これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ずるい父の日

2019年06月16日 21時21分34秒 | エッセイ
 今日は父の日だが、夫の誕生日でもある。一人暮らしをしている娘も帰ってきて、プレゼントの心配をしていた。
「お父さんに何か買ってあるの?」
「うん、まあ、あるっちゃある」
 歯切れの悪い言葉を返した理由は、後ろめたさからだ。実は、私の父用に、ドリップコーヒーとティーバッグのセットを買っていた。ところが、郵便局で口座名義を変更している待ち時間に、もっといいプレゼントを見つけてしまった。



 たまたま、郵便局のギフトカタログを見ていたら、父の好物であるうどんが載っていたのだ。



「これは喜ぶだろうな。よし、送ってあげよう」
 うどんがあるならコーヒーはいらない。でも、せっかく買ったのに……。
「そうだ! これは、夫の分にしよう」
 要は使い回しというわけで、ずる過ぎるかもしれない。
「ちょっと、そんなんでいいの?」
「だって、他に何も買ってないよ」
「じゃあいいか」
 娘も手ぶらで来たものだから、選ぶ余地がなかった。夕食の寿司をとり、プレゼントタイムがやってくる。
「ほら、ミキ。お父さんに渡して」
 娘をつついて箱を持たせる。
「お父さん、誕生日と父の日おめでとう」
「あ、ありがとうっ!」
 包装紙をはがすと、こんな箱が見えた。



 フタを開けたら、相田みつをの字が顔を出す。



 問題は中身だ。夫は「ドリップコーヒーはスタバのが一番美味い」と言って、それしか飲んでいないから、他のコーヒーに手を出すかどうか。
「いいね。早速いただくよ」
 こちらの心配をよそに、夫はケーキタイムに合わせてドリップコーヒーを開け始めた。頑固者が珍しい。お湯を注いで口に含むと、「いい味だ」と笑顔を見せた。
 結果として、使い回しでもまったく問題なかったらしい。
 おそらく、娘が帰ってきてくれたことが、一番のプレゼントだったのだろうな。
 来年は、Tシャツぐらい用意しておこうっと。


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コメント (10)
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