しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「陰の季節」 横山秀夫 

2008年11月13日 | 読書
「陰の季節」 横山秀夫     文藝春秋

4編からなる短編集

「陰の季節」
D県警警務課は定期人事異動の名簿作成作業が大詰めだった。
調査官の二渡真治警視が最後の詰めと行っている時、警務部長に呼ばれる。
天下り先の『産業廃棄物不法投棄監視協会』の専務理事のポストを、3年という約束で就いた元刑事部長の尾坂部道夫が辞めないと言っているという。
それは警察組織にはあってはならない背信行為だった。
二渡は尾坂部の真意を知り説得する為に会おうとするが、尾坂部は現地視察を朝早くから行い、なかなかつかまらない。

「地の声」
D県警警務部監察課監察官の新堂隆義は1通のタレコミ捜査にあたる。
それは、Q警察署の生活安全課長がパブのママとホテルで密会している、というもの。
タレコミは外部と内部の両方があり、これは内部からと思われた。
Q警察署の生活安全課長、曾根和夫は警部在任期間が17年と長いD県警最古参だった。
誰が、曾根を刺そうとしているのか、新堂は極秘に調べはじめる。

「黒い線」
前日、似顔絵が犯人逮捕につながる手柄を立てた婦警、平野瑞穂巡査が無届欠勤をする。
婦警担当係長の七尾友子が関係者に話を聞くと、平野瑞穂は先日から元気がなかったと言う。
そして、平野の車が発見されるが、事件性はみられなかった。

「鞄」
柘植正樹警部は警務部秘書課の課長補佐で、『議会対策』が職務。
県議会を前に事前に一般質問の内容を知り答弁の準備をする。
そんな中、鵜飼県議が県警に対しての〈爆弾〉を用意しているという噂が入る。
鵜飼は4年前の選挙の時に、買収事件で運動員15名の逮捕者を出していた。
その報復なのか。
〈爆弾〉が何であるか、探っても何も分からず、柘植は焦る。




「陰の季節」の4編はD県警警務部が舞台の物語。
それぞれ登場人物がリンクしている。
リンクしている物語は、ちょっと顔を出しただけでもその人物がどんな人か、何となく分かっているから面白い。
タイトルの「陰の季節」は外部の事件が多少係わっているが、他は警察内部の物語。
組織の中の暗い部分を見せられる感じで、気持ち的には暗くなる。
人間の嫌な部分、弱い部分が助長されてしまう人間関係が社会に中にある。
相手を思いやることもあるが、組織の中では人間性を出すことは難しいのだろうと思わせる。
政治家も警察も、本来の仕事の他に頭を使うことがたくさんある。
人間関係は本当に難しいのに、閉鎖的な組織となると余計だ。
しかし、その組織の外にいる者にとっては、そんな方にエネルギーをたくさん使わないで、もっと本来の仕事をしっかりして欲しいと思ってしまう。
最近警察は色々書かれて、実際色々あるし。
頼りになる警察であって欲しい。
人間の、腹の探り合いのやり取りは、読んでいても疲れる。
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