義母が二週間前から入院している。
「尻もちついた拍子に、恥骨を骨折したらしいよ」
夫や義弟たちが、入院に関わる作業はすべてやってくれた。病院ではすこぶる元気で、よく食べ寝ているそうだ。ただし、退院後は車椅子となるらしく、自宅のバリアフリー化を進めている。
ふと、娘が尋ねてきた。
「おじいちゃんの仏壇に、お供えあげていないんじゃない? もうじきお彼岸なのに大丈夫?」
「あっ、そうだね」
言われるまで、すっかり忘れていた。義父が亡くなって今年で20年を迎える。その間、義母が一人で仏壇のお供えをしていたのだ。入院中くらい、私たちがやらなければ。
「おじいちゃんって、何が好きだったの?」
「たしか、甘いもの……」
義父は明治生まれの実直な人で、定年後は畑仕事に精を出し、スーパーに並ぶレベルの大根やほうれん草などを作っていた。海が好きだったのだが、普段はもっぱらプール。見事な泳ぎを披露し、周りの老人から「魚のようだ」と持ち上げられていたらしい。質素な生活を好み、贅沢はしなかった。
「そっか。さっき、北海道のおみやげに買ってきた、じゃがポックルをお供えしてきたんだけど、いらないかな?」
「いいんじゃない」
仏様は、お供えされたものしか口にできないと聞いたことがある。じゃがポックルなら、「初めて食うが、結構イケるな」などと言ってもらえそうだ。
「そうだ、ぼた餅を作ろう」
最近、娘は料理にハマっている。昼食にスパニッシュオムレツや、玉子スープ、煮豚などを作ったとき、どれも美味くできたものだから、趣味の一つになったようだ。
「もち米買ってくる」
ちょうど、今日は春分の日である。炊いたもち米をつぶして俵型に成形し、デパートで調達したこしあんで包めば、ぼた餅のでき上がりだ。
餅を餡で包むには、サランラップを使うため、そのまま包装すればいい。
「おじいちゃんはね、毎晩135mlの小さなビールを飲んでいたよ」
「ふーん。でも、ぼた餅だったらお茶じゃない?」
「お茶には、カフェインが入っているから眠れなくなると言って、お湯にしてた」
「じゃあ、いらないか」
そんなこんなで、義父セットができあがった。
孫娘の力作だ。きっと義父も喜んでくれるだろう。
まずは私が試食する。温かい餅と、甘味を抑えた餡がうまく絡み合い、上出来だった。
「くうぅ~、美味しい!!」
おじいちゃん。
まずはビールからがいいと思います。ぼた餅はあとにしてください。
「なんじゃ、この組み合わせは!」と驚いちゃうかしら。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「尻もちついた拍子に、恥骨を骨折したらしいよ」
夫や義弟たちが、入院に関わる作業はすべてやってくれた。病院ではすこぶる元気で、よく食べ寝ているそうだ。ただし、退院後は車椅子となるらしく、自宅のバリアフリー化を進めている。
ふと、娘が尋ねてきた。
「おじいちゃんの仏壇に、お供えあげていないんじゃない? もうじきお彼岸なのに大丈夫?」
「あっ、そうだね」
言われるまで、すっかり忘れていた。義父が亡くなって今年で20年を迎える。その間、義母が一人で仏壇のお供えをしていたのだ。入院中くらい、私たちがやらなければ。
「おじいちゃんって、何が好きだったの?」
「たしか、甘いもの……」
義父は明治生まれの実直な人で、定年後は畑仕事に精を出し、スーパーに並ぶレベルの大根やほうれん草などを作っていた。海が好きだったのだが、普段はもっぱらプール。見事な泳ぎを披露し、周りの老人から「魚のようだ」と持ち上げられていたらしい。質素な生活を好み、贅沢はしなかった。
「そっか。さっき、北海道のおみやげに買ってきた、じゃがポックルをお供えしてきたんだけど、いらないかな?」
「いいんじゃない」
仏様は、お供えされたものしか口にできないと聞いたことがある。じゃがポックルなら、「初めて食うが、結構イケるな」などと言ってもらえそうだ。
「そうだ、ぼた餅を作ろう」
最近、娘は料理にハマっている。昼食にスパニッシュオムレツや、玉子スープ、煮豚などを作ったとき、どれも美味くできたものだから、趣味の一つになったようだ。
「もち米買ってくる」
ちょうど、今日は春分の日である。炊いたもち米をつぶして俵型に成形し、デパートで調達したこしあんで包めば、ぼた餅のでき上がりだ。
餅を餡で包むには、サランラップを使うため、そのまま包装すればいい。
「おじいちゃんはね、毎晩135mlの小さなビールを飲んでいたよ」
「ふーん。でも、ぼた餅だったらお茶じゃない?」
「お茶には、カフェインが入っているから眠れなくなると言って、お湯にしてた」
「じゃあ、いらないか」
そんなこんなで、義父セットができあがった。
孫娘の力作だ。きっと義父も喜んでくれるだろう。
まずは私が試食する。温かい餅と、甘味を抑えた餡がうまく絡み合い、上出来だった。
「くうぅ~、美味しい!!」
おじいちゃん。
まずはビールからがいいと思います。ぼた餅はあとにしてください。
「なんじゃ、この組み合わせは!」と驚いちゃうかしら。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
お餅はきれいに丸められて美味しそうです♪
我が家でも買った餡子で作りました、メーカーが同じだと味も全く同じでしょうね(笑)
そちらのお義父さんは20年も経っているのでワインでもシャンパンでも怒られないと思いますが、私の父は亡くなってからまだ2年。お釈迦様のところで修行の身だからビールはまだ早いと寺の住職に言われ控えております。
お嬢様は料理つくりに目覚めたようで、褒めて伸ばしてください♪
近所の和菓子屋さんでも「おはぎ」と書かれていました。
知らないわけではなく、「どっちでもいいや」って感じなんでしょうね。
あと、消費者から「おはぎじゃないの?」などと聞かれそうな気がします。
大勢に影響はありませんが(笑)
入院されたお知り合いがいらっしゃるんですね。
早く退院できるといいですね。
義母は、義父が亡くなってから、ろくなものを食べていなかったようです。
作る張り合いもなくしたんでしょうね。
インスタントの簡単なものですませることが多かったようですから、骨がもろくなっていたのかも。
お父さまは禁酒中なんですね(笑)
お供えに肉や魚がNGと知り驚きました。
私はケーキを備えてほしい♪
お義母様のお加減はいかがですか。
どうやら、一定の年齢を超えると、しりもちをついた拍子に恥骨や仙骨を折ってしまうことが増えるのですね。
ホルモンのバランスが加齢で崩れると、骨はもろくなるようです。
私のまわりでもそんな話をよく聞きます。
回復には時間がかかると思います。
どうかお大事に。
ぼたもちとビール、孫が供えてくれたならそれだけで美味しく喜んでいただけたことでしょう。
私もケーキがいいです♪
義母はすこぶる元気のようです。
でも、長いこと入院していると認知症が進むので、明後日退院できるとか。
それはそれで大変なんですけどね。
女性は特に骨粗鬆症になりやすいと聞きました。
骨密度を下げないようにしなくては。
あとは、血糖値を下げなくてはいけないようです。
空腹時のケーキはダメですね…。