これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

遅い母の日

2019年06月09日 21時34分18秒 | エッセイ
 3月末から一人暮らしをしている娘が、大荷物を持って、久しぶりに帰ってきた。
「町田で研修だから、こっちに泊まった方が近いんだよ」
「ふーん」
 4月の上旬は、慣れない家事に四苦八苦して、休みのたびに戻ってきたが、今は違う。好きな時間に寝起きができるし、誰からも干渉されない気楽さを楽しむようになった。洗濯や炊事などのコツもつかみ、健康的な毎日を送っているらしい。
 そんなわけで、こちらに戻ってくるのは、月に一回程度に減ってきた。淋しいのは山々だが、娘の成長はうれしい。そのうち、2カ月に一回、3カ月に一回などとなっていくのだろう。
「お母さん。はいこれ」
 2階に上がるなり、娘が「ねんりん家」の紙袋を差し出した。
「遅くなったけど、母の日ありがとう」
「わーい、うれしい♪」
 ご存じの方もいらっしゃるだろうが、私はバウムクーヘンが大好きだ。何層にも重ねられた年輪を、ペロッとはがして香ばしさを味わえば、幸せを実感できる。ふわっとやわらかな焼き加減なら幸福度が高く、水気が少なくてボソボソした食感でも、バターの風味で笑顔になれる。
 もし、犬猿の仲のアイツやコイツが、バウムクーヘン片手に頼みごとをしてきたら、不本意ながら、二つ返事で引き受けてしまうだろう。私にとって、特別で格別な、魔法のお菓子なのである。
「開けてみよう」
 箱のふたを開くと、なかなか豪勢なセットであった。



「お母さん、どれから食べたい?」
「うーんとね、抹茶」
 抹茶のバウムは、外側がカリッとしていて、しっかり甘味がついている。口の中に糖分が広がると、一日の疲れが消えてなくなる気がする。「生きていてよかった」と大げさに喜び、感謝の気持ちを伝えた。
 ところで、新しい職場になってから、甘いものを食べる回数が減った。何しろ、通勤途中に魅力的な店がない。コンビニが1軒あるだけで、墓地や住宅が幅を利かせている。緑が多いのはよいが、虫もたくさん飛んでいる。自転車を止めたら最後、蚊に刺されそうで恐ろしいから、寄り道せずにまっすぐ帰る習慣がついてしまった。
 今回も、バウムクーヘンを食べ切ったら、おやつがなくなった。もしや、血糖値も下がっているのではないだろうか。
「健康診断まであと1カ月しかないぞ。俺は今日から節制する」
 先日、校長が粗食宣言をしていた。負けてはいられない。私もなるべく、糖質をとらないように頑張ろう。
 健康診断は7月上旬だ。終わったら、また娘にバウムクーヘンをおねだりしよう。
「お中元ちょうだい」ってね。


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コメント (10)
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