これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

登ってスッキリ 子の権現から竹寺へ

2024年12月08日 18時12分44秒 | エッセイ
 武蔵野三十三観音巡りを開始したのは令和4年11月だった。
 暑い夏は巡礼をサボり、涼しい場所でのうのうと過ごしていたせいで、なかなか進まず、2年以上経った先日、ようやく最終日を迎えた。
 西武池袋線「東吾野」駅で下車し、三十番の福徳寺から4カ所の霊場を回る。だが、この寺はグーグルマップと相性が悪いのか、正しく地図に表示されなかった。「目的地に到着しました」となっているのに、目の前はどう見ても普通の民家。「こっちかもしれない」と動物的直感で丘を登り、どうにかこうにか目当ての寺にたどり着いた。
 しかし、御朱印はそこからさらに15分かかる別の寺でないといただけないと書いてあり、「キイ~ッ」と地団太を踏みつつ前に進む。どうにか御朱印ゲット。



 再度電車に乗り、「吾野」駅で降りると、駅前に三十一番法光寺がある。ここは楽に終わるが、三十二番子(ね)の権現天龍寺、三十三番八王寺(竹寺)は遠い。しかも山の上。気を引き締めて歩き始めた。
 天龍寺に行くには「子の権現」を示す順路に従えばよい。途中の「東郷公園」という場所で左折し、浅見茶屋を経由するハイキングコースを通るつもりだったのだが、ここだけ進行方向に順路が示されておらず、曲がり損ねて国道に出てしまった。あわてて引き返す。気づいたからよかったけれど。
 じわじわと続く登り坂を進むと、30分後に浅見茶屋が見える。しかし「本日休業」となっているではないか。休憩する予定はないから問題ないけれど。ここは高尾山と違い、めったに人とすれ違わないので、採算が取れないのかもしれない。
 ここを越えると、ザ・山道という雰囲気が待っている。



 気を引き締めて登り始めるたところで、向かい側から男性2人がやってきて、すれ違った。
「こんにちは~!」
「こんにちは」
 山の挨拶は爽やかだ。しかし、犬の散歩に比べたら、コミュニケーション度では負けるかもしれない。思ったことが伝わったわけではないだろうが、会話がなおも続けられた。
「お茶屋さん、混んでました?」
 ははあ、逆コースから来たのだなとわかった。子の権現方面から吾野駅に向かい、浅見茶屋で一杯やる人たちもいると、ネットに書かれていたからだ。
 しかし、しかし。さっきの看板を思い出す。
「あのう、本日休業って書いてありましたよ」
「ひいい~」
 リアクションが豊かな2人組だった。どこかで美味しいものが食べられるといいね。
 山道を登り、振り返ると高低差がわかる。



 子の山と書いてあったが標高は640mほどらしい。ちょっとがんばれば何とかなる。だが、あまりにも人がいなさすぎて、「熊が出るのでは」と心配になった。
 私は「熊鈴」を持っていないのだ。富士山5号でもらったお守り鈴ならあるからと、ポケットから出してリュックの紐につけてみた。



 熊鈴の「カランカラン」という景気のいい音に比べて、こちらは「チリチリ」という微かな音。つける意味あるかな? と疑問を感じつつさらに登る。途中でコンビニおにぎりを3個平らげ、糖質補給をしつつ進んだ。
「着いた!」
 山道を登ること40分、子の権現入り口が見えて感動する。熊に邪魔されることなく来られてよかった。



 写真で見た通り、色鮮やかな立像が迎えてくれた。



 ここは足腰の神仏だそうで、大きな草鞋に



 誰が履くんだ? とツッコミたくなる下駄が印象的だ。



 観音様もにっこりとほほ笑んでいる。



 納経をすませて御朱印をいただいたら、まだまだ、もっともっと歩けそうな気がした。



 さて、次は竹寺へ。向かいの山では紅葉が進んでいる。



 細い道にはアップダウンがあり、下ったり上ったりを何度か繰り返した。



 45分ほどで竹寺に着く。



 ここの茅の輪は有名らしく、ググって、いやくぐって心身の清浄を願うのだとか。



 敷地内は結構広く、見どころがいくつもあるらしい。飲食できる店もあり、精進料理のメニューが見えた。しかし、おにきりを4個食べてしまったので、後ろ髪を引かれつつ、小殿バス停に向かうことにした。ここでも御朱印をゲット。



 帰りのバスに揺られ、ウトウトと眠りに落ちた。飯能駅まで50分ほどかかる。ゆっくり体を休めてあとに、ようやく「結願(けちがん)」の実感がわいてきた。すべての霊場を回ると魂が浄化されるそうだが、実際、これまでの不平不満が小さなことに見えてきたのが不思議だ。
 たとえば、教員の世界でも、自分の非を認めず人のせいにする人ほど昇進していく。学校の中がぐちゃぐちゃでも、学校外でのパフォーマンスが上手い人は名を上げる。煽りを受けた者は踏みつけられ我慢の限界だ。腹立たしいことが続いていたのに、なぜか自身を客観視できるようになった。
「さて、また頑張るか」
 世の中、ままならぬことばかり。
 そんなときは、またこのルートを歩くといいかもしれない。

エッセイ・随筆ランキング
    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 詰まった困った | トップ | 2024 今年の漢字 »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ZUYA)
2024-12-08 19:47:56
あら?子の権現の展望台には行かなかったので?すっきり晴れていれば東京都心まで見えますよ~👀

伊豆ヶ岳、子の権現、茶屋コースは数えきれないほど歩いていますが、ダメですよ!熊鈴は必須です!舐めてはいけませんよ~😉

茶屋はスタイルが変わってしまい、以前はもっと味が店にも食事にもありました。ビールも瓶から缶に...そしてメニューも減ってしまいました😅

今年は久々に秩父方面に行かずじまい、来年は行かなきゃ!✊
返信する
買わないと! (砂希)
2024-12-09 09:19:55
>ZUYAさん

展望台……たしかにネットには書いてありましたが、早く帰りたかったので寄りませんでした。
ちょっと後悔。
熊に会わず幸運だったんですね。
今年中に鈴を買わねばと決心しましたよ。
昨日ようやくトレッキングシューズを洗い、さっぱりしました。
登山は冬の方がいいかも~。
返信する
Unknown (白玉)
2024-12-09 19:37:22
何か所も周られて凄い!
結願間違いなしでしょう。
巨大草履と下駄、インパクトありすぎですね!
みなさん撫でたりするのでしょうか?
返信する
どうでしょう (砂希)
2024-12-10 20:52:22
>白玉さん

巨大草履に触れたいとは思いませんでした。
触っていいものかどうか、書いてあるんでしょうかね?
下駄はかなり汚れていて、見るだけがよさそうです。
とはいえ、サービス精神にあふれたお寺という気がしました。
実は登山の途中で手が痺れてきたんです。
低血糖のサインらしいので、急いでおにぎりをパクパク。
家でたっぷり補充しないといけなかったかも。
返信する
Unknown (陽水)
2024-12-11 14:25:38
俺もたまに山に入りたくなりますが、先生と違って山菜採りやキノコ採り(笑)山の中は良いよね。。特に雑木林が好きです。匂いとか音も。。。とにかく落ち着きます。野生動物に出くわす事も度々。。。いつだったか車を止めてたら斜面から小さい小熊が二匹タイヤにぶつかって来て俺を威嚇して睨んで来た。すぐに親が出て来て子供を連れて藪の中へ消えて行きました。親も小さくて餌が少ないのかなと心配になりました。今年は餌が豊富なのかあまり熊の被害が少ないように感じます。先生、都会を脱出して田舎暮らし始めませんか(笑)良いよぉ(*^^*)
返信する
いいかも (砂希)
2024-12-13 22:27:05
>陽水さん

山菜やキノコも好きだけど、空気の澄んだところが山の魅力かな。
マイナスイオンがたっぷりで落ち着く理由もわかるわぁ。
小熊とはいえ、熊は怖いよ~!
餌の多少は天候なのかしらね。
しかし、都内の便利さに慣れてしまい、なかなか脱出できないのが現実。
両親の住む那須にはときどき行くので、住むならそこにしよう。
おおらかになれそう。
返信する

コメントを投稿

エッセイ」カテゴリの最新記事