいで、なかなか進まず、2年以上経った先日、ようやく最終日を迎えた。
西武池袋線「東吾野」駅で下車し、三十番の福徳寺から4カ所の霊場を回る。だが、この寺はグーグルマップと相性が悪いのか、正しく地図に表示されなかった。「目的地に到着しました」となっているのに、目の前はどう見ても普通の民家。「こっちかもしれない」と動物的直感で丘を登り、どうにかこうにか目当ての寺にたどり着いた。
しかし、御朱印はそこからさらに15分かかる別の寺でないといただけないと書いてあり、「キイ~ッ」と地団太を踏みつつ前に進む。どうにか御朱印ゲット。
再度電車に乗り、「吾野」駅で降りると、駅前に三十一番法光寺がある。ここは楽に終わるが、三十二番子(ね)の権現天龍寺、三十三番八王寺(竹寺)は遠い。しかも山の上。気を引き締めて歩き始めた。
天龍寺に行くには「子の権現」を示す順路に従えばよい。途中の「東郷公園」という場所で左折し、浅見茶屋を経由するハイキングコースを通るつもりだったのだが、ここだけ進行方向に順路が示されておらず、曲がり損ねて国道に出てしまった。あわてて引き返す。気づいたからよかったけれど。
じわじわと続く登り坂を進むと、30分後に浅見茶屋が見える。しかし「本日休業」となっているではないか。休憩する予定はないから問題ないけれど。ここは高尾山と違い、めったに人とすれ違わないので、採算が取れないのかもしれない。
ここを越えると、ザ・山道という雰囲気が待っている。
気を引き締めて登り始めるたところで、向かい側から男性2人がやってきて、すれ違った。
「こんにちは~!」
「こんにちは」
山の挨拶は爽やかだ。しかし、犬の散歩に比べたら、コミュニケーション度では負けるかもしれない。思ったことが伝わったわけではないだろうが、会話がなおも続けられた。
「お茶屋さん、混んでました?」
ははあ、逆コースから来たのだなとわかった。子の権現方面から吾野駅に向かい、浅見茶屋で一杯やる人たちもいると、ネットに書かれていたからだ。
しかし、しかし。さっきの看板を思い出す。
「あのう、本日休業って書いてありましたよ」
「ひいい~」
リアクションが豊かな2人組だった。どこかで美味しいものが食べられるといいね。
山道を登り、振り返ると高低差がわかる。
子の山と書いてあったが標高は640mほどらしい。ちょっとがんばれば何とかなる。だが、あまりにも人がいなさすぎて、「熊が出るのでは」と心配になった。
私は「熊鈴」を持っていないのだ。富士山5号でもらったお守り鈴ならあるからと、ポケットから出してリュックの紐につけてみた。
熊鈴の「カランカラン」という景気のいい音に比べて、こちらは「チリチリ」という微かな音。つける意味あるかな? と疑問を感じつつさらに登る。途中でコンビニおにぎりを3個平らげ、糖質補給をしつつ進んだ。
「着いた!」
山道を登ること40分、子の権現入り口が見えて感動する。熊に邪魔されることなく来られてよかった。
写真で見た通り、色鮮やかな立像が迎えてくれた。
ここは足腰の神仏だそうで、大きな草鞋に
誰が履くんだ? とツッコミたくなる下駄が印象的だ。
観音様もにっこりとほほ笑んでいる。
納経をすませて御朱印をいただいたら、まだまだ、もっともっと歩けそうな気がした。
さて、次は竹寺へ。向かいの山では紅葉が進んでいる。
細い道にはアップダウンがあり、下ったり上ったりを何度か繰り返した。
45分ほどで竹寺に着く。
ここの茅の輪は有名らしく、ググって、いやくぐって心身の清浄を願うのだとか。
敷地内は結構広く、見どころがいくつもあるらしい。飲食できる店もあり、精進料理のメニューが見えた。しかし、おにきりを4個食べてしまったので、後ろ髪を引かれつつ、小殿バス停に向かうことにした。ここでも御朱印をゲット。
帰りのバスに揺られ、ウトウトと眠りに落ちた。飯能駅まで50分ほどかかる。ゆっくり体を休めてあとに、ようやく「結願(けちがん)」の実感がわいてきた。すべての霊場を回ると魂が浄化されるそうだが、実際、これまでの不平不満が小さなことに見えてきたのが不思議だ。
たとえば、教員の世界でも、自分の非を認めず人のせいにする人ほど昇進していく。学校の中がぐちゃぐちゃでも、学校外でのパフォーマンスが上手い人は名を上げる。煽りを受けた者は踏みつけられ我慢の限界だ。腹立たしいことが続いていたのに、なぜか自身を客観視できるようになった。
「さて、また頑張るか」
世の中、ままならぬことばかり。
そんなときは、またこのルートを歩くといいかもしれない。
エッセイ・随筆ランキング
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
伊豆ヶ岳、子の権現、茶屋コースは数えきれないほど歩いていますが、ダメですよ!熊鈴は必須です!舐めてはいけませんよ~😉
茶屋はスタイルが変わってしまい、以前はもっと味が店にも食事にもありました。ビールも瓶から缶に...そしてメニューも減ってしまいました😅
今年は久々に秩父方面に行かずじまい、来年は行かなきゃ!✊
展望台……たしかにネットには書いてありましたが、早く帰りたかったので寄りませんでした。
ちょっと後悔。
熊に会わず幸運だったんですね。
今年中に鈴を買わねばと決心しましたよ。
昨日ようやくトレッキングシューズを洗い、さっぱりしました。
登山は冬の方がいいかも~。
結願間違いなしでしょう。
巨大草履と下駄、インパクトありすぎですね!
みなさん撫でたりするのでしょうか?
巨大草履に触れたいとは思いませんでした。
触っていいものかどうか、書いてあるんでしょうかね?
下駄はかなり汚れていて、見るだけがよさそうです。
とはいえ、サービス精神にあふれたお寺という気がしました。
実は登山の途中で手が痺れてきたんです。
低血糖のサインらしいので、急いでおにぎりをパクパク。
家でたっぷり補充しないといけなかったかも。
山菜やキノコも好きだけど、空気の澄んだところが山の魅力かな。
マイナスイオンがたっぷりで落ち着く理由もわかるわぁ。
小熊とはいえ、熊は怖いよ~!
餌の多少は天候なのかしらね。
しかし、都内の便利さに慣れてしまい、なかなか脱出できないのが現実。
両親の住む那須にはときどき行くので、住むならそこにしよう。
おおらかになれそう。