しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「蛇の形」 ミネット・ウォルターズ 

2008年11月12日 | 読書
「蛇の形」 ミネット・ウォルターズ      創元推理文庫
  The Shape of Snakes    成川裕子・訳

イギリス、サリー州リッチモンド、グレアム・ロード。
1978年11月14日雨の夜、教師をしていたミセス・ラニラは自宅へ帰る途中で隣人のアニー・バッツが倒れているのを発見する。
それはアニーが死ぬ直前だった。
アニーはミセス・M・ラニラに目を向けた。それは“なぜ私が殺されなくてはならないのか”と訴えているようだった。
アニーは近所では唯一の黒人で、奇抜な言動から“マッド・アニー”と言われ疎まれていた。
警察はアニーの死を交通事故と判断する。
M・ラニラは警察に殺人を訴えるが、返って変人扱いされることになる。
夫婦間にも危機が訪れるが、夫の海外赴任を修正のきっかけにしようとイギリスを離れる。
そらから20年、M・ラニラはイギリスに戻りアニーが殺された証拠を掴むため動き始める。



一人の女性の死の真相をずっと追いかけてきた主人公ミセス・M・ラニラ。
昔の事件を掘り起こす物語はよくあるが、これはずっと追い続けていたもの。
20年経ってもその気持ちを持ち続け、根気強くあるいは執念深く追い求めるのは大変なことだと思うが、どうしてそこまでするのかも納得出来るように書かれている。
最後の1ページもジーンとするが、やはり1番の理由は、死に逝く人の目を見てしまったことにある気がする。
とても細かく、人間関係やその人が抱いていた感情が分かり物語の中にどっぷりとつかれる。
小さな住宅街なのに問題が山盛り。
少しずつ分かってくる事実も実際にありそうなことばかりで、結構怖い。
結構入り組んでいる人間関係だが、それも最後にはパズルのように収まる。

色々なことを考えさせられた。
差別をする心。
他人より自分の方が優位に立っていると満足出来るのだろうか。
また、それを心に中だけにしまっていられずに相手を蔑む。
幸せは他人と比較して得られるものではなくて、自分の中だけで決められるものだと思うけれど。
人種、職業、健康、貧富、容姿など差別をしようと思えば材料は色々あるのだ。
人間って悲しい。

大きな悪に小さな悪。目に付く悪に付かない悪。
悪の根源はなかなか見えないのかも知れない。
世の中、理不尽なことが多い。

今まで読んだミネット・ウォルターズの中でも、心に残る物語。


M・ラニラが捜査した結論は、「アニー・バッツは異人種に対する憎悪と障害の対する蔑視が、グレアム・ロードではなんのはばかりのなく容認されていたために、殺された」のです。
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