これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2025 手負いのバレンタイン

2025年02月16日 15時30分18秒 | エッセイ
 2月になるのを待っていたかのように、月が替わるや否や、歯茎が腫れて炎症を起こした。
「いててて、またか」
 痛むのは左の下、一番奥の歯を支えている歯茎であった。日記を見ると、2023年の10月にも同じところが化膿してしまい、歯医者に駆け込んだと書いてある。
 普段は何ともないのだが、疲れがたまっていたり、睡眠不足が重なっていたりするとプクッと膨れ始め、ズキズキ、ズキズキと鼓動を打ち始める。加えて、この日は節分の恵方巻をほおばったことにより、腫れがひどくなったようだった。
 迷わず休みを取り、歯医者で治療を受けた。すぐに治ると思って「前祝いだ!」と甘いものをいただいたのだが、なかなかよくならない。



 抗生剤が切れる前に、もう一度医師に診てもらったら、嚙み合わせの悪さを指摘された。
「この歯は、ちょっと高いですね。かぶせた銀を削りましょう」
 たしか、数年前に銀を詰めなおしたとき、「もう少し低い方がいいかも」と迷いつつ、さらに削られるのがイヤで申し出なかったことを思い出した。安易な妥協がのちの腫れにつながったのであろう。この日に削ってもらったら、ビックリするくらい痛みが引いたので、嚙み合わせは大事だということが、よお~く理解できた。
 おかげでズキズキ痛はなくなったけれど、硬いものを噛むと、未だに歯茎に響く。完治するにはもうちょっと時間がかかりそうだ。
 しかし、私の歯の状態に関わらず、バレンタインデーはやってくる。
「はいどうぞ」
「ありがとう」
 今年も友チョコをあげたりもらったりで楽しんだ。さすがに、こげ茶色に固まったチョコレートを噛むと、奥歯のズキーンがぶり返すので、気をつけなければならない。
 家に帰ると、夫にもチョコレートを渡さないといけない。こちらは私の口の状態を反映し、やわらかいチョコバウムにした。



 ロイズでバウムクーヘンを買ったのは初めてのことで、「果たして美味しいのか?」と思わなくもない。義理チョコとしてフルーツバーを10個買ったついでに、バウムクーヘンも頼んだだけだった。ひいきにしているホレンディッシェ・カカオシュトゥーベか、治一郎の方がよかったかもしれないとの後悔が脳裏をチラッとよぎった。
 夫にあげておきながら、自分で切り分けるのもなんだな……。
 冷静に考えればおかしな話だが、毎年のことなので「まあいいか」と苦笑してナイフを取り出した。



 3等分に切り、チョコで囲まれた円の一部を取り皿に載せる。
「いただきまーす」
 カステラはちょっと硬め。糖分は控えめだが、周囲のチョコレートが加わり適度な甘さとなっている。日持ちする割にはパサパサしておらず、しっとり感がうれしかった。
「美味しいじゃん」
 思った通り歯茎は痛くない。正直言って、味は期待していなかった。満点を100としたとき、予想は50だったのに、食べたら85ぐらいまで急上昇している。ロイズはバウムクーヘンもイケるとわかり、収穫だった。
 職場でチョコを配り終え、残りのフルーツバーに手を伸ばす。



 中に入っているクランベリー、ストロベリー、マンゴーといったドライフルーツに、サクサクのパフを組み合わせ、桃色に染まったホワイトチョコで包み込んだミルキーな一本。これがたまらない。勢いよくカリッとかじりたかったのに、傷めた歯茎が許してくれなかった。
「うう、いたた……」
 まだ早かったか。
 いくらなんでも、ホワイトデーまでには治るだろう。
 別のバウムクーヘンにしてもらおうかな。

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